「機動戦士ガンダム」の制作で尽力したのは、本物の物語を作ることです。作り手の義務である膨大な制作コストの回収を果たすためにも、本気でおもしろい作品を作るしかないんです。制作費の制約があろうとコンセプトはタダで入れられるのだし、大人の都合に合わせた作品では子供たちをあっと言わせることはできませんから。
大人が本気で語っていたという印象は、意味がわからなくとも子供心に刻まれるものです。だから僕はその時持てる限りの経験や知識、疑問を全力でガンダムに投じました。周囲の顰蹙を買いましたが、どんな反対に遭おうと「とにかくこれはおもしろいんだ」という気持ちを持つことが一番大事。
それに子供たちのニーズを満たすような作品は一過性の消費で終わってしまう。ガンダムが長期展開できたのも、噛み砕きにくい物語だったからでしょう。
今年に入って「富野はガンダムというタイトルだけではなく、ガンダムワールドというビジネスシステムを作った」と言われました。確かに、ガンダムは主人公が固定されていないので、ビジネス展開をするには有益ですよね。また、ガンダムはタイトルを共有したことで、様々な人たちの参入と広がりを持ったという意味では、原作権の放棄はとても有効だったと思う。
このタイトルの共有は、今後のアニメ産業活性化の鍵でしょう。ひとりの作家が原作権を丸抱えしたほうがいいタイトルもありますが、今後は作家とビジネスサイドが共にコラボセンスを磨いてほしい。また、最近はCG技術やビジュアルを押し出す作品も目立ちますが、アニメは絵という記号に実在感を付加できる物語なしでは成立しません。流行やテクノロジーは消費される運命にありますが、コンセプトや物語は育っていきます。
難しいことですが、僕ももう一度イノベーションを起こせるようなものを作れたらと思っている。今はそのための大きなコンセプトを考え続けているところです。
ファーストについてはいつもの内容。原作権についてを「放棄」と呼んだこと、またそれの肯定、近況は興味深い。
しかし、DIME編集部は誌面構成をもう少し考えるべき。御禿記事の前にOLMの3D記事(セルの立体視)、次記事がエヴァの大月インタビューとは…。狙ってやったのなら凄いが…。OLMの更に前の記事にはBSフジのシンポジウムでやりあった濱野氏のインタビュー。内容はそのまんま。
そのほかメモ
- OLMの記事の画像はAEのキャプチャ画面なので、誤解を生みそうではある。
- 京アニ躍進の理由をデジタル化の一言で済ましている。その要素が無い訳ではないがなぁ。元々グロス請けはしてたし、デジタル化はむしろ遅い方だし。海外に撒いてない訳でもないし。
- 一番面白い記事は南極基地の住環境について。次が地球深部調査船「ちきゅう」。
関連:DIMEインタビュー オタキングex公式サイト
DIME:今回、富野さんの取材もしたんですけれども。全くその祝福と呪いを吐いておられましたね(全員笑)。
やっとそれを受け入れられるようになったぐらいの感じの話をされていて。
ニュアンスがそういう感じで受け止めましたね。
DIME:思うんですよ。すごい一生懸命考えてくれているみたいな。
富野さんがしたのはやっぱり、自分の手から離れてしまったガンダムのいじられ方が全然ダメだと。もっといいように、ガンダムって、もっともっといろんなやりようがあんのに!みたいなことはよく言ってましたね。
3Dについては的を得ていない感じ。「開発者」をツールの開発者を指すのか、所謂オペレーターを指すのかにもよるが、結局のところ作画アニメーターと同じスキルは要求される(ちょっと前のCG WORLDのサンジゲン特集で、CGアニメーターとCGオペレーターの差を扱っているので分からない人は読んでみよう)。現状の3Dスタジオも結局のところマンパワーに拠っている。