電撃ゲームス Vol.6 古橋一浩×小形尚弘インタビュー

PVから始まった「ガンダムUC」の映像化

――:監督は、初めてガンダム作品に携わられるということですが。
古橋:サンライズの作品自体が初めてで、しかもメカが出てくる作品というと、ほとんど携わったことはないです。
――:では、「宇宙世紀」が舞台のガンダムを手がけることが決まったときは、どういったお気持ちでしたか?
古橋:オリジナルのガンダム作品を一からということでしたら、私には無理ですと断っていたと思うのですけど、本作に関しては先に小説がありますので、今までの原作付きとあまりスタンスは変わらないんじゃないか、という気持ちでしたね。
――:では、特に大きなプレッシャーを感じることなく?
古橋:作品を作ることは大変なことに変わりないのですけど、物語に対しては、責任がアレンジの方向に限定されますから。
――:「ガンダムUC」のアニメの企画自体はいつ頃から始まったのでしょうか?
小形:小説のPVを作る際には、ほぼアニメを制作するということで動いていました。
――PVというと、3年くらい前ということでしょうか?
小形:そうですね。まず「ガンダムUC」を映像化するということが決まって、それを私が担当することになり、さらに小説の1、2巻が同時に出版されるということで、角川書店さんからお話をいただいて、PVを作ることになりました。そのときはまだ古橋監督にはお声をかけていなかったのですけど、キャラクターデザインの高橋久美子さんとメカデザインの玄馬宣彦さんにはお願いをしていました。ただ、PVにはキャラクターを出さずに、MSと小説の挿絵で作るということになり、玄馬さんに絵コンテを切ってもらいました。そこで、アニメ化の前段階として、コックピットのモニターやユニコーンのエフェクトや動かし方などを、いろいろとテストしながらPVを作成してました。今までのガンダムシリーズではモニターなどが完全にフィックスされていることが少なかったので、この際だからやってみようということで、それが今回のOVAにもフィードバックされているかと思います。そのPVがあって、今回の第1話が完成したということですね。
――:小説2巻分の内容を1話にまとめるにあたって、一番苦労された点はどこでしょうか?
古橋:まず物量です。小説では設定を細かく描写し、きちんと描いているところをアニメで再現すると、それだけで膨大な時間が必要になってきます。だからそれを、見ている人にわかりやすく絵で見せていくということを、全編に渡って工夫していかないといけなかったということです。小説の物語の軸そのものは変えずに、すんなりと受け入れていただけるような展開に……どこまで濃縮できるかということですね。
――:では、アニメ化するにあたって、最初から本編60分というフォーマットが決定していたということですか?
小形:はじめは40分から45分ということで考えていました。ただ、ユニコーンを出すところまでやらないと1話にならないので、そこまでを入れ込んでいくうちに、60分になってしまいました(笑)。
――:第2話以降はどのくらいの収録時間になる予定ですか?
小形:基本は第1話と同じ時間になると思います。
古橋:それでも、どの話もかなりタイトです。現在4話の作業を進めているのですけれど、かなりギリギリまでそぎ落としてもまだ時間が足りないという感じです。
――:第1話では、ネェル・アーガマ側やロンド・ベル、リディの視点がほとんどカットされていますよね。ただそこをスパッと省略したぶん、アニメで初めて「ガンダムUC」に触れる方は、特に違和感なく見られることができるのかなと。
古橋:結局リディは第1話ではセリフもなくなってしまいました。アルベルトもそうなのですが、この2人はかなり割をくってしまったキャラクターです。第2話以降に活躍の場は繰り越しという形ですね。
小形:そうですね。第2話ではリディとアルベルトに存在感を持たせていますので。
――:第1話はバナージとオードリー、カーディアスがメインに描かれているということですね。
古橋:はい、第1話ではその3人に焦点を絞ることでまとめることができました。
小形:同じ内容を90分で作れと言われれば作れるくらいの密度が、第1話には詰まっていますよ
――:小説1巻分で45分がちょうどいいという感じでしょうか?
小形:小説は巻数が進むほどに厚くなっていきますから。45分でも時間が足りないかもしれません(笑)。
――:巻数が進むほどにまとめるのが難しくなってくるということですか?
古橋:第4話まではなんとかなりそうですが、小説の第8〜10巻にあたる第5話や第6話は、どうやってまとめていくかということを、これから福井さんを交えてスタッフ間で詰めていく感じです。
小形:今のところ、第3話で宇宙から地球へ降りて行くところを描いていきます。ちょうど小説の第5巻〜6巻のところです。

従来の描写をより緻密に

――:本作では、コックピット内のモニターの演出が、今までにないほど凝っていますよね。
小形:緻密というか、情報量がかなり詰まっています。
――:クシャトリヤのバインダーの中にファンネルが収納される様子が、コックピット内のモニターに表示されるところなどは、今までのガンダム作品では描かれなかった描写ですよね。
古橋:試写会で見ていただいたガンダムファンの撮影監督にも、それが良かったと絶賛されました。シナリオにあったので、マリーダの素顔見せカットとして入れたまでなので、それほど意味深いシーンだとは露ほども思わず、ただ全天周モニターに自機が映るのは、設定上どうしようという話になり、メカ作画監督の玄馬さんのアイデアで、複数のカメラ情報を合成している設定にして、デジタル処理で切り替えましょうと。
小形:第1話に関しては、古橋監督の絵コンテをもとに制作していき、そこに玄馬さんが考えたMSのギミックを足しているという形です。
――:小説ですと、福井晴敏さんがこれまでのガンダム作品では描かれなかった描写や設定を緻密に書いていますが、それとはまた別に、映像ならではのアプローチで描写を足しているという感じでしょうか?
小形:今まで描かれなかった技術をきちんと描いてみようというところが、玄馬さんの中にあったと思います。カット単位で見ると、今までもそういう描写はあったのですが、作品全体でその統一感を出しているものは少なかったので、そういうところを大事にしています。また「逆襲のシャア」から「F91」にいたるまでに進化した技術というところにも焦点を当ててみました。
――:バーニヤが出す光なども、今までの作品とは違う描かれ方だったと感じました。
小形:今は全てPC上での撮影になっているのですけれど、昔の撮影台で撮影していた透過光の雰囲気を出したいということで、今回のバーニヤのエフェクトにも凝っています。この演出自体はPVのころからテストを重ねていて、光源の重ね方1つでまったく別の表現が出来上がってしまうのですが、これも玄馬さんのこだわりで、かなり良いものになったのではないかなと思います。
――:昔のイメージということですが、今回は作画とCGを使い分けていますよね。
小形:MSではユニコーンの変形シーンにCGを使わせてもらっているのですが、ガンダムシリーズではガンダムがCGで描かれたのは本作が初めてだと思います(IGLOO等フルCG作品は除く)。
古橋:それと、戦艦とコックピットの座席の変形にCGを使っています。
小形:大きいものに関してはCGで描いて、MSに関してはあくまでもキャラクターなので作画で描くということが基本ですね。
古橋:ほかのガンダム作品でも戦艦はCGで描かれることが多いので、ユニコーンの外見とシートの変形シーン以外は、とくに変わったことをやっているわけではないんです。第1話の変形シーンも、外見についてはCGで描いたのは3カットだけで、アップで顔が変化したカットは途中から作画になっています。
顔の変形は特に複雑で3Dモデリングで作り込み、ガイドを出したらなぞるだけになっていまい、意味がなくなってしまいました。タイミングは作画の方がつけていますから、そのまま使いましょうと。そのぶんの作画のリソースを、ほかのケレン味あるシーンで使った方が有効ですし。それに、回を重ねるごとにCGのクオリティもアップしていくと思います。
小形:PVのころから試行錯誤を繰り返してきているので、次巻以降もどんどん進化していきます!
――:PVのころから数えると、アニメ第1話が完成するまで足掛け3年ということですか。
小形:その間にも他の作品に関わっていたりしたので、本格的に動き始めたのは、2008年の春だったと思います。
古橋:私が最初にお話をいただいたのはそのくらいだったのですけど、その頃他の作品を2本持っていましので、秋まで待ってもらいました。
小形:その間に脚本のむとうやすゆきさんに動き始めてもらっていて、2008年末から古橋監督に絵コンテの作業に入ってもらいました。
古橋:完成まで1年近くかかっちゃいました。
――:実際に映像を見ても思ったのですが、ユニコーンは特に線が多くて、よくこれがアニメとして動くなと驚きました。
小形:メカデザインのカトキハジメさんからは、「小説が前提だったので、アニメではなかなかチャレンジできない思い切ったデザインができた」と、ありがたい言葉をいただいたので(笑)。小説ということで、かなりはじけたデザインができたとおっしゃってました。
古橋:もとのデザインがあって、プラモデルにもなっているものなので、アニメだから極端に線を減らすということもできません。
小形:アニメ用にある程度線を減らしてはいるのですが、それでも手間はかなりかかってしまいました。
――:ユニコーン以外にも、クシャトリヤリゼルもかなりディティールがしっかり描かれていて、TVアニメとはまた違うクオリティを感じました。
古橋:それらのMSはパーツに立体感があるので、そういう風に感じられるのかもしれません。ハイライトなどもMSには入れていないので、例えば「ガンダム00」などと比べてもかなりシンプルな描き方をしています。
小形:「ガンダム00」自体がTVアニメでは考えられないような作画クオリティで作られていますし、同じガンダムとはいえ世界観が別なので、本作とも簡単には比べられませんけど。
古橋:MSの特徴、設定ギミックも絵にしています。クシャトリヤのサブ・アームでファンネルを回収するところとかですね。
――:クシャトリヤ自体の動きだけでなく、バインダーの細かな演出からも、かなりその雰囲気は感じられました。
小形:4枚のバインダーが特徴的なMSですし、第1話はとくにクシャトリヤが主役なので――。ガンダムに登場するMSはキャラクターとしての部分も多いので、そういう存在感が出せればと思いました。
――クシャトリヤのファンネル描写にもかなりこだわっていますよね。宇宙港からファンネルが登場するシーンで、人間の側を通り過ぎるファンネルの大きさに驚いてしまいました。
小形:福井さんの小説にもその描写はあるのですけど、ファンネル自体が4mほどの大きさのものなんです。映像として、ファンネルと人を対比するのは、これまではあまりありませんでしたよね。
――:ビームに関しても、これまでとは違った演出が見受けられますよね。
小形:ビームを撃って終わりというわけではなく、照射しながらMSを切り裂いたりする描写などがそうですね。それと、本作では玄馬さんのこだわりの1つとして、ビームが当たったら爆発ということではなく、爆発までの間を描いたり、手間はかかるんですけど、脚が破壊されてからもそのまま動いたりといったところを描いています。そういう点が他の作品と違うかなと思います。
古橋:指の部分だけ切断されたりとか、首がはずれてブラブラしたり。
――小説だと、人が死ぬシーンもそれなりに描かれていたのですけど、そういうシーンが第1話では少なめに見られましたが、意識してのことなのでしょうか。
古橋:呎がさけないというのが1つ。あとアニメで人が死ぬ絵を作っても実感が出ないという問題も。グロい絵にしすぎるのもどうかと思いますし。その前後を描いて想像してもらうように演出しています。必要なときのために抑制しておこうかなと。その代わりにMSが痛そうに壊れているんですね。
――宇宙世紀ガンダムでは、人の死生観が描かれていることが多く、不意にそれが投げかけられているところがありますよね。
小形:いきなりキャラクターが死んでしまうということは少ないと思うんですけど、キャラクターが死ぬ場合は、何かしらの意味合いがあって死んでもらいたいと思います。ガンダムという作品自体、戦争を描いている作品でもあるので、その死が必要なシーンであれば、きちんと描いていこうとは思います。

機動戦士ガンダム」好きに向けた作品

――:スタッフには、福井さんが“ストーリー”として参加されていますが、どのような形でアニメの制作にかかわているのでしょうか?
小形:ほとんど一緒にアニメを作っているという状態です。「ガンダムUC」に一番詳しいのは福井さんですから、シナリオの打ち合わせに参加していただいて、わからないことを教えてもらったりしています。呎に収めるために切っていかないといけない部分もあるので、そういった相談とかですね。
――:アニメは小説をなるべく再現していくとのことですが、小説とは違うサービス的なシーンもありますよね。
小形:古橋監督が1作目の「機動戦士ガンダム」っぽいのを入れたいということで、とあるシーンにザクやムサイが登場していますよ。
古橋:小説ではギラ・ドーガが登場していたのですが、「機動戦士ガンダム」をリアルタイムで見ていた世代の私にはザクがしっくりきます。そういう人も多いんじゃないかなって。
――:今までにガンダムを見ていた方に対するファンサービス的なものも、これから入れ込んで行くということですか?
小形:ファンネルなどのMSのギミックの描写は、ファンの方にはかなり喜んでもらえると思います。
古橋:宇宙世紀シリーズとしての積み重ねがあり、これまでのファンにも喜んでもらえる描写はきちんと入れていきたいと思います。
――:宇宙世紀が舞台ではないガンダム作品は、新しく覚えていく設定なども多いのですが、「ガンダムUC」はこれまでの延長線上といういうことで、第1話はかなりの安心感を持って見ることができました。
小形:ガンダムシリーズは「00」や「SEED」といった新しいユーザーに向けての作品もあるのですが、今回は「機動戦士ガンダム」や「Ζガンダム」を見てきた人にもう一度ガンダムを見てもらおうと考えている作品でもありますので、そういった方々が気軽に見られる作品であればいいなと思います、ですので、そういった感想がいただけるというのは嬉しいですね。
――:キャラクターデザインの高橋さんが描くキャラクターにも、どこか懐かしく、親しみを感じますね。
小形:オリジナルのデザインは安彦さんなのですが、安彦さんの線を生かしつつ、今の人にも受け入れられるアニメのデザインにしていただけたのではないかと。全体的に品良くまとまってると思います。
――:アニメのバナージは、小説よりもどこか幼さを感じる描き方をしていますよね。
小形:小説でも描写自体は結構幼いんですよ。バナージ役の内山昂輝君も、オーディションの時は結構大人びた声だったのですけど、アフレコのときは絵に合わせてもらって、かなりハマった役どころだと感じました。これから成長していくキャラクターでもあるので、第1話に関しては、若く見えるくらいでもいいのかなと思います。
――:では、キャストについてお聞きしたいのですが、内山さんをバナージ役に抜擢した決め手はなんでしょう?
古橋:オーディションをしたときに、みんなが納得できる声優さんがいなかったんです。そこで急遽4人くらい追加で声優さんをオーディションに呼んでもらいました。それで最後の1人が内山君でして、みんなの意見が一致したんですね。
小形:内山君はそれまで別の現場で仕事をしていて、急に呼び出されたということだったんです。
――:内山さんは最初からオーディションを受けていたわけではないんですね。
小形:そのときの内山君は、他の現場から急に呼び出された状態で、いい意味でどこかズレていた感じだったんですよ。それがガンダムの主人公にはちょうどいいなということになって(笑)。
――:きっかけは1つだけではなく、いろんなことが重なった結果、内山さんに決定したということですね。
古橋:そうですね。オーディションでは少し大人っぽいという印象を受けた以外は、ほぼイメージどおりでした。
――:では、オードリー役の藤村歩さんは?
古橋:藤村さんは、主役級のキャラクターをそれほど多く演じていなくて、どうしてこの人が埋もれているんだろうと話していたんですが、この半年で売れまくっているので、ああやっぱりと(笑)。
小形:後々オードリーには重要なシーンを演じてもらうので、見ている人に声がしっかりと届く人じゃないと厳しいなと考えていました。
――:オーディションの段階でもそのシーンを演じてもらったのですか?
小形:アニメの第1話、第2話のセリフだけです。第1話のそのシーンは物語のラストのほうで生きてます。
――:フル・フロンタル池田秀一さんが演じることになったのは?
古橋:劇中でシャアの声だって言われてますからね(笑)。
小形:「シャアの再来」と言われているキャラクターなので、池田さんに演じてもらうしかないでしょう(笑)。
古橋:第1話ではまだ登場していないんですけどね。
――:まさか、こういう形で池田さんの演技を見られるとは思っていませんでした。
小形:「ガンダムUC」自体がお祭り的な作品ですので、そういうものも含めて、ファンの方々に喜んでもらえるようにと、作品を作っていますから。
――:「機動戦士ガンダム」でナレーターを担当していた永井一郎さんが、サイアム役というのも、ファンにはかなり嬉しいところですよね。
古橋:永井さんには何がしかのキャラクターを演じてもらいたいと考えていて、そこで物語の最初と最後を締めてくれるサイアムが、永井さんにはぴったりじゃないかと思ってお願いしました。
小形:第1話は菅生隆之さんが演じるカーディアスも素晴らしかったですね。
古橋:彼がいないと、物語が始まらないですし。小説のシーンをかなり削ってしまったので、セリフだけでかなり語ってもらいました。第1話は菅生さんの演技に助けられた部分がかなりありますね。
小形:主人公たちはそうではないんですけど、サブのキャラクターに関しては、外国映画の吹き替えをよくやられている声優さんたちに固めてもらいました。ただ、おっさんキャラクターが多く登場するので、第1話と2話の時点で声優さんの手札がかなり少なくなっていまいました(笑)。
――:音楽を澤野弘之さんが担当することになったのは?
古橋:サンプルで聞いたTVドラマ「医龍-Team Medical Dragon-」の音楽が気になって、澤野さんが手がけた他の音楽を聞いてみたんです。ドラマ系が多くロック調でしたが、アニメのメカものもやっていらして、安心して決めました。
小形:これまでのファンの方にも喜んでもらえるような作品にはしているのですが、どこか新しいものも入れないとという気持ちはあったんですね。澤野さんはかなり若い方なのですが、自分の音楽というものをすでに持っている方で、第1話の最後に流れるような曲が澤野さんの必殺技だと思うんですよ。
――音楽ですと、主題歌を栗山千明さんが担当するということですが。
小形:ソニーミュージックさんと一緒にやっていくことで、主題歌は誰にしようかという話があったときに、ちょうど栗山さんがデビューするということを聞いたんです。先ほどの澤野さんにお願いした理由とも重なるのですけれど、音楽に関しては若い人たちにも入りやすいようにしたいと考えていたので、栗山さんにお願いしようということになりました。
古橋:最初に栗山さんの曲を聞いたときは、ちょっとほのぼのしすぎかなとも思ったんですけど、ダビングのときにはまったく違和感なくハマっていて、ベストなチョイスだったなあと。
――:役者としての栗山さんとは、かなり違うイメージの曲ですよね。
小形:優しいイメージで、栗山さんの今までにない一面を見せてくれる歌だと思います。本編が殺伐としているので、最後くらいは雰囲気を変えたいですよね(笑)。

実験的な試みもある展開方法

――:「ガンダムUC」の展開についてお聞きしたいのですが、OVAとして発売するだけでなく、プレミアレビューというイベント上映とPlayStationStoreで配信することになった理由は?
小形:OVAのみで販売という形は、今ではほとんどなくなってしまったので、新しいパッケージングの形として挑戦してみました。基本はBlu-rayやDVDをご購入いただくということなのですが、劇場では大画面で大勢の方が同時に見て、その体験を共有するお祭り感を楽しんでもらえればなと。PlayStationStoreの配信については、ゲームのユーザーとアニメのユーザーというのは親和性が高いと感じていることと、PlayStation3Blu-rayの再生機としても活躍していることですね。その関係が上手く発展すれば、おもしろいことになるんじゃないかなと思っています。
――:第2話以降も同じ形で展開していくのでしょうか?
小形:基本的には劇場先行とPlayStationStoreも続けていきたいとは思っています。第1話での反応によっては、ほかにも新しいことを仕掛けていきたいですね。海外の同時展開もその1つです。ただ、ガンダムだからというわけではなく、今はアニメのコンテンツ自体が海外も視野に入れるという流れになっていて、これからは海外同時展開というのが当たり前になっていくのではないかと考えています。
――:海外での「ガンダムUC」への期待は高いですか?
小形:どうなんでしょうね(笑)。基本的にガンダムシリーズの続編になるので、ガンダムの知識があったほうがより楽しめますし、海外の人が「ニュータイプ」という言葉を聞いても、どれほど意味を理解してくれているのかというのは、まだ計れないですね。ただ、映像などで本作に興味を持って見てもらえれば、他のガンダム作品の入口になればいいなと思います。
――:Blu-ray版には日本語音声だけでなく英語音声や6ヵ国語の字幕を収録していますよね。
小形:今までの作品は、それぞれの国に合わせてローカライズをしていったのですが、今回はバンダイビジュアルさんが作る1つのBlu-rayが、世界で販売されるということになります。ですので、Blu-ray版では、英語音声の「ガンダムUC」を楽しんでいただくこともできます。
――:海外同時展開ということが、制作自体に影響を与えたりとかはしていますか?
小形:進行自体には特に影響はありません。制作として、国内のガンダム好きな人たちに向けてしっかりと作っていくというのが、第1目標ですからね。ただ、海外版を制作するスタッフたちにはかなり頑張ってもらっています。ですので、こちらもそれに負けないようにという気持ちで、制作に望んではいます。
古橋:「機動戦士ガンダム」すら知らない人が見ても楽しめるのかという点は気になっています。「ガンダム」を知っている人にとっては、ファンネルとかは常識だと思うのですけど、オールドファンに向けてと言いつつも、やはりこれからの時代に向けて拡げていく作品になって欲しいですし、海外同時展開するにあたり、ベースとなる世界観まで描けているとは言えない現状ですから。
小形:そこは、劇場版の「機動戦士ガンダム」3部作や「Ζガンダム」、「逆襲のシャア」を見ていただくということで…。それと「ガンダムΖΖ」からも設定が多く使われているので、こちらも本作を楽しむ上ではぜひ見てもらいたい作品ですね。「ガンダムUC」のすべてを楽しむことは、他の作品と比べて、若干ハードルが高いかもしれません。
――:それでは最後に、「ガンダムUC」を楽しみにしている読者に、メッセージをお願いします。
古橋:ぜひみなさんからの熱い声援をいただけたらなと思います。
小形:「ガンダムUC」はお祭りみたいな作品です。みなさんが大好きな宇宙世紀ガンダム最新作がついに登場します。劇場上映で盛り上がってもらってもいいですし、ガンプラもあわせてたくさんリリースされますので、そちらも楽しんでいただけたらと思います。限定1万枚ですが、劇場では先行してBlu-ray&DVDを販売したしますので、ぜひ劇場で見て、また見たいと思ったらこちらもお買い求めいただけたらと思います!