AM10年04月 富野に訊け!! 第89回

QUESTION92「強い決断力を持つためにはどうすればいい?」

栃木県/サンドル 17才
富野監督、はじめまして。さっそくではありますが、ご相談したいことがあります。
僕は以前より何かを「これ」と決める決断力に欠けるところがあります。
日常の「今日はどんな服を着ていく?」というところから、受験の進路、学校を選ぶところなど、あるゆるところで悩んで、1日の間で長い時間をとってしまいます。
もっとスパッと決断できるといいと自分でも思うのですが、あれも良いけどこれも良い、これはダメだけどあれはもっとダメ……と考えていると、何がベストなのかがわからなくなってしまいます。
強い決断力を持つために、何かアドバイスをいただけますでしょうか。
よろしくおねがいします。

努力に伴う自信がないから決断力は鈍っていく まず学生の本分である勉学に励み迷いと不安をカバーしていこう!

バンクーバー五輪では、スノーボード国母和宏選手が制服の着こなしと記者会見での態度で大きな物議を巻き起こしました。彼のことは褒められないですが、あの鼻ピアスや腰パンのファッションはある決意を表すもの――文字通り国母選手が「キメていく」ためのものなのでしょう。そして見逃してはいけないことがひとつ、あれは彼が世界で戦う実力を持っているからこそ通用する態度・言動であって、それだけのものを手に入れるために費やしている努力や時間は生半可なものではありません。それを踏まえて考えてみれば簡単なことで、サンドルさんはただの怠け者というだけです。あなたが物事を「これもダメ」「あれもダメ」と決断できないのは、これまで自分ひとりで決断できるまでのことをやってきていない――つまり、あなた自身が駄目だから判断できないのです。怠け者は概して、あれこれ考えている内にただ時間が過ぎていくものです。考えていることを言動にしてみたところで、それはあなたのレベルの範囲内のことでしかないのですから、結果として不決断になるのなら、それは他人の考えるレベルに至っていないのかもしれません。
本来こういう問題は他人に聞いてはいけないし、むしろそうすることを恥とかんがえないといけないことなのです。サンドルさんが何にも決めないでいて、あなた自身の価値だけが下がるなら、それは個人の問題ですから「勝手に怠けて野垂れ死にして下さい」という言い方もできます。しかし、そうなることでサンドルさんに関わる何人かの人が迷惑するし、悲しむことになりますから、やはり勝手に死んでもらうわけにはいきません。
そういうことも含めて理解していただきたいのですが、基本的に人生は自分の決め事だけで進むことはできないのです。長い刻苦の積み重ねの中で、何か納得できるものが見つけられることこそが、幸せにつながるのです。周りの事情だったり、実力の範囲内での妥協があったりと、世の中に不決断の人を楽しく暮らさせてくれる環境なんてどこにもありません。ぼやぼやしているとあなたもたちまちホームレスです。
本当に決断する力がないのなら、自分で物事を決めるなと言うしかありません。そして、自分が他人に選ばれる人・求められる人になるように努力し、勉強していく必要があります。まずは高校卒業まで、一般教養である全てのテストで及第点を取ってみて下さい。物事を考えることができないのならば、せめて理解くらいはできるように努力し、学ぶべきなのです。
ここまで「ダメな奴はダメだ」と言われたら、サンドルさんは腹が立ちませんか? それだけの気概があれば、何かしらものを決めていくための突破点を見つけることができるかもしれません。でも、今回のこの回答を見た際に「やっぱり俺はダメなんだ……」と思ってしまうのがサンドルさんなのかもしれませんね。それを僕は、とても心配しています。