DVD&ブルーレイでーた14年9月号 富野由悠季「G-レコ」を語る!

  • (手応えについて)この原作と構成を思いついた奴は偉いな、というくらい正直に言って自分でも驚いています。全て最初から考えていたなんて、とても言えません。それくらい、作品としてはみ出している魅力を感じています。
  • (発表媒体について)メディアが何であるかに関してのこだわりはありません。
  • (映画論について)あまり作り手のメッセージを強く押し出したものはつくるべきではないというのが僕の考えで、そういう意味ではG-レコでも作品の中でも何かを声高に訴えようとはしていません。
  • 映画というのはエンターテイメントであると同時に歴史的な資料にもなるということなんです。プログラムピクチャーにも資料性の高いものがたくさんあります。また作り手の立場で見た場合、当時のスタッフがやっつけ仕事をシテイルカ一生懸命に作ったか、それともまあまあのところまでか、少なくとも3段階の区別がつくようにもなりました。映画というのはタイムカプセルのようなものです。それはファーストガンダムも同じです。
  • 自分がつくりたいものをつくる、という個的なやり方は、実はアニメには似合わないのではないか。
  • (数十年後の検証の種をまく)ということもアニメ制作なんだよ、ということをわかってほしいのです。ただ残念なことに現状のスタジオを見ていると、G-レコの現場だけではないと最近は思うようになりましたが、このような考えでアニメや映画を作っているひとはあまりいません。動画が当たり前に見られる時代になってしまったので、動画をつくることの深刻さがわかっていない人が多すぎるような気がします。だから簡単にネットにアップしてしまうようなことができるんです。動画というのはそんなお手軽なものではないということを、言ってしまえば「見せつけてやりたい」という意地はあります。
  • 僕はブランドというのが大嫌いなんです。新しく車を買い換えるたびに、エンブレムを削ってくれるようにお願いするんだけど、どこも必ず断られる。
  • 過去のガンダムに関係した人に頼むと、それこそユニコーンガンダム以上のものは生まれないと思いました。そこで主役機以外を形部さんにお願いしたのです。1年かけて全26話に登場するMSのデザインをしてくれました。しかし安田さんと形部さんだけでは両極だけで中が抜けてしまう。そこで二人の橋渡しとして、山根さんに加わってもらって、バックグラウンドを支える形でG-セルフと形部MSをつなぐことをしてもらいました。そのために、山根さんが過去に描いた未使用デザインのいくつかを採用するといったこともしています。形部さんのデザインに関しては、細かな注文はほとんどだしていません。ほぼ丸のみする形で受け入れたのは、それだけの才能があるからです。向こうから勝手に出てきたシルエット、というよりルックスですね。その若い感覚に賭けました。彼の書いた人物画を見た時に、これならメカも描けると直感しました。形部さんという人材にたどり着くまでに3~4年かかりました。
  • (第2話に過去シリーズMSが登場するのはG-セルフとの対比?)そういうふうに受け取っていただいて構わないのですが、ちょっと違います。「まだまだこういう手があるんだ、お前ら気付けよ」という、過去のスタッフに対するちょっとした嫌がらせです。
  • シド・ミードさんに関しては、お願いしたのは失敗だったという認識が僕にはあります。どこがミスだったかと考えると答えは簡単で、自分の好きなものでつくってしまったからです。元々彼のデザインが好きだったから、無条件に受け入れてしまった。ところが、途中から何かおかしいと気づいた時には軌道修正できる段階ではなくて、そのまま最後まで行ってしまった。G-レコでは反対のことが起きています。形部さんの考えていることは分かるけど、「実際に使うのは嫌だよね」と最初はおもいました。例えばカットシーの羽根が付いたMSなんて使いにくくて嫌だなぁ、描くのが面倒臭いなぁと思いながら、子供たちに見てもらいたいからと我慢して絵コンテを切っていったら第3話で化けました。羽根があるからいくらでも飛ばせるし、空中戦ができるということがわかった時にバーンと目の前が開けたのです。
  • ターンXを活躍させられなかったのは内心デザインに対する嫌悪感があったからです。でもカットシーは飛ばすことができる。この違いこそが玩具というものの力。
  • (動かすうちに魅力を獲得していくのはキャラクターも?)圧倒的にそうです。ファーストガンダムで言えばララァやセイラさん、特にミライさんがそうでした。今回は第2話でアイーダが化けます。
  • 今回のキャスティングはスケジュールの都合とか、いろいろな条件があって今のような形になっただけで、決して自分の好きな人たちで固めたわけではありません。実際にアフレコしてみると、若い声優たちは皆、流行のアニメに汚染されていて、誰でも同じような声に聞こえてしまう。まずそのクセを抜く作業から始めました。要するに「地声でやれ」ということです。オタクだけが喜ぶようなかわいい声はいらないし、洋画の吹替的な演技も忘れろと言いました。でも職業として身についたものだから、なかなかできない。オーディションの段階で「あなたが今持っている体からでる声が欲しい」から選んだわけで、余計な色をつける必要はないのです。声優に関しては特に第2話からのアイーダの変化に注目して見ていただきたい。
  • 戦闘シーンのレイアウトなどは(シリーズ経験者に)ほぼお任せで、こちらはベルリとアイーダの物語に力を集中できています。結果として自分の作品も含めてこれまでのガンダム、それ以外の今作られているアニメを全否定するくらいのものが生まれつつあると思う。