Gのレコンギスタ劇場版、Romics2017で正式発表か

Romics2017

ガンダム Gのレコンギスタ」新プロジェクト企画進行中!
http://www.gundam.info/topic/17864

会場では、現地のアニメファンとの交流を深めるとともに、『ガンダム Gのレコンギスタ』の新プロジェクトが企画進行中であることも語られた。

Romicsでは富野監督のゴールデンロミックス受賞、G-レコ1〜3話上映、小形Pのサンダーボルトトークが予定されていました。
これで一応サンライズの正式発表か。「新プロジェクト」となっているのは、既報の通りの劇場版なのではなく、事実上の総集編OVAなのかもしれません。

富野監督ゴールデンロミックス受賞記念質疑応答

https://youtube.com/watch?v=VLIQOqC2YFY

富野 巨大ロボットが出ていても、です。特別なものがなければ作品ではないと思ってました。それの一番最初に挑戦したのがザンボット3という作品でした。ですから自分にとっても作り方が分からないなりに本当に頑張ったという記憶があります。逆に言えばその頑張りがあったおかげで子供に見せる作品としては良くない様なシーンもあったっていう指摘も受けました。現在でも思い起こせば、子供が見る様な作品に、人間爆弾の様な設定があるのは、あまり良いことではないと思いました。が、現実問題はその後20年30年して、子供までが自爆テロをする様なことを現実に起こしてしまった大人たちの姿を見ると、やはり警告としてこういう作品があっても良かったのではないか、という風に現在は思っています。
ダイターン3の場合には、今質問にある通り、サイボーグを交えた複雑な親子関係の物語という風に質問の方が理解している様ですけども、根本的なところが違います。そういう設定を入れようとは思ったんですが、上手くいかなかったので中途半端になっています。(中略)父と子の関係性をきちんと説明することができなかった。
(中略)
レコンキスタ」という言葉がこの物語では間違った伝えられ方をして、「レコンギスタ」になってしまったのをタイトルに込めています。

富野監督と小形P動画
https://youtube.com/watch?v=41uRTJgaVq0

これまでのG-レコ劇場版の情報

G-レコの放送後の展開、そして富野次回作について
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20150702/
村上隆トークセッション「日本、物語、リアリズム」ゲスト富野由悠季 メモ
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20151101/
富野流仕事術〜自分の個性を信じる〜 メモ
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20160417/
Gのレコンギスタ劇場版アフレコ実施か
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20160730/
富野由悠季監督名古屋講演「次の世代を意識すると仕事力がつく」
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20160911/

NHKBSプレミアム クリエイターたちのDNA〜ニッポンアニメ100年史〜 富野由悠季インタビュー

富野由悠季インタビュー

(アトムについて)その時に「リミテッドアニメ」という言い方は、よくも発明したよなっていうくらい映画的に考えると許し難い発想だった。だけども、週1ペースでまんが映画を作っていくなら、これしかないだろうな、っていうことも本能的に分かったし。それでたまたま就職させてくれたんで、「鉄腕アトム」の制作現場にいきなり入っちゃった。何が起こったかって言うと、やれシナリオが足らない、やれコンテが足らない。それでどういう風にアニメーターに仕事をバラまくか、みたいなことも知っちゃって。これをこなしてかないと要するに3か月後には穴があく、ていうような現場をドドドドドッと見るっていうことが僕の経験でしたんで。アニメの何たらかんたらを考えるようになったのは、それこそ……それこそ……40過ぎてからですね(笑)。
ガンダムの与えた影響について)僕にとっては、まず、あの巨大ロボットっていう寸法を、人物というキャラクターをワンショットで捉えるのはとっても面倒くさいんですよ。メカがでかすぎるから。で、その一体感をもたせて物語を作るっていうそのスケール感とか物語と、人物の行動様式と乗り物、つまり兵器の関係性をどういう風に作っていくかみたいなことが制作的な本当に肝になっていて。それを今の後発部隊若い人たちはそこを考えないで結局もうあるものとしてこなしちゃってるっていうところが、正直うらやましいなっていうのは、そういう基礎を確立するっていうところをやってなくて、パーンって来ちゃってるから、ほんとにあいつら楽してるよね、って感じはあります(笑)。

長井龍雪インタビュー

ガンダムについて)話の持っていき方と、あとは全然子供に優しくない作り方をしてるじゃないですか。やっぱりそれが子供心にかっこよく見えたし、ほんとに、全然たとえば「ガンダム」って拒絶される時があるんですよね。なんかもうこの話ほんとに分んない、みたいな気持ちになる時があって。違う価値観をガンガンぶつけられるあの感じとかが気持ち良かったんでしょうね。

荒木哲郎インタビュー

ガンダムについて)メカアクションものである以上に、人間の真実について迫ろうとしている作品としての、富野さんの一連作品にすごく惹かれまして。
(G-レコ10話について)モビルスーツが森で戦っている場面で、自分はその何か芝居の邪魔になるなと思って森の場面だけど程良く木を除けてたんですよね。コンテを描く時に。で、それを富野さんに見透かされて「お前演出の都合で木引っこ抜いたろ」みたいなことを言われて(笑)。確かにそのとおりですね、っつって。(G-レコ10話のG-アルケインの戦闘シーン流れる)何か芝居に都合の悪い木を避けながら闘ったりくぐったりすることで何かが生まれると思わない?みたいなことを言われて、ほんとにその通りだなと思って、それを「甲鉄城のカバネリ」では見直しまして。甲鉄城という蒸気機関車の中は実に芝居に不便なようにできているんですね。近くの人と話そうと思うだけでも階段をちょっと上って顔を出さなくちゃいけないとか。そういうこう、都合の悪いセッティングにしてみたら、実に芝居に幅が生まれて。でもそれと同じぐらい、なんて大変なんだって思いましたけど。でもフィルムは明らかに面白くなってて。分かった、ていう風にひとつ思いましたね。

哀・戦士富野由悠季インタビュー

この40年間というのは、気持ちは良くない。
自分のプライドでもあると同時に、これ程酷い目にも遭ったこともない、そういう作品です。本当にプライドなんです。プライドを持てる様な作品だった。ということは、その後も死ねない訳でプロで良い訳。プロフェッショナルってのは、次のものを作らなくちゃいけないのが、それが作れなかったっていう地獄を見ましたから。ガンダムを超える作品を作れなかったという歴史を三十何年、持つことになったという意味ではそれはそれで地獄ではあったというのが僕の体験です。
(演出のポイントは?)初めは子供向けの番組なんだからと思いながらやっていたんだけども、ある時からどうしても、映画の技法を徹底的に使わないとやってけない、ということにやっぱり気がついて。ドラマというのは人物がやるものですから、ロボットのやるものじゃないから、モビルスーツがやるものではないから。だけども巨大ロボットもやっぱり主人公らしく映さなきゃいけないためにカメラは、人物のバストサイズとロボットのバストサイズを撮影しなくちゃいけないんですけども。それを対比を絶えずある様に見せていくことができるのは、やっぱりこれ、映画的な性能なんです。この部分を以ってこれ以後もファーストガンダムを観ていただけるとありがたい、という言い方もできますが、今僕、とんでもないミステイクな発言をしました。「ファーストガンダム」って言い方は、ガンダム世代の人は絶対に言っちゃいけないんですってね。「機動戦士ガンダム」だ、ってね。はい、ごめんなさい(頭を下げる)(笑)。
(監督として意識したことは?)おそらく作品の裏っ側に流れている、あるものの考え方みたいなことも賛同してくれる人たちも、当然知ってくれてるんじゃないのかな、って気がします。というのは、ガンダムの時に一番意識したのは、敵が宇宙人でないんだよね、って着想。今までのアニメではやってなかった訳だから。それを思いついたときには「やった!」と思いましたもん。敵が人間であればドラマができる。敵に好きなものがいたらそれは殺せないだろ、殺せない、だけど殺さなくちゃいけないってこれはドラマになるよね。
戦闘シーンを抜いて話を繋げるってことを要するにTV版の時から意識はしてきた。それが結局青春群像というテーマに落ち着いてく。巨大ロボットものでも映画的というものを極めていけば、要するに長生きするんじゃないのかと思えたし(自身を指しつつ)、もう少しマシな作品を作れるんじゃないのかって思えた。その目線を獲得して、その目線を実行してみたのがガンダムだった。アニメってのはこんなもんだ、ロボットものとはこんなもんだ、って思って作ってる人と、いや、何かそれに付加するものがあるんだ、とかってことをちょっと思って作ってるスタッフでは、それは作り方が全然違います。

寿美菜子のラフラフ 16年12月3日放送富野監督言及分

☆富野さんHBD☆|寿美菜子オフィシャルブログ「みなころび八起き」
http://ameblo.jp/kotobukiminako-blog/entry-12216758658.html
元気のGは!|高垣彩陽オフィシャルブログ「あやひごろ」
http://ameblo.jp/takagakiayahi-blog/entry-12217047251.html

寿 前にスタッフさんと呑んでた時に、本当に富野さんって怖い怖いって印象があるんですけど、G-レコの時もそうですし、アメとムチの使い分けが本当に上手な方なので、お茶目な部分が意外と多いよね、って話をしていたんですよ。で、以前別のアニメの、特に富野さんが作ってるとかではないんですけど、アニメTシャツを着ていらしたことがあって、G-レコの(現場に)。それを見た時に「ああいうの着るんですね」って話をスタッフさんとしてて。そしたら「割とTシャツとかは何でも着るんですよ」みたいに仰ったから、これはスフィアグッズだったりソロのグッズのTシャツを渡したら着てくださるんじゃないかと面って、今回プレゼントを直接は渡せなかったんですけどスタッフさんに託すという形で用意させてもらいました。それで何色かあったんですね。富野さんがTwitterで着てくださってるTシャツはTick Tick Tickのピンクの服だったんですけど、Tick Tick Tickのカラーって黄色ととピンクの2つあったんで、「黄色とピンクどっちにした方がいいですかね?」ってスタッフさんに聞いたときに、「富野さんはピンクが好きですからピンクにしましょう」って。あやひーのTシャツもあげたんですけどそれもピンク。全部ピンク。ピンクしか持ってない人みたいになっちゃったね。それでピンク分量が一番刺激的で多かったのがTick Tick TickのTシャツだったからひとまずあれを着てくださったということで。本当にね、まさかその場で着てくださるとは、っていうね。一応ね、make xのかばんに入れて託しました。次富野さんにお会いしたときになんて言われるか。それも忘れちゃってるかわかんないですけど、次お会いするのがすごく楽しみになりました。現場でも本当に厳しい面もあるんですけど、厳しいこといっぱいあった時はだいたい「僕もそうなんだけどね」みたいなこと言って周りを笑顔にするっていうね。ちゃんと周りをすごく見てる方なんですよね。人としての生き方としてもすごいなと思いました。偶然電車ですれ違ったことがあったんです。その時ずーっと本を読んでらっしゃいました。いくつになっても勉強熱心でこういうことが大事なんだと学んでらっしゃるんで。本を読んでましたし、その電車が20分くらい乗ってる電車だったので、もしずーっと20分一緒だったらアレだなと思って声をかけずに通り過ぎるというね。これを知ったら富野さんに鬼の形相で皆殺しにされてしまうんじゃないかなと思いますけども。そんなこともありましたよ。そんな富野さん素敵です。お誕生日おめでとうございました。

富野監督、誕生日おめでとうございます(今年は何もできなかった)。

キャラクターランドVol.9 富野由悠季インタビュー「シン・ゴジラ」をこう観た!

劇場版G-レコ関連部分

――「シン・ゴジラ」はいつ観られたんですか?
富野 公開の2日目でしょうか。たまたま時間が空いたから映画館に寄ったんです。
(中略)
富野 今、劇場用に作っている作品(G-レコ)に、軌道エレベーターが出て来るんだけど、何か違和感があった。どこがおかしいのか、なかなかわからなかったんだけど、客室の窓だったんです。設定画では窓が黒く全部黒く塗ってあって、それがかっこよかったので、気が付かなかったんです。乗客が乗っていれば窓には灯りがついていないといけない。映画版で慌てて描き直しました。そうするとやっぱり違うんですね。
こういうときって、おそろしいくらい気が付かなくなるものなんです。

劇場版G-レコの、修正部分についてここまで詳しく言及したのは初だと思われる。
確かに、放送当時この点について指摘した言説があるかはちょっと思い出せない。
鑑賞日についてなぜ取り上げたかと言うと、先日紹介したアフレコ日と被っていると思われるため。


第二形態にまばたき表現が抜けていることと同様であるこの例示によって、シン・ゴジラには水しぶき表現・全体的に水気が足りないのではないか、という指摘につなげていく(ただ、まばたきなしはケレンみだけでなく意図的であると思うのだが……)。

シン・ゴジラ評について

いくつかピックアップ。

  • 最初は普通に80点をあげられる映画だと思ったんですが、観終わった後にネットをあまり見ない僕にも、いろいろ情報が入ってきて、20点くらい点数が下がりました。一般的にはスルーできるレベルの問題でしかないと思っています。
  • 対中国が描かれていない。
  • キャスティングは見事でした。実写映画の監督はこれを見習ってほしいと思いました。
  • たとえばお姉さんが振り返ったときに、人はまず目を見る。おっぱいを見るのはそのあと!
  • 水気が足りない分、パサパサしている方は上手い。あのPC持ち歩いているお姉さん(尾頭)の姿とか、かっこよくて、息をのみました。

「いろいろな情報」は、先日紹介した荒木氏や、サンライズ1stの面々と思われる。

他作品言及

  • たまたまTVをつけて後半40分ほどだけ、アジアの役者は独特の湿りっ気のある顔をするので、それに惹かれて思わずラストまで観てしまった映画があります。水気たっぷりの映画。「イロイロ ぬくもりの記憶」。
  • 新海誠が「君の名は。」を35歳で作ってれば、絶賛したでしょうが、ここからが大変でしょうね。

先日言った様に、「君の名は。」やはり商業面でしか評価していないのでは。

ブレンパワードフィルムブック 制作者座談会

いま「ブレンパワード」を監督がつくった意味

――ブレンパワードを作っていく上で、どんな点で苦労しましたか?
安川 いちばん困ったのが、3話(「勇の戦い」)の作画作業に入ってるのにチャクラ・フラッシュがどうなるかわからないっていう(笑)。
富野 それまでは誰もわかんかったんです。本当に。だから僕自身も含めて結局「ガンダムぼけ」に陥ってたんだって。
河口 監督が一番重症の人ですよ。
富野 そう。15年間新作をやってなかったことが見事に表れた。チャクラ・フラッシュのフォルムひとつも、うかつに決められない。その切り口みたいなものがまるでわかんないんだよね。考えてみればサンライズの第1スタジオ自体、ずっと「ガンダム」をつくっているから、誰もほかに頭が回る人がいなくて。実際にフィルムを見て「なんだ、これでいいんだ!」って気づくまでに6、7話かかった。制作前に決めておかなくてはいけないことをおやりながら納得してた(笑)。
河口 富野さんにとっては、ガンダム教から脱退するためのリハビリ作品ですよね(笑)。なにしろ教祖ですから(笑)。
富野 いわゆる還俗する作業だったことは事実です。ひとつだけ偉そうなことを言わせてもらうと、この年齢で一度「ガンダム」以外の作品をやらなくてはいけない。やらないと僕は死ぬんだよね。「ガンダム」漬けの中で。全部が封印されてしまうだろうと感じていた。やってみたらこんなにもスタッフに迷惑をかけてしまって申し訳ない。と同時にいま、若い人たちが助けてくれてありがたいなと思っています。

脚本家の言い分と監督の言い分

――脚本の方にうかがいますが、ご自分が手がけた中で印象に残っている話数を教えてください。
高橋 書いていて面白かったのは15話の「一点突破」ですね。絵コンテで監督に全部つぶされちゃいましたけど。23話の「スイート・メモリーズ」は監督のプロットどおり書いたら、今度は「俺の分身みたいな脚本だ」って却下されて。しょうがないから全く違う話を書きました(笑)。この回はシナリオ前のプロットで3稿、シナリオで3稿まで行って計6稿、1か月半くらいはかかってるんですよ、実は。
河口 その前の20、21話(「ガバナーの野望」「幻視錯綜」)の脚本は隅沢さんが頑張りましたよね(笑)。1、2週間でポンポンとシナリオを上げて、1日で直しを上げて。
高橋 せっかく浮いたスケジュールを全部私が食ってしまって。すみません(笑)。
――淺川さんが印象深かったのは何話ですか?
淺川 一番最後に書いた22話「乾坤一擲」が好きで、16話「招かれざる客」は嫌いです(笑)。
面出 苦しんだから(笑)。
河口 ひどい打ち合わせだった、あれは。監督に突然「新キャラ出そう」って言われて(笑)。ナッキィはそこで生まれたっていう。
安川 生まれた理由も、土器手さんが「アムロにはカイやハヤトみたいなライバルがいるけど、ユウにはいない」って話をしたら、富野監督が「そうか」ってホントに出しちゃった(笑)。
河口 もとは淺川さんのつくった話があったのに、そこへ突然ナッキィが登場することになって。ナッキィの話になったんです。ひどいでしょう(笑)。
安川 登場するキャラクターの量が一年分なんだもん。あれだけキャラクターいたら1年かけて掘り下げられますよ。
高橋 だから隅沢さんはせっかく出てきてるんだからってカントとナッキィを21話でちゃんと活躍させる場面をつくったりしてて、苦労してるんだなぁ(笑)って。
富野 ん〜。そう考えるとホントにずっとリハビリしてたんだねぇ。
安川 しみじみ言わなくても(笑)。
河口 気が済みました(笑)?
富野 いやぁ、まだだなぁ。こうやって訳がわかんないとこでつくるっていうのはすごく面白いってわかったんで。予定調和でつくっていくのはやっぱりヤだなぁ。
河口 もうちょっと構成があって、それに自由度がプラスされてるのが良いんじゃないですか。
富野 それができるとね。
河口 次の課題ですよね。
富野 しかし富岡さんも偉いよね。こうまで素人集めて、よくやってるよね。
富岡 (声にならないような声で)ありがとうございます(笑)。でも、中盤から本当に面白いね。6話の「ダブル・リバイバル」以降、ドラマがはじまって。
富野 今になってみると3話の中頃から4、5話(「故郷の炎」「敵か味方か」)のもたつきってのは、なんだったんだろう、すごくくやしいねぇ。
高橋 ユウっていうキャラを描くには、あれだけ時間が要るんじゃないですか?
河口 4、5話が好きって人も多いし。
富岡 一本につき何か所かポイントがあるんだよね、富野さんの作品って。3回目ぐらいに見るのが面白かったりする(笑)。何回も見られますよね。

面出さんがひとりで書いたキャラクター、ネリー・キム

――面出さんが自分で最も印象に残っているのは何話なんですか?
面出 とりあえず8話の「寄港地で」は監督に衝撃を与えたようなので「いっかなー」と思ってるんですけど(笑)。
河口 本領発揮はネリーのときだな。
面出 そう、ネリーの話を前後編でやれた「カーテンの向こうで」「愛の淵」)のが面白かったですね。
河口 ネリーというキャラクターは面出さん以外の人は書いてないんですよね。
富野 だからあの話は、トミノ流に言うと、シナリオに全く触ってないもんね。それで気持ちが悪かったとか、こちらが我慢したってこともない。
河口 でも面出さん「17話でいいセリフ切られちゃった」って怒ってた(笑)。
富野 嘘でしょう?
面出 ネリーとユウが喋ってるところがまるまるなかったから「おおっ!? アクションばっかり」って。「私が書きたかったのはここだったのに、ガーン」と絵コンテ見ながら。
富野 これは言い訳になるんだろうけど、コンテの展開上で「この絵並びだったらこうでしょう」みたいな作為が入ることはあるな。それはコンテマンはコンテマンなりに考えたことがあるというのと、尺と枚数の関係もあって、チェックの段階でセリフ一辺倒では考えられなくて、セリフをつくっちゃうところがあるね。

反響が大きかった第9話「ジョナサンの刃」

富野 現場とは違う意見で面白かったのは「ジョナサンの刃」。見てて辛かった、あそこまで本当のことを言ってもらっちゃ困る、って。その意見はかなり冷静な人なんです。つまりアニメであそこまでやってもらうと辛い、っていう意味があると思うよね。
高橋 自分が働いている母親だったりしてね(笑)。「わかってるんだから、やらないでよ」って。
面出 だけどあれは救う話だから、あそこでやっとかないと、後になって救えないんだよね。
安川 あの時間、親が働いてて子供だけで観てたとなるとえらいことですよね。
河口 いつか殺してやろうと(笑)。
富野 だけどそう思ってくれていいんじゃないの? それが刷り込み意識にはならないと思っている。アニメの枠の中でそういうふうに思って、気になるからって次を観たら、今度はお母さんがいなくなっちゃう。で、気が晴れるっていうのは、僕はあると思う。

サブキャラに関する意外な事実!?

高橋 アノーアが消えてアイリーンが艦長になるってのは監督は最初から決めてたんでしょうか。
安川 名前がキャリアーだから……(笑)。
河口 違う。艦長がいなくなった後どうするって。「誰かまだ何もやってないのは〜」って(笑)。アイリーン、医者だけどいいのかって(笑)。
富野 だから劇中で「士官学校では優秀な生徒だった」って理論武装して(笑)。
高橋 キャリアもちにしたんですよね。
河口 ひどいよな〜(笑)。でも、監督も新キャラを出すより今いるキャラの中で、って抑制があったから。その後すぐ忘れて「だめだ、新キャラだ!」ってナッキィ出して。それでみんなは「ヤバい、病気が始まっちゃったぞ!」って(笑)。
面出 企画書よりキャラが増えてるんですよね。桑原さんとか。
高橋 それを言うならケイディ(笑)。
面出 名前つけた時点でレギュラーになるから「わぁ、しまった」って。
――ケイディは4話に出てきたときに死んだかと思いましたが。
富野 みんなそう思いました(笑)。
――まだエッガひとりしか死んでないじゃないですか。
安川 ネリーの話を見ると、実は死んでないんじゃないかと思うんですけど(笑)。
河口 プレートを透かすと中に見えるってのは……(笑)。
富野 それもいいかもしれない。
河口 それで「どうやったら出られるのかな?」って(笑)。
高橋 改心したら出てくるとか(笑)?
富野 それ、最終回に入れよ(笑)。
高橋 面出さんなら何でもやってくれると思ってませんか。
河口 安川が言ってたんですけど、オルファンの中には江戸時代から入ってた人がいて……。
富野 (爆笑)
河口 「オルファン江戸村」とか「ウェスタン村」ができてるっていう(笑)。
安川 お侍が乗ってるんですよ、ブレンパワードに。妙な音がガサガサッとするんで見てみたら、畑があってお百姓さんが鍬持って耕してたりして。
河口 ナッキィとか、そういうキャラでも良かったかもしれない。
富野 ねぇ、それ惜しかったよ。今言うなよー(笑)。じゃあ、パート2はそこから入ろう(笑)。そういうところから行きたいなぁ、ネクストは。
――みなさん、いつもこんな感じですか?
富野 まったくそうです。
河口 ひどいもんですよ(笑)。
富野 だけど、かなり本気なんですね、こちらは。やっぱり、その方が面白いと思ってますからねぇ。

オリジナル作品の難しさと面白さ

――やはり最初は手探り状態だったと思いますが……。
河口 いや、むしろ後半が手探り状態でした(笑)。説明不足かなという気はしますけど……。話がポンポン飛んでっちゃったりとか。でも、それは意図してやってることですけどね。
面出 後半はキャラクターが固まったから書きやすかったんじゃないですか。
高橋 カナンとか、最初は設定しかないからわからないんですもの。
面出 カナンとかラッセとか、結構私、勝手に作っちゃった(笑)。
――キャラクターの性格は途中で変わってきたりしてますよね。
河口 みんなバカになってる(笑)。
面出 コモドとナンガがくっつくのは最初はなかったんですよね。
高橋 あれは第7話(「拒絶反応」)をつくってからですよね。
淺川 富野さんが言ったんですよ。
高橋 あの回のナンガは怪我して泳いでるんですよね不思議だな〜(笑)。
安川 後で松葉杖もついてたけど、足悪そうにも見えないし、どこ怪我してるんだろうな(笑)。
河口 最初からカップルになるって決まってたのは比瑪とユウだけでしたよね。
面出 ナンガとカナンとラッセは三角関係だったんです、企画書では。でもナンガはコモドとくっついちゃったから。
淺川 落ち着いてしまった(笑)。コモドはもっと色々やるはずだったのに。
河口 あんたら相手見つけたらそれでいいんかい(笑)。戦いの場はお見合いか、コンパか、って(笑)。
――キャラクターを書くときは、感情移入したりするのですか?
高橋 私は意外と感情移入しないですね。この人はこういうこと言う“らしい”とか、こういう動きをする“らしい”とか、“らしい”で書いて、私がその中に入って行くっていうのはほとんどなかったです。それはやらない方が良いと思ったんで。
河口 面出さんは感情移入するでしょう。
面出 私はセリフを書いてるとそのキャラクターになってるんですよ、頭の中身が。だから気がつくと「このセリフはヤバいだろう」とか「ここまで言っちゃいけないだろう」って思い止まったりするんです。言いすぎちゃダメかなって。
高橋 でも、そこを寸止めにすると、監督が全部入れるんですよね(笑)。
面出 「せっかく寸止めにしたのに全部入ってる〜」って、画面見ながら(笑)。
――面出さんが一番入り込んだキャラは?
面出 主役のユウは別格で、絶対的に中心にして書いてましたね。でないと周りのキャラクターに食われちゃうんで、そこは気をつけてました(笑)。あと、クインシィですね。最初は怒ってばっかりというのがすごく気になってて。だから「姉と弟」(第11話)のときに笑った顔を入れて、あれでキャラができたんです。それまでは、この人は何を考えているんだろうって感じだった。そうやってクインシィのキャラをつくったから、最後はああなったんです。そうでなかったら、多分、あのままオルファンと行っちゃったでしょうね。普通のロボットものだったら憎しみ合って、殺し合うっていう。でも、それだけはやめよう、救いがなくなるから、って。ほとんど全員救われる話にしよう、と。
――淺川さんはどうですか。
淺川 感情移入しやすいのは子供ですね。私自身、「ブレン」の世界観がわかりづらかったんで、世の中をまだ知らないチビッコのセリフが一番書きやすいんですよ。「あれ何?」とか(笑)。私がセリフを書くと短かったり、ひらがなが多かったりして、頭悪そうなセリフが多い(笑)。
――人気のあるキャラは誰でしょう?
河口 カナンが人気あるって聞きましたけど。一番まともそうだから(笑)。ジョナサンはよく育ってくれたって感じですよね。
面出 最初の頃はどうしようって言ってたんですよ。ライバルって負けるのが運命だから、ずーっと負け続けてて(笑)。でも第14話(「魂は孤独?」)で勝ち誇ってた(笑)。
河口 戦いで勝ったんじゃなくて口で勝った奴(笑)。卑怯な手段で買ってるんだよね、あいつ(笑)。
面出 あれは自分でもすごいと思った。ジョナサンはユウのちゃんとしたライバルになったんです。あの辺はユウとジョナサンが表裏一体だから、ユウが落ち込むとジョナサンが高飛車になって、ジョナサンが落ち込むとその逆、っていうシーソーになってちょうど良かった。オルファンの中で権力握るってのはライバルとして普通じゃないですか。それが動機が母親のことだったっていうのが、すごいな、と思った(笑)。こんなキャラ初めて、って。
河口 案外ちっちゃい奴だった(笑)。
面出 でもみんなそうなんですよね、今回は。全員、戦争とか軍隊のような大儀名分じゃなくて個人的な理由で戦ってたから、わかりやすかった。
――最終的に、人もほとんど死にませんでしたしね。
面出 最終回のプロットを立てながら、誰か忘れてないかなーと思ったら、「いかん! ナッキィ忘れてる」って(笑)。キャラが死なないってことは減らないってことだから。勝手に増えてく(笑)。
河口 いっそのこと二番艦つくって、二軍はそっちに移せば良かったのかも(笑)。レイト艦長のところとかに。
高橋 そう言えば、私は沈んでる(目立たない)キャラを書くのが楽しかったですね。そういうのを浮かすのが(笑)。他のことは他の方がやってくれるので、私は沈んでるキャラ担当だ、と。ヒギンズとかシラーとか、レイトとか(笑)。
――富野監督と仕事された感想は?
高橋 懐が深くなってるのかな、と。我々がぶつかったとき、昔だったら弾き飛ばされてると思うんですけど、「しょうがねぇなぁ」って受けてくれる(笑)。
面出 怒鳴られてないもんね。先輩ライターに散々脅かされたんですけどね。「勝手なことしやがって」とは言いますけど(笑)。
河口 富野さんのストレスを一身に富岡さんが受けてくれたから(笑)。
――富岡さんはいかがでしたか。
富岡 すごい苦戦しましたよ。僕、大変なのばっかりやってるんですけど(笑)。オリジナルをつくるのも大変ですね……。

  • 富野監督が一番好きなキャラクターは比瑪。「あの声が戯作者とか演出家として面白いっていうのがある」
  • ユウが働いていた店が「すいとん屋」というのは、富野監督も気に入っていたそうだ。
  • 面出「カントはブレンに乗ったり、オルファンには行かないと言っちゃうところが面白いキャラでしたね」
  • ネリーの登場した17、18話は雪の降る森が舞台。位置関係などの細かい部分はうやむやにできたのは美術スタッフにはありがたかったらしい。
  • 凍った湖の上でスケートをするネリー・ブレンというのは富野監督から出されたアイデアだ。
  • ネリー・ブレンやバロンズゥにコンパネ・シートがないのは、話の途中で必要がないことに気づいたからだそうだ。

(1998年8月3日収録)

abemaTV放送記念ということで。BD発売時には、これの完全版(あるのか?)を収録してほしい。
日付から分かる様に、この対談は最終回放送前。タイミング的には、脚本最終話脱稿後、コンテ作業前といったところか(最終回に入れよう、くだりがあるので)? 隅沢氏以外の脚本陣が揃っている富野作品インタビューは珍しい。

富野由悠季監督名古屋講演「次の世代を意識すると仕事力がつく」

行ってきたのでレポ。取り急ぎ嫉妬部分とG-レコ劇場版続報部分のみ、

最近ムラムラっていう嫉妬心を持っているだけでなく、これも射程距離に置いておかなくちゃいけないんじゃないのかな、と思っている作品は「シン・ゴジラ」と「君の名は。」(会場爆笑)。本当にクソーッ、と、本当にクソー、クソーッと思っていますが、できることならばあの近くに行ってでビジネスしたい(会場爆笑)。いや本気ですよ。だってそういう風に思わなかったら食っていけないじゃないですか。要するにガンダムっていう昔の名前で出ていますで食えると思います? もうそんな時代じゃない、っていうのは、特に「君の名は。」はとどめ。証明されています。じゃあ絶対的に「シン・ゴジラ」とか「君の名は。」とか、諸々幾つかのアニメがありますが(サイリウム?を振る動きしつつ=「劇場版ラブライブ!」?)(会場笑)、そういうのの後追いで企画した時にどうするか、って言った時に、突破する方法は一つだけあるとは思っている。この場合は個性というのが実を言うと武器になるかもしれない。まだ個性でない、自分の悪い手の癖、手癖とか、どうせ富野的な偏りなんだよね、っていう偏り的なものでしかないにしても、そういうものを使って、いやぁ、「君の名は。」的な新海を、あいつを潰す為にオレはこういう風なクセをもってやれば突破できるんじゃないのかな、という風に極めて癖をもって突っ込んでいけばひょっとしたら違う回路が出てくるんじゃないのか。ていう風に思い出すことができるのは、今回のこの経験を書くに当たって、「オレこういう経験一度してるんだよね」っていうことを、ガンダムのお陰ですっかり忘れてた事例を思い出したんです。そして、「え? 巨大ロボットものをやれっていうの?」って企画が来た時に、こういう様なキャラクターでやってほしいんだよね、って時に、だけど巨大ロボットものであればとりあえず半年とか一年くらい仕事になるそうだから、ってフリーランスとしては仕事に飛びつくわけです。その時にあるのがまだ個性にもなっていない自分の手癖です。オレはこういう風にしかできないけども、オレだったらこう考える。その当時の事で、もうこの固有名詞を出しても本人からも怒られないでしょうから出す固有名詞、永井豪を潰す(笑)! なーにがまんが家風情のロボットものだったら、こっちの方が強いかもしれない。っていう風に、その代わり僕の場合ターゲットの名前があるほうが闘争心が燃えたので(会場笑)、永井豪を潰す! だからそれは西崎何某も同じことで、そのくらいに思わないと、全部コピーになっていきます。
(中略)
マーケットが広いと錯覚できたので「宮崎アニメに絶対勝てる!」「あいつは潰せる!」とかって。本当にこの歳になったから言えるんですけど、何でそういう風に自惚れられるのかなって(会場笑)。よく分からない(笑)。だから行けるとか個性があるとか、大変怖いことであって。自分で墓穴掘ってるんですよ。だからそれはやっぱりしてはいけない。ただ、僕にもとりえがありました。宮崎アニメ全部観てますもんね、劇場で(笑)。観るたびにクソーッ、観るたびにクソーッって落ち込むわけね。落ち込むんだったら観なけりゃいいのにと思うのは、やっぱりそういう反省をもって、粛々と大人をやってかなきゃいけないんじゃないのかな、という風に思っていたんですね。
(中略)
これは実写の方に怒られるかもですけど、実写よりも(アニメは)人気が長続きする。つまり時代的な劣化が少ない、というのがアニメの特性。多少絵が下手であろうが実写のものよりも長く受け入れられる。観られるものになっちゃってるというアニメの性能があるんです。って言った時に、今の大人向けに作ってどうする? そういうことで言うと、ひょっとしたらまだガンダムは「君の名は。」には勝てるかもしれないな、今ふと。この部分は絶対カットしてくださいね(会場笑)。だってあれは大人のものだもん。
(中略)
映画版のサイズのものは、来年早い時期に観られると思いますので(観客どよめき)。ちょっと雰囲気が変わってると思います(会場拍手)。

  • シン・ゴジラ」「君の名は。」直近の荒木哲郎氏の記事にて、富野監督の「シン・ゴジラ」言及が語られている。これはただの勘ですが、その言及とこれまでの富野監督発言の傾向から、「シン・ゴジラ」については内容面と興業面について評価しているものの、「君の名は。」については興業面のみの評価なのではないか(この時点では)、という気がしています。
  • 「諸々幾つかのアニメ」これの第一候補を「劇場版ラブライブ!」としたのは、現在唯一視聴報告がある(第28回東京国際映画祭、グレートメカニックG2016SPRING)ことと、タイトルを挙げなかったのはサンライズ作品だからなのではないか、と思ったからです。他の候補としては、「KING OF PRISM」(弟子筋の菱田監督、モーション的にはこれ)、「劇場版アイカツスターズ!」(サンライズ1stグロスで見ている可能性がある)が挙げられる。
  • 永井豪」もったいぶっているが、最近だとアニメビジエンスVol.04、グレートメカニックG2016SPRINGでも過去の敵視として挙げている。
  • 「宮崎アニメに絶対勝てる!」鈴木敏夫氏がかつて富野監督に「鈴木さんね、『コナン』はよくできている。いいものは宮さんにかなわないかもしれない。でも、お客さんを集めるのは僕のほうです」と言われたことを熱風11年12月号と逆襲のシャア友の会で語っている。
  • 「大人向け」これまでのG-レコ言及から、子供向け=小学生以下向け、大人向け=中高生以上向け、ということ。
  • 「映画版のサイズのもの」もちろんG-レコのこと。作業に入ったのはおそらく去年6、7月からなので、作業期間上やはり完全新作ではなく再編集総集編であろう。先日の宇宙エレベーター学会の報告は残念ながら勘違いの可能性が高い。

久々に、オレらが見たかったトミノ監督、という感じでした。仕事力というか嫉妬力を堪能しましたね。

AM16年10月号 富野由悠季監督の「シン・ゴジラ」「甲鉄城のカバネリ」言及

http://animage.jp/now-animage/
荒木哲郎氏と平尾隆之氏の対談連載に、まさかの富野由悠季監督のシンゴジラ言及。言及部分のみメモ。

荒木 先日、富野由悠季さんにお会いして、お話する機会をいただいたんですよ。
平尾 へえ。
荒木 でね、もちろん「カバネリ」の話とかもいろいろさせていただいたんだけど、その日ちょうど富野さんが「シン・ゴジラ」を観てきたということだったんですよ。
平尾 非常に興味深いです(笑)。
荒木 実は、この話を連載でしてもいいですかって一応、確認も取ってきました(笑)。でね、最初は何を観てきたのか言おうとしない雰囲気だったけど、「何をご覧になったんですか?」って聞いたら「『ゴジラ』」みたいな(笑)。「自分も観ました。どう思いました?」って聞くと、最初はまぁ、富野さん一流の物言いというか「また庵野は樋口と絡んで、ああいう趣味のものばかり作って……」「石原さとみの唇ばっかり見やがって」みたいに毒づいていた(笑)。でも、そうやって話していくごとに伝わってくるのは、「これは……よっぽど気に入ったんだな」という印象でしたね。なんだかんだ言って、最終的には絶賛くらいの感じだった。きっと、富野さんにとって庵野さんや樋口さんは、言ってみれば「弟子」の一派みたいな感覚なんだろうと思うし。だから「あいつらがまた変な趣味に走った作品で……でもまぁ、なかなか面白いもの作りやがった」みたいな感じで話していて。聞いていて何だか羨ましかったね。
平尾 それは何となく、富野さんらしい言い方ですね(笑)。ちなみに「カバネリ」についてはどんなこと言われたんですか?
荒木 「最初から上手くいくわけがないと思っていた。そもそも列車が良くない!」って(笑)。列車はレールの上を走るだけで、自分で曲がりもしないし飛びもしない。そんなものをアクションの主体にしようとした時点で何もわかっていないと。富野さん自身は「キングゲイナー」のシベリア鉄道の時にそれに気付いていたから、オーバーマンというアクションの主体になるロボットを出した、「オレはそこに気付いていたんだ!」って言われて、「はぁ……」みたいな(笑)。
平尾 ははは(笑)。
荒木 あとは「とにかく見たことのない舞台装置を作るのが、自分の物語を語るための第一歩だ」という話も印象的だったな。

富野監督は試写等ではなく8月中普通に観に行った感じか。
別ページ掲載の新海誠氏と荒木氏の対談でも、富野監督の名を挙げる場面があるので、ゲットしてどうぞ(ダイレクトマーケティング)。