夜のG-レコ研究会 〜富野由悠季編〜 文字起こし その2

その1
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20160401

質問者1 ソフトにいきます。ターンエーを作られて、その後からG-レコ作られた訳ですけど、富野監督としては初めて時間を遡った作品を作られた訳ですが、その点について何か心境の様なものは。

富野 遡ってっていうのはどういう意味? 先に行ってなの、後ろに遡ってなの?
質問者1 ターンエーよりも昔の物語を作られたということで
小形 時系列的にっていうことですよね。宇宙世紀の時系列はターンエーが一番先にあるって考え方。
富野 (首を横に振りつつ)いやいや。逆です。ターンエーはG-レコよりも50……500年くらい昔の話です。
小形 昔の話なんです?
富野 そうです。
小形 え? 昔の話なんです(動揺、ざわめく会場)? え、ちょっと待ってください(会場笑)。
石井 え、でもそうなるんじゃないですか? だって、じゃなかったらカプルみたいな。
小形 あれでもZZ出てきたから。
石井 あ、そうかそうか。
小形 F91があって、Vガンがありますよね?
富野 (頷く)
小形 富野さんがやってないかもしれないけども、ガンダム的な時系列ではターンエーが一番なんか奥にある様に見えるんですけど。
富野 (首を横に振りつつ)違う。
石井 違うんだ。
富野 違う違う違う。
小形 これブックレットとか全部間違えてますよね(会場笑)。
石井 ここにいる皆さん知れて良かったですね。
小形 これちょっとスタジオパニックになる(会場笑)。
富野 何でそういう風に考えるの?
小形 ターンエーが一番奥に見えるんですよ。
富野 奥に見えるってのは簡単な言い方で、黒歴史みたいな設定があるからでしょ?
小形 そうそうそうです。
富野 そんなのはあのターンエーの時代の黒歴史でしかなくて。
小形 ループしているってことですか?
富野 あんなの関係ない。
小形 関係ないの(会場笑)?
富野 つまりその時代その時代に黒歴史的に見えてるだけの話で。
小形 見た感じだと宇宙世紀が終わってから1000年後の話じゃないですか。だからターンエーってもっと奥の話。
富野 奥?
小形 奥って言うか宇宙世紀がずーっと昔に思える位未来の話。
富野 いや、見える?
小形 見えます見えます。見えてたっていうかそうしてた(笑)。
富野 えーっ。見えてるとしたらそれはおかしい
小形 そういうつもりではなかった?
富野 全然そんなつもりもない。
小形 ターンエーがもっと前にあったってことですか?
富野 500年くらい前。
小形 (Twitterを見る)
石井 ざわざわしてます?
小形 これものすごいタイムラインが(会場笑)。僕の手元のTwitterが。吉田さんが「そんな気がしてたんだよな やったー」って書いてある。
富野 そういう話一切してないもん。
小形 えーっ。
富野 誰かが勝手に作ってることでしょ。
小形 そうです。
富野 だけどそれはそれでバカヤローとか言いません。それで良いんです。
小形 監督的にはそのつもりで作ってた?
富野 そうです。
小形 なるほど。だったらしいです。
富野 もしそうでなかったら、だって、ものすごい簡単な話で、クレッセントシップみたいなものをG-レコで作りませんもん。ターンエーの時にクレッセントシップレベルのものがありました? ターンエーレベルでは出来る訳がない。基礎技術もそうだし、エネルギーもそうなんだけど。ターンエーが一番パッとしなかった理由はその辺のことの強力なバックボーンを作らないで作っちゃったからなんです。そういう意味では過去のガンダムをずっと引っ張っている怨念みたいなものに引きずられて何となく作っちゃったからターンエーになってるんです。僕がターンエーって名前を作った時に、全部一派一絡げにしたものを作りたかったんだけども、何か引っ込んじゃったなぁ、むしろターンエーって時代設定的にも精神構造的にも後退したような気分があった。で、じゃあどうするかってんでG-レコの時にものすごく悪戦苦闘して、2、300年時間を飛ばしただけではどうしようもないってんで1000年飛ばした。1000年飛ばしてみたら、ガンダムの時系列からも離れて、独自の物語が作れるところまでのバックボーンが作れた。作れたっていう話で、さっきのリアルな話を一見しているようだけれども、リアルな問題も考えられるようにアニメに素材を全部放り込んだのは、今までのガンダムがやってこなかったことなの。ターンエーまではガンダムの話しかしてない訳。G-レコで初めてそこを突破できたという意味では、G-レコは遂にリアルなアニメになった。中国陸軍の逆をやってる。さっきの話の続きですよ。
小形 お姉ちゃんたちのアレではなく。
富野 生身の女性を使ってアニメをやらせるというそんな残酷なことは、それはしてはいけないよ、って話をこれ以後できやすい、っていうことも含めて、ターンエーではこの話はできない。G-レコでできる。だけどG-レコでできるんだけど、そんなリアルな話かって、すごくアニメ的で、むしろ年齢的にも下がってるし主人公達も。おもちゃっぽく見えるじゃないか、おもちゃだから力が持てるんですよね、て話を改めてしたいというところまであるんで。僕はG-レコというのはターンエー以上に力を持つと思ってます。チャチな話の様に見えてるけども。
小形 僕はちょっとパニックになりすぎてて、ちょっとなんかアレなんですけども(会場笑)。そうなんですか。ありがとうございます。この後色々と整理をしたいと思いますんで、一旦は皆さん今日聞いたことは胸の内にしまっていただいて(会場笑)、次の何かの機会の時にしれっとそうなってる可能性がありますんで。
富野 それでこれから2、3ヶ月皆さん方で討議していただいた上で、皆さん方なりにガンダム全史、みたいなものを作っていただければ良い訳で。そういう時にはG-レコの位置づけというものを今言ったところに置いていただけたら嬉しく思います。
小形 なるほど。全然収まってないですね(会場笑)。上手くすごい言っていただいてるんですけど、かなり今動揺が広がって。ライツ的にも動揺が広がって。はい、大丈夫です、何とかします。

質問者2 G-レコを見て親について質問したいことがあります。ウィルミット長官と富野監督が重なる部分があるなと思ったんです。激務の中で子育てをされて、しっかり育てられてると思うんですけど。

富野 (崩れ落ちて笑いつつ)そういう風に言っていただけるのはありがたいんですが、それは買いかぶりというものです。そういう意味では、娘2人がおりますけれども、こんなことを娘2人が聞いたら辛がることも分かりますが、僕は子育てを失敗したと思ってます。娘の立場に立てば失敗なんかしてないよお父さん、私達こういう風に暮らしてるじゃないの、っていうことがあるんで、子育てを失敗したという風には思ってないはずです。ただ、子供を持ったときの親っていうのは、ものすごく理想が高かったりする。僕が子育てを失敗したという言い方をしているのは、きっと自分の理想に沿ってくれなかった娘という者がいて。そういう風に育てられることを技術的に持てなかった、それから時間的にも持てなかった、っていう意味で、ほんとに娘に対して申し訳ないと思ってるのがすごくあるんですよね。むしろ謝罪感の方が強い。謝罪感が強いんで失敗したという言い方をしてるんだけれども、娘の立場にしてみたらそんなこと言われたらたまったもんじゃない。もし失敗してたら私もっとグレてるよ、って。とっくの昔に親元離れていなくなってるよ、っていう言い方があるからです。だからこの言い方もしてはいけないという風に考えたときに、どう表現したら良いかほんとに分かりませんが、親は親なり、子は子なりのそれぞれの立場があるんだ、っていう風に言ったときに、親にはそういう発想もあるんだ、考え方もあるんだ、だけど子供の立場で考えたらそういう風に思ってませんよって。今日までこうやって40になるまで暮らさせてもらってるだけでも、ちゃんと親は親なりのことをやってくれたんじゃないのか、っていう娘の立場もあるわけです。だからその立場もそうだろうと是認すれば、そういうものをやはり、そうなんだ、そういう風に言ってくれる娘がいてくれるという意味ではありがたいなと思うから、子育てが失敗したなんて口が曲がっても言っちゃいけない、という風に言葉がまた戻ってくるんですよ。言葉の表現ってのはそういうものだから、ほんとに気をつけなくちゃいけないと思うし、気をつけなくちゃいけないと思うんだけれども、G-レコの時系列に関して言えば(会場笑)。
小形 また戻って(笑)。
富野 いや、それは僕言ってないから。
小形 そうですね。
富野 言ってないから。僕は知りません。

質問者3 G-レコで見たオーシャンリングがとても印象的で、Vガンダムのアンダーフックとか、ターンエーのロランが運河人でしたね。富野さんの作品の海がとても印象的なんですけども、どういう思い入れがあって描いているのかをお聞きしたいと思います。

富野 これは現在宇宙開発をしている関係舎とか、そういうものに資金を投入しようとしている経済人とかに対して、もっと冷静になってくれという言い方をしたい。その為にオーシャンリングってのを思いつきました。まさか自分があんなものを設定できるようになるとは思いもしませんでした。設定することができたのは今言った様に、僕にとっては決定的な敵がリアリズムでいるから、そういう人たちに対し宇宙開発というものを冷静に考えてほしい。宇宙で暮らすということはこの程度のものがなければ人ってのは暮らせないんだよ、とほんとに分かってほしい。だからああいうものを作りましたというのがほんとのところです。そして実際にああいうものを劇中で登場させてみて思ったのは、やはり今言ったような、自分の想いを正しく表現できてると思うからこそ、大切にしたいなと思ったと同時に、海のことですけど、僕神奈川県の小田原で育った人間で、かなり波の荒い海岸線を見て、泳ぎまで覚えた人間で。僕潮っ気がないと実を言うと暮らしていけないっていう感じがあって。すいません、山の方には申し訳ない。山に篭るってことができない人間なんです。今言ったことも、実を言うと山の民を否定している訳じゃなくて、まさにああいう空気感というものを人間の身体ってのは嗅ぎ分けるんですよね。海風が臭うところ、海風が臭ったらちょっと辛いんだよね俺、っていうそういう人間の生体というものはものすごく敏感で、そういうものと本来共生しているものなんだ。こういう都市空間というものが我々にとって便利なのか、便利でないのか、健康に良いのか、健康に悪いのか、ってことを考えたときに、そう簡単にひとつの結論を出す気はありませんけれども、やはりそういうものをしょっちゅう考えなくちゃいけない、っていうことを表現するためには、やっぱりあって良いものだろうという風に思ってますので、今回オーシャンリングが上手くいったことと、やっぱり海というものを本能的にかなり好きなんですよね。隙なんでやはり山の民の方にも多少は潮っ気というのはたまには嗅ぎに来てくださいよ。僕だって、僕だってです。富士山には二度登ってますから。圧倒的なキャリアがありまして。その両方を……あっそうそう。その両方があったからG-レコの最終回はああいう風にしましたってことです。
石井 そっか、登山しましたね。ベルリ君は。
富野 それで富士山に二度登ったのは中学二年の時に一度登ったのは、ものすごく荒れてて山頂まで行けなかったんです。九合目で引き帰ってきて、雨というのは下から降るというのを知りました。翌年もう一度登ってみたら今度は完全にピーカンで、日本海と太平洋がパッと見えた(前後を指差しつつ)っていう。そういう様な体感はこの歳になっても絶対に忘れない。圧倒的な力としてあるというときに、我々は宇宙で暮らせるんだろうかっていうことをほんとに考えてほしい。月に資源を採りに行くという発想を持ってるキチガイ的な発想というのはそろそろ止めるべきで、地球をどれだけ長持ちさせるかってとこに行かなくちゃいけないんだよ、って話にまたスルッといけるんです。するとさっきの中国、韓国、日本、それから東南アジア全域でこの真ん中の海どう利用しようかって話にいくでしょ、ってのはアニメ観てからでないとこの話できない。G-レコを観てからでないとこの話できないんです。っていう話です。

質問者4 初めて初代のファーストのガンダムを観た時に、僕はすごく、平易な言葉になっちゃうんですけど、ロボットアニメだなと思って観て。最終決戦が終わってめでたしめでたしで終わって、アニメを観たなっていう感じだったんですけど、G-レコを観てアニメを観たっていうよりは、現実の問題とリンクするとこがあってリアルに感じた部分があったんですけど、今の現状を積みかさねていった結果はG-レコの様な未来にはならないだろうなっていうことを思って、何でかって言うと今のまま積みかさねていったら、G-レコみたいに宇宙に行って戻ってくるようなことは起きなくて。多分ヴァーチャルな世界に人類は引きこもっていくんじゃないかなと思ったんですけど、どうお思いですか?

富野 仰られている通りで今のこのままで行ったらヴァーチャルに行きます。ヴァーチャルのまんまで行ったときに、まさにヴァーチャルってのはファンタジーですから、リアルな社会の中でファンタジーをやられるんです。底抜けに経済論的に圧倒的に消費を拡大していくだけにしか行かなくて。今までの資本主義論で考えているような経済以上に、おそらく底抜けになっていくんじゃないのかな。だけどその為に地球というのはそういう無尽蔵の人類の消費行動っていうものを容認できるところまで支えてくれる訳がないんです。そういう問題をそろそろリアリズムで考えさせるためにはどうするかってことを考えさせる。考えさせるためには先程言った通りです。今の大人達はまだ19世紀のままなんです。頭の構造が。だったらという風に考えて先程言った様な方法論しかないので、アニメという武器とか、ロボットものという武器を利用して、次の世代に何とかニュータイプになってくれ、っていうそういう物語を作っていくためには、まずこういう一見アニメ・まんがっぽく見えているんだけどもリアリズムを想像させるような物語から入っていって、次の世代、次の世代、さっき言った通りです、30年単位が3代です。つまり100年位の間に地球を共同運営していく為にはどうしなきゃいけないか。っていうことの新しい方法論を人類は生み出していけるんじゃないのか、っていう風に思ってますし、生み出していかなければ人類の歴史はもう1000年は保たない。っていう風に思ってます。その為には経済論を含めての我々の考え方、それから生活の仕方についての考え方もそうだし、自然と共生していかなくちゃいけないというさっきの話ともリンクしたところで我々はどういう暮らしを選ばなきゃいけないかっていうことも、やっぱり新しく発見していかなくちゃいけない時代が来てるんじゃないのかなと思ってます。これは石油がすぐなくなっちゃうみたいな話は30年も40年も前からあるんですけども、結構保ってるじゃないか、って話が今日現在まであります。だからこの気分が永遠に続くと思うのはやっぱりもう止めた方が良いかもしれないし。僕は実は今言われてる温暖化の問題ってのは、必ずしも賛成派してません。賛成はしてませんがだけどやっぱり緊張感を持つためにはそういうものも大事な事で。これ以後風速70mの巨大台風が日本へ上陸するみたいなことを、やはりきちんと予定を立ててインフラ整備をしていくみたいなこともやはりやっていかなくちゃいけない。という風に、話が全部G-レコの話をしていくと、簡単にこっちに行けちゃうんですよ。そういうことを考えてくれる世代を育てていくようにするしかない。少なくとも我々には解決する方法は見つからないし。見つからないと思ってますので、だからやっぱりこれから5、60年みんなで耐え忍ぶための心構えを作っていくような、何なんだろう。やっぱり教育なのかなぁというところから話を始める部分がありますが、この話をした瞬間にまた文部科学省のバカ共、って言いたくなっちゃうんで止めます(笑)。

質問者5 (石井氏に)ベルリの収録で初めて監督に会う時と、最終回までご一緒した監督のイメージで変わったこととかってありますか?

石井 やっぱり皆さんが監督に初めてお会いになった時と多分同じ気持ちだと思うんですけど、やっぱり最初はどうしても富野監督はこういう人だっていうイメージしか知らなかったんで、実際にお会いした時には本当にもう緊張してて。本来100パーセント出さなきゃいけないのにちょっと怖気づいちゃって全然100パーセントも出し切れてないっていうことが多かったんですよ。でも収録が進むごとに富野監督がどんな方ってのは分かってきたので。
富野 とっても優しいお爺ちゃんだもんねぇ〜。
石井 そうですね(会場笑)。本当にもっと厳しい方だと思ってて。勿論厳しいんですけども、そこに愛情があるんですよね。だから、何だろうな、それに応えるっていうと違うかもしれないですけども、少しずつこうだろ、こうだろ、みたいなのを出来たら良いなと思いながら収録してて。最終的には僕、監督のこと大好きです。
富野 ……(笑)。
石井 って言うといつもこういう風に困るんですよ。
小形 ラジオの最終回でも大好きですみたいなこと言ってたね。
石井 そうですね。本当に監督に会えて良かったなって思ってます。
富野 だったら盆暮れの付け届けくらいちゃんとしてくれ(笑)。
小形 そうですよね。それはそうです。

質問者6 G-レコの内容的な面に戻ってしまうんですけど、ターンエーよりも先立ったG-レコの話ということですけども、ターンエーでは月光蝶によって文明がリセットされてしまったって状態だったんですけど、昨日発売された最終巻にも載ってるんですけど、G-ルシファー月光蝶を使ってるシーンがあるじゃないですか。ターンエーで文明を破壊したものをもう一度G-レコに持ってきた意図みたいなものをとても知りたいんですけども。

富野 単純に技術論です。ある有効な技術というのは継承されて繰り返し使われていくだろう、それだけのことです。特にG-レコの場合にかつての技術は保全しなければいけない、保全して良いのではないのか、それから意識的に人間というのはそういうかつての自分が憧れているようなものを再生するということはやるのではないのかな、ってことがあるんで、オーシャンリングにああいう組織を作った訳です。作ってみて実際にそういう技術というものを獲得して再現することができたときに、今度は人間が困ったことがあるのは、一度使ってみたい、ということが起こる。今回ルシファー程度の使い方しかしてないのは、要するに初めて実戦みたいなとこで使ってみて、あぁこんなもんなんだ、って思ってるとこで話が終わっちゃったからあれだけのことで。これ以後どういう風に展開するのかというのは、その時の人々がどういう心持なのかによって決定されてくる訳だし。今回G-レコで人間ってのは性懲りもなくまた同じことをやるんだよね、っていう様なことがある訳だから、物語を作ろうと思えばいくらでも作れるという言い方はあります。が、先程から話している通り、G-レコでは今回先程までお話した様な精神構造で作っている部分があるので、かつてのターンエーの時代の様なところに戻る程、何て言うのかな、キレる人達が出てくるとは思いたくないな、という風には思ってはいます。ただ、これも一応権利を売り渡しているトミノですから、どんなバカがどういう使い方をするか、それは私は知りません。それに関しては関知しません。が、自分についての思い入れはG-レコの部分で。

質問者7 女性に寄った質問を。リンゴとラライヤと三角関係がケルベスはあったんですけど、その辺の話とか、あと昨日も再放送観てて思ったんですけど、ミラジさんがギゼラさんにちょっとこうポッとしてたりとか。

富野 (笑)。その辺の話は勘弁してください。というのはもうちょっとやりたかったんだけど、後ろがなくなっちゃったんで全部尻切れトンボになってますんで、後は当事者達の関係性というのに期待しましょう。予定はしてました(笑)。

質問者8 G-レコを観ていてとても魅力的だなと思った部分がキャラクターが非常に自然に踊っているシーンが所々見られて。あと、アイキャッチとかもそうだったんですけど、踊るシーンが素敵だったんですけど、富野監督にとってダンスってのはどの様な想いがあってキャラクターに踊ってもらったのか、ちょっと聞かせてもらいたいなと思いました。

富野 今みたいに言われるとほんとにびっくりするんですが、もっとシナリオの段階では躍らせる予定がありましたけれども、実際の制作プロセスのことを考えると躍らせている暇がなくなっちゃったので、殆ど踊りをカットしてます。カットしたからこそアイキャッチャーで使って、何とかそういうイメージを見せたかったんですよっていうサインにしています。何故踊りのことをそういう風に想定していたかと言いますと、人類が一度全滅しそうになるくらいまであって、歴史をまた積み重ねてきた人々というのはきっと人間の身体のあり方ってのをとても大事にする人々だろうと思ってる。身体でものを表現するって踊りですよね。というものをすごく日常の中に取り入れていたんじゃないのかな。つまりご挨拶ひとつにしても身体を動かしてみせる。っていうことで、ちょっとしたステップを踏む、みたいなことで、ありがとう。ちょっとしたステップを踏むことで、手前ぇ殺すぞ、っていうそういう様なものを日常の中に取り入れてたんじゃないのかな、という風に思った。その事が身体性、つまり身体というものは、僕アニメの作品で今一番嫌なのは動かないアニメがとても嫌なんです。つまり動物でないからです。動くものでなくって、喋るだけのアニメというのはとても疑問を感じています。だからです、アニメの中で本当に身体性、つまり身体を動かすということの持っている意味というものをもっと大事に考えてほしい。さっきハグの話をしました。ハグするということは、これアクションでしょ? きちんと立ってるだけではハグなんかできないのに、何で立って喋りっぱなし、座って喋りっぱなしのガンダムの作品が何で多いんだろうか! っていう様なところにも実を言うと繋がってくるんです(小形Pを見つつ)。
小形 (笑)。すいません、すいません(会場笑)。
富野 だからアニメであっても人間の身体性ってのは大事にしていきたい、っていう事はほんとにアピールしたかったんですけども、だから今仰られた様なことはとてもびっくりすることで。ほんとは劇中でもっと常時いっぱい皆に躍らせたかったんですよね、ってのがあって。つまり、手前ぇ〜って言ってる時にもステップ踏んでるっていうG-レコの時代の人々がいたんじゃないのかな、っていう。本当はそれをやりたかったんですけども、それを本気でやると何が起こるかって言うと毎日毎日コンテを描く度に振付師ここに置いておいて、お前この振付考えろ、ってやらなくちゃいけない。これを今度はアニメーターに渡した時に、手前ぇこれ1カットで150枚かかるんだけど書け、って。明日の朝までに作画するんですか、ってそんなことできる訳がない。というので諦めましたというのがほんとのところです。

ガンプラ

小形 良い質問だったんでここで質問タイムは終わらせていただいて行きたいと思います。
富野 すいません。
小形 この辺りで1回ガンプラのやつをチラッと見ましょうか。こないだガンプラ選手権やって、石井君もなんか作ってもらって。
石井 何か(笑)。そうなんですけどね。ほんとはもっと色々やってみたかったんですけどね。
参考:http://bandai-hobby.net/g-reco/special.html
小形 これ監督選んだやつ。監督の意見聞かないと。
富野 だってこれが監督賞で、他に監督賞考えられなかった。これ他を見れば分かります。これが一番ユニークだったからです。
小形 次、安田さん賞見てみましょうかね。かっこいいG-セルフ
富野 だってかっこいいだけでしょ(会場笑)?
小形 めっちゃちゃんと作ってますよ。じゃあ形部さんの方行きましょう。これ監督。
富野 え、かっこいいだけでしょ(会場笑)。
小形 そう言うなと思ってたんですよね。
富野 面白くないもん。
小形 山根さんの作品行きましょうかね。
富野 ね、かっこいいだけでしょ。
小形 これでも結構鮮やかだと思うんですけど。
石井 トリッキーパック作ったんですね。
小形 じゃああとスタジオ賞。これ僕が選んだ奴ですね。
富野 これちょっと変でしょ。
小形 そうですね。僕は変なの担当だったんですけど。これとかグリモアハンバーガーになったちゃったって奴。面白かったんで選ばせてもらったのと、これは結構綺麗な。綺麗ですよね。
石井 綺麗ですね。
小形 バンダイさんが選んだ賞ってのが、こんなの選んだんだ。ルシファーが自然の。これどうですか監督的に。
石井 お花みたい。
富野 これは僕は2番手か3番手に予定してました。
小形 これ結構自然の中で映えますね。次。これはかっこいいだけになりますね。
富野 かっこいいだけ。
小形 じゃあ最後のバンダイ賞は。これは。
石井 すごい。
小形 すごそうですよね。
富野 だからこれはバンダイ的に言うと色んなもの買わせるっていう魂胆ね(会場笑)。
小形 原価がかかってるからこれは良いと。なるほど。それでバンダイ賞ということで。じゃあこれを見た後で石井君の作品を見てましょうか。
富野 かっこいいだけでしょ。
石井 素晴らしいですよ。
富野 これ?
小形 これクリアーバージョンを作った。
富野 組んだだけでしょ(会場笑)。
小形 言っちゃった。
石井 墨入れちょっとしてるんですよ。ちょっとだけ出来る部分。
小形 写真はバンダイさんが撮ったんですよね。
石井 そうなんですよ。ただG-セルフは作りたいなと思ってたんですけど、折角ならクリアーパーツのもの作ろうかなと思って。
小形 作った。
石井 作ったんです。元々はほんとはもっと。
小形 やりたかったんだけど時間がなかった。
石井 そうなんですよ。
小形 結構ギリギリで頼んじゃったんで。売れっ子ですから。お忙しい身ですから。
石井 いやいやいや。
富野 ふと思い出しました。石井君の年齢の時に自分も組むだけだったよね(笑)。
小形 じゃあ大丈夫。他の方にも作ってもらってるんで監督にちょっと。アイーダの嶋村さん。嶋村さんが作ってくれた、何故かアルケインじゃなくてグリモア
富野 いや、ほんとにそうなの?
小形 そうですよ。
富野 へぇ〜。
小形 良いですか?
富野 ちょっと良いとは言い難いんだけれども(会場笑)。
小形 良いって言いましょうよ。
富野 こういう風に作れるっていうのはすごい。
小形 嶋村さんに作っていただいて。
富野 へぇ〜。良いじゃない。
小形 可愛いですよね。嶋村さん、良いじゃんいただきましたよー。次じゃあかぬかさん。アダムスミスのかぬかさん。
石井 これジャハナムと。
富野 やっぱり映画的なセンスがあるのね。年齢が見える。つまり映像を作るという。視点を持ってて。
小形 声優さんより演出に向いてたかもしれないですね。かぬかさん見てますか。映像的なセンスが監督から中々。
富野 だって今までガンプラコンテスト全般見てて、こういう写真ってあった?
小形 いや、なかったですね。二体使うのも中々。
富野 映像でものを考えるとか演出をするってセンスをお持ちだって。
小形 かぬかさん、今度絵コンテ描いてみませんか。
石井 伝えときまーす。
小形 じゃあ次ギゼラ役の佐竹さん。上手いんですよ。
富野 だから、えぇ?
小形 監督より上手いんじゃないですか?
富野 上手い上手い上手い。
石井 監督より。
小形 監督より上手いですよね。
富野 この塗り分けなんか。
小形 センスありますよね。
富野 すごいと思う。あの顔で!?
小形 いやいやいや、そうですよ。あんな女性なのに。
富野 だから。
小形 そうなんですよ。こういうのが。
富野 すごいね。
小形 次が、杉浦さん行きましょうか。
石井 チッカラ。
小形 チッカラの杉浦さんもこれ作りました。ジャスティマ。すごい頑張ってます。
富野 へぇ〜。
石井 これ何で塗ってるんでしょうね。
小形 すごい質感が。どうやってるのか全く分からない。
富野 僕もう分からなくなってきた。女の人が何でこんなことやるの?
小形 いやー、分からないです。良いことなんじゃないですか。
富野 これ偏見なんだよね。
小形 今女性もガンプラ作る時代ですから。最後がハセガワダイスケさん。「Gの閃光」歌ってる。
石井 え(会場笑)?
富野 線香だ(笑)。
小形 これタイトルがGの線香なんですけど、線香が光の方じゃなくて線香花火の線香ってタイトルになってますね。
富野 だから皆すごいねぇ。
小形 皆頑張っていただいて。
富野 その上で、こういう風に見せられて分かるんだけども、やっぱり僕が一番偉いのね。とても変じゃないですか。
小形 監督賞を最後に見てみましょうか。
富野 ね。
小形 これはすごいですね。
富野 これはこれですごいのよ。
小形 すごいセンスを感じますけどね。オタサー姫とかそういうタイトルだったような。
石井 そうなんですか?
小形 アルケインが真ん中。
石井 ほんとだアルケインだ。
小形 G-セルフに囲まれて。マックナイフのパーツと。
石井 脚マックナイフだ。
小形 はい、こんな感じで皆さんも色々G-レコのプラモデル買っていただいて遊んでいただければと思います。
石井 パーフェクトバックパックも出るんですよね。
小形 出た感じです。
石井 買わなきゃ。
小形 石井君買って、是非Twitterとか上げてください。一応昨日最終巻が発売されて安田さんのBOXが付いてますんで。
石井 初めて見ました、僕今。
小形 バンダイビジュアルさんががっちり安田さんに張り付いて、何とか上げさせたBOXのイラストです。
石井 これバックパックが全部載ってるんですね。
小形 もっと初めの予定では、安田さんにこんなこと言うと怒られるかもしれないですけど、もっとバーッと揃う様な感じだったんですけど、ちょっと時間がもうヤバいってことで、ロングの方に色んなバックパックがいるんですけど、ちゃんと入ってます。監督どうです? ご覧になって。
富野 僕も実を言うと初めて見て、えー、うん。ほんとのことは言えません(笑)。
石井 気になるなー。
小形 だそうです、安田さん、すいません。
富野 いや、ほんとにご苦労様でした。って言うのは手間を掛けてるから。
小形 そうです、非常に。
富野 ただ、ほんとのことを言うと、手間を掛け過ぎてちょっと問題がある、っていう感じはあります。つまりちょっと重っ苦しい感じになっちゃったな。安田的な軽みがないかもしれない、っていうのが手間を掛け過ぎたという感じがあります。
小形 ということです、安田さん。一応キャラも描いてもらったんですよ。ベルリとアイーダ。では時間になりましたんで名残惜しいんですけど時間になってしまいました。一言ずつメッセージをいただいて皆さんに対して。終わろうかと思うんですけど。まず石井さん。
石井 僕からで。まず本日お越しくださった皆さんほんとにありがとうございます。急遽来ちゃったので。
小形 ほんとにありがとうございました。助かりました。
石井 昨日最終巻発売されて、実は僕自身も何回も最終回観てて。今でも覚えているのがベルリ君の最後の台詞なんですけど、僕はこれで世界一周するぞ、って台詞をどうしても最終回の収録の時に言えなくてというか言いたくなかったんですよね。でもその後に色々考えて、ベルリ君を送り出さなきゃいけないなと思ってやったらそれでOKが出たので。再びG-レコを観ていくと本当に色んなキャラクターがいて、色んな描写があって、生活感が溢れてて。何だろうな、富野監督が仰る通り、アニメなんだけど現実味があるっていう作品なので、今ずーっとBlu-ray観ている方ももう一度1話から、ね、是非観直してまた新たな発見をしていただけるともっと楽しめるんじゃないかなと思うので、今後ともG-レコを宜しくお願いいたします。本日はありがとうございました(会場拍手)。
小形 では監督。
富野 今日こんなに話す予定がなかったので、ちょっと自分でもびっくりしてるし、本当にごめんなさい、皆さんの時間をとってしまって。ただ、さっきまで喋った様なことも喋る気になったのは、実を言うと皆さん方のお顔を拝見したからです。G-レコスタートの時点でのイベント上映会の時から、実を言うと2、3ヶ月はガックリしてた時があるのは、旧ガンダムファンの年齢を引っ張りすぎてて、世代が変わらないんじゃないのかという恐怖感に、本当に囚われてたんです。今日ここに来るのも実を言うとかなり嫌だったのは、そういう僕が知ってる人だけが来るんじゃないだろうか、っていう落ち込みがあったのは、さっき言った様な話をする気にさせてしまったんです。殆どの方が初めての方で間違いなく年齢・世代が下がってて。先程のお話でも分かる様にほんとに皆さん方がお父さんお母さんになったときに、今度はお子達に見てもらえる様な作品にしておきたかった、っていう部分がありますし、そういう継承する作業が皆さん方がいるお陰でできるかもしれないと思わせてくれたことがほんとに嬉しい。そういう意味では本当、小形からも言われてるんですが、歳のことはあんまり言うなと言うんですが、やっぱりこの歳になると継承してくれるかもしれない方の顔を見ることができるということがどんなに嬉しいことかというのは、分かってくれとは言いません。歳をとらないと分かりません。本当にそういう意味でとても嬉しくさせてしまってる部分がありますので、多少リアリズムでヤバい話もしちゃいましたけれども、某国会議員の様に誤植だったとか、誤謬だったとか、そういう様に言った覚えがなかったとか、そういうストラクチャーを使ってなかったとか、言い方しません。そういう覚悟も持てる様になったのもやっぱりこういう皆さん方の顔を見させていただいたからです。本当にそういう意味では今日いらしていただいてありがとうございます、ありがとございます、本当にありがとうございます(会場拍手)。
小形 監督ありがとうございました。一応このG-レコ研究会、BDが出ている間は何とかやっていこうということなんで、一旦これで区切りにはなるんですけど、監督もまた金融編とかやりたいとかそういう感じになるし。
石井 金融編?
小形 今日本当は吉田さん色々言われるところだったのがなかったりするので。また我々は来月9月12日にイベントありますんで、毎月G-レコのイベントがありますので、不定期開催になるんですけど、ここでまたお集まりいただければと思ってますんで。またその時に色々良い話もできればと思っておりますので。まぁ全然、まだ何にも言えないんですけど。監督も色々頑張っておりますので。
富野 そうなんだよね。G-レコにひとつ大問題があるのは、AKB的にならなかったってのは大問題でね(会場笑)。
小形 そうですね。100万枚ですね。
富野 100万枚とかないとお祭りできないからそっちが問題なんだよねぇ。
小形 ま、30年かけて100万枚売ってく様に頑張りましょう(会場笑)。
石井 ゆっくり頑張りましょう。
小形 監督も30年経って100歳のなんか貰えますよ色々。
富野 やだやだやだやだ(会場笑)。それは嫌だ。
小形 以上な感じで本日は本当にありがとうございました。
富野 ありがとうございました。
石井 ありがとうございました(会場拍手)。

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