富野由悠季の世界 兵庫会場 富野監督トークイベントレポ

富野監督、78歳のお誕生日おめでとうございます。
運良く開会式・内覧会以外の兵庫会場イベントに行けましたので、内容を紹介。

10/11 富野由悠季監督作品リレー上映ガンダムF91 富野監督舞台挨拶

富野 F91をここで観ないといけないのはとっても嫌な気持ちです。
兵庫県立美術館小林 この後何が嫌なのかお話いただきます。
富野 話すつもりはない(会場笑)。


富野 学芸員は「富野由悠季の世界ってこうなんだよね」って勝手に妄想して指示を出す編集やディレクターの立場になります。福岡とは全然イメージが違う。「富野のロボットものってこうなんだよね」と塊で重さの見える展示だったんです。よくもひとりで飽きもせずこれだけロボットものやってて目出度い人だねって。兵庫は塊で見えてた「巨大ロボットものしかやってないオジサン」がこんなこと考えてたのかという考える道筋みたいなものが見える様になっている。並んでるものは多少追加があるだけで殆ど変わってないんです。福岡の山口さんは観念とか理想論を課題として考えるおおざっぱなところがある。この人は語り口が違う。よく言えばディティールが良く見える。どっちが良いかは全く別問題で当事者の僕はどちらも良い。


小林 F91は「家族と戦争」というセクションで紹介してます。そのものズバリだなと。意識されていたのでしょうか。
富野 確認するけど逆シャアの後だよね? 確認は家族論と関係があって。逆シャアまでは国家規模で展開していたためにロボットアニメには似合わないんじゃないかなと思い始めた。国家論は堂々と言えるので作り方としてはズルい。映画の性能を考えた時に、映画というものは基本的に恋愛ものでなくてはならないと僕自身思います。どういうことかと言うと、恋愛ものは男と女ひとりずついれば良い。だけどいくらなんでもそこまで落とし込めない、二人だけでは劇が成立しないのが「富野由悠季」っていう変なお爺ちゃんなので。せめて家族で人の関係性を考える。身近な話を意識して考える。意識して考えたためにF91という失敗作ができてしまった(会場笑)。


小林 F91冒頭はスピルバーグの「宇宙戦争」に感覚が似てるパニックムービー。
富野 「宇宙戦争」観た時にはF91パクられたなって思いました(会場笑)。そのくらい自惚れてます。冒頭の当時のアニメーターの力っては本当にすごかった。特に動画家。よくもこんな面倒なデザインを億劫がらずに、線のいっぱいあるクレヨンしんちゃんみたいなキャラクターじゃないのを枚数平気で動かしてくれてる。感動しました。冒頭は「実写並」とは言わせません。キャラクターがきちんと動いている、作画のブレがない。本当のアニメーターたちを誉めていただきたい。こういう風なものがあるから、現在の京アニまでの流れがあるんだよという自惚れがある。本当に感謝しています。


小林 CVには現在の社会情勢の予見がある。
富野 自分の子供をいじめることができる親は、僕はお話だけの存在だと思ってた。現実には一つ二つでない事例が国内でも見られる様になっちゃった。家族というのは親という立場の大人がきちんと親をやるという意識を持たないと、家族ってなんとなくできるもんじゃないんだよね、とF91企画時に気が付いた。だからこそ鉄仮面みたいなキャラクターを作ったし、気に入ってはいるんです。僕の場合他の作品でもそうなんですが、キャラクターの絵面が気に入ってしまうとそれに安心して失敗してしまう傾向がある。ターンエーガンダムでも変なガンダムを作ってくれたお陰で周りからは袋叩きに逢った訳です。袋叩きを跳ね返すことだけに集中してしまうとああいう間違いをおかす。しょっちゅうやってるんです。F91の後半、観られたものじゃないんだよね。「トミノが作ったものは偉いんだから観ろ」とは口が曲がっても言えません。その書き込みがあったら本当に殺すぞ(会場笑)。
小林 出ましたね。
富野 これ書くんでしょ(会場笑)。
小林 話題騒然。


小林 当時「お母ちゃん」って言う人あまりいなかったなと。
富野 えっ!? そうなんだ。


富野 昔の人はコンビニやスーパーがなくてもそれなりに子供をぐれさせないで育てられた。現代はもっと上手にできなくちゃいけないのに何で我々はできなくなってしまったのだろうか、F91という具体的事例があるから喋れるんですよ。事例がなければ観念論的な話になってしまう。


小林 先ほど監督に「違うよ」って怒られたんですが、セシリーって置かれたポジションがキエルと割と近い存在というシークエンスがある。
富野 そういう意味では同じかもしれない。F91の時とキエルを演出していた時に違う部分があって。女性の自立を曖昧に考えていた。そういう意味ではセシリーをきちんとヒロインにしきれなかった。ラストを恋愛映画風にして逃げ切ったつもりでいたけど逃げ切れなかったのがF91。ラストシーンをよくやってくれたとアニメーターには感謝します。あの線の多い宇宙服の回転は演出家が怒鳴ってもできるもんじゃないんです。宮崎駿監督と違って自分で原画を描く力はありません。アニメーターたちはすごいということを思い出していただければ、彼らにとっての勲章になります。まとめ方上手いでしょ(会場拍手)? 当時の富野はスタッフに対する感謝が足りなかったんだよね。思い出す訳ね。だから来るの嫌だった。ラストシーンまで観てね。本当に良いんだから。


富野 限定カラーF91の色指定は全然覚えてません。

青春ラジメニア 10/12放送分富野監督インタビュー

富野 福岡展は簡単には喜ばないといけない、しかしうかつには喜べない。


富野 今回学芸員にも気がつかなかったことがわかった。(後の会場の)後出しじゃんけんの方が勝つ。


富野 作品ではない僕の原稿ではなく、本当に見てほしいのは動画。最終的にはDVDを揃えるしかないのよね。


僕の思っている美術館とは違う。切り口が違う。世界初の試み。


富野 富野展を見て、YouTubeの様にUPしっぱなしではなく過程を見て動画の性能に気付いて次世代のクリエイターが10人生まれてくれたらうれしい。僕にとってのプラスではありません。あと5、6年で死ぬから。


富野 (キングゲイナーOPについて)請け負い仕事と指名仕事、そこでまず勝負が始まる。田中先生を指名した訳じゃないんです。大人の事情。この人知らない。リストもらって「こいつ黙らせよう」って。


富野 勢いだけで自爆した様な楽曲もある。聴けば分かります。残る曲はヌケヌケと残ります。


富野 田中先生の印象は変わりません。めんどくせぇなって。流せない。嫌だけど好きな人です。


O野 富野監督とは何度かご一緒したことがあります。向こうと丹下桜のイベントの打ち上げが同じ場所だったとかで。面白い人。


南 富野さんはガンダム以外もやってるのにガンダムガンダム言われるので「ガンダムがライバル」って言ってて。


南 富野監督と打ち合わせが2分半程あったんですけど、覚えてらっしゃらないことは「覚えてない」ってピシッと言わはるんで。たくさん質問あったんですけどなんでカットしたかと言うと「覚えてない」で終わったからなんです。
岩崎 そりゃそうですよね。

10/27 劇場版Gのレコンギスタ 関西最速先行上映 富野監督アフタートーク

小林学芸員 劇場版G-レコいかがでしたか(会場拍手)?
富野 そういう返事を強要しない(会場笑)。お世辞でなくて良いですよ。この歳になると何言われても平気だから。


富野 SNS(おそらくスマホ)で映画を観たと思ったら大間違いです。当然SNSではなく大画面に合わせてコンテを切っていますが、距離感みたいなものを絶えず意識しています。13インチとかで見てほしくないというのが昔からありまして、映画にしたい映画にしたいと思ってた。久しぶりに見せてもらって、ベルリってのはこんなにも生真面目なんだ、やだなという問題。映像処理はだいたい予定通りなんだけど、キャラクターの造形は違って見えてくるという難しさの方がはるかに大きい。あまり意識してなかったけど、ベルリは養母をかなり好きな子なんだな。実を言うと新発見なんです。母と子の関係がこの尺で見えてびっくりしてます。TVの時は意識して長くとってたのを映画は刈り込んでいるんです。それでも皮膚感が見えてくるのは役者の力だろうな。オンリー録りでなく相方がいないと困るという要求もありまして。役者さんがそういう風に思ってくれる。ただの巨大ロボット戦闘ものじゃないんだなと教えられた。正直今回の仕事は幸せ感を感じています。このカットのアニメーターも意識して作画してくれてることもあります。大画面だと発見できて嬉しいですね。


小林 今回ノレドかわいいな~と。
富野 それは嘘で、前々からかわいいんですよ(会場笑)。
小林 僕はアイーダ派だったんで。
富野 TV版と印象違うなって方も多いと思います。比較して見てる嫌な評論家みたいな奴もいるんです。残念なことに評論家というのは現場での動画の繋がり方を感覚的に分かっていません。TV版ではカッティングが上手くいってなかったのもあります。動きを綺麗に繋いだ為に2cutが1cutに見えることがあります。優しく触る、激しくひっぱたかれたという強弱がつけられる。編集が悪いと優しく見えないことが起こるんです。そういうことが映画版で全体的にあるんでびっくりしました、TVでは繋がってなかったビグローバーとタワーと宇宙の距離感が繋がったと言われました。クラウンと教会のレーザーも繋がって見えたとも言われましたが、実はTVと変わってないんです。クラウンの電気が点いているからなんです。TVでは忘れててクラウンに人が乗っている印象がなかったんです。ここで大問題が起きます。さっき言ったことの半分が嘘になります。カットの繋ぎだけでなく、想像を喚起させるものが画面にないと分かんなくなるんです。TV版の不出来なところをかなり変えてます。トータルに変えないと映画には対応できない。最低限度の戦闘シーンのカット運びで済ませなくちゃいけない。今回も絶えず考えましたが、大変僕の悪い癖で一度戦闘シーンが始まるとちっともカットが減らない。アニメーターには罵られています。


富野 クラウンに電気を点けさせろというのが映画版を作らせろという一番目の理由のひとつになってます。G-セルフ(実際はG-レコと発言していた)の目は二番目です。もうひとつ、ナットに彩色を施したのは、僕に宇宙のものはホワイト一色という刷り込みがある訳です。(マイクノイズ)僕は絶えずノイズを出している。G-レコの物語にはノイズをたくさん入れています。ガンダムじゃないから。そういうところがガンダムファンの年寄りには分からない。「ガンダムじゃないから面白くない」と平気で言います。そういう人は見なくていい。そういうお父さんお母さん方には子供たちに見せると良いと言うのは、刷り込みがないからです。ナットの件はTVの時気づきました。映画としては大失敗なわけで、徹底的に直さなくちゃいけない。G-セルフの目は(劇場版コンテの)最後の4、5本で気がついて。なんではじめからG-セルフに目がなかったのか。ガンダムに目がないという刷り込みがある訳です。僕はガンダムファンの年寄りを「バカでチョンのお前らは想像力がない」とは口が曲がっても言えない。お前が何にも気がついてねぇじゃねぇか、ということですいません。本当にこれは謝罪します。このレベルの間違いは本当に気を付けなければならない。目玉を入れるリテイクが発生する訳です。撮影部から猛反対が来ると思ったわけ。そしたら何の反応もなかった。仕事として黙って言いなりにやってるだけなんです。若い人は信用しちゃいけませんよ。何一つ言ってくれませんからね。若い人からしてみれば「あのジジィ、権力を傘に命令して、命令通りにやって何が文句ある」って絶対言いますから。リテイクします、と言った時に「ハイ」すら言わなかったからね。「抜けてたからこっちもやっときました」だもん。誉められないと同時に年寄りだからと言って見識ぶってたらとんでもない間違いで。絶対足元に穴掘られてるんだから(会場笑)。1/1ガンダムには目があるので「良いですね」って言っててこれよ。経験律というのはとんでもない落とし穴がある。気を付けなければいけないという作り方をしてます。どういうことかと言うと、今回OPには目玉を入れてません。こういうミスをしましたごめんなさいという証拠を残してます(会場笑)。年寄りの凡例です。事例を見て若い方はこういうミスをしないでくれ。


富野 アニメだから何でもやっても良い訳ではなく、物語世界を作ったなら世界のルールを決めたら守らなくちゃいけない。そこで大問題。お前程度の思ったものが本当に新しいか? 世界中の映画見てる? 本当に新しいものは天才にしかできないことなんです。ガンダムに40年くらいがあり、僕は10年前にガンダムを作るのを止めた。その10年に時代のギャップがあって。なんで今世界で一番力のある人が自分のことしか考えなくて。アメリカとか中国とか。具体的固有名詞はこの二つしか挙げません。ヤバいから(会場笑)。統治をすることができるのか考えました。ガンダムでNTの話を作ってみたけど、NTになるハウツーをやらなかった為にNTの政治家が現れなかった。本当に申し訳ないなと思う。でもロボットもので政治家の教育なんてできるわけねぇだろって。できる訳ないからああいう様な人たちが世界のトップにいるんです。だけど本当にそうなんだろうか。子供たちが環境問題に声を挙げて国連で演説している。次に15~16歳の子が発現することで世界の潮流が変わるかもしれない。だったら巨大ロボットものでもできたはずだろ。だけど結局僕は「アニメだから」で逃げたんだろうと思います。そういう状況を見てヤバいよと思いG-レコの物語を作りました。そういう意味では天才ではないです。アートの世界の天才はある日突然出るんです。間違いなく天才で、世界中のものを全部チェックしたかの様なものを打ち出してくる。最近の天才を知らないから、僕の時代の天才を1グループ挙げておきます。ビートルズみたいなものです。ああいう出方をする。当時10年くらいビートルズはクソだと思ってました。分かんなかったから。LPがなくなるころ気付いて買いました。その程度の人間です。時代と共に出てくる才能にひれ伏さないといけないのが大衆。自分がものを作る側で「自分の作ったものが世界を支配できる」と言うならば最低でも新海アニメくらい作ってみせなきゃダメなんだ。100億超えてみせなきゃダメなんだ。力、実行力、感覚、センスを持たなきゃいけないんだよ、ということだけは覚えておいてほしい。アニメが好きなだけで作っちゃだめ。メカ、巨大ロボットものが好きなだけで作っちゃだめ。そんなもので巨大ロボットものなんて作れねぇんだよ。だけどそういう映画が多い訳です。一番端的に悪口を言うタイトルがあります「トランスフォーマー」です。あれだけバンバン変形してさ、楽しいか? 映画になってるか? 変形が増えるほどつまんなくなってる。あれが「映画」なんです。逆に言うと映画はあれができるんです。せっかくお金とマンパワー使って作るんなら、もうちょっと楽しいもの作ったら? お前らだけが楽しんでるもの作ってもしょうがねぇだろ。映画は不特定多数の人に観てもらえるものです。子供から年寄りまで。男女関係なく面白いと思えるものを作れるのが「映画」。小説は読解力が、演劇は好きに特化されていく。詩歌はもっとセンスが問われる。


富野 ショパン展を覗いてみてちょっとびっくりしました。ショパンのことはほとんど知りません。学校授業の最低限しか知りません。ベートーベンの方がカッコいいよねっていう程度の理解です。ショパン展行って下さい(ダイレクトマーケティング)。楽譜が展示されています。「好きだけで書いてないなこの人」と読めます。感情に流されてない。あんなに細かく構成されているとは思わなかった。書き込みの手数の多さ。表現は思いの丈だけでは絶対に作れないんです。気分だけでやってるバスキアみたいなのが芸術家なのか。123億が気に入らないのね。下手だとも酷いとも思ってない。出生とか感情の爆発は分かる。そういう意味ではそれなりの値段はつけていいけど、作品論だけなら1000万いかないでしょう。バーチャルな経済。
根差すべきものがなくてコピーやってたらすぐバレるぞ。とにかく肝に命じていなくちゃいけない。
小林 映画も複製芸術のひとつの。
富野 真骨頂ですね。映画の性能のひとつで、コピーすることで誰でも広く見られる様になっている。一見誰でもやれる安手の表現媒体だと思われてる。本当にそうなのか考える必要がある。


富野 映画で(生きて)行くのであれば文芸というものを知らなくてはならない。つまり劇、戯作者にならなくちゃいけない。それから小説家という立場に立って原作を提供する立場にならなければ映画は撮れない。


富野 ファーストガンダムの兵器を作っているお父さんと、それに乗って戦わなくてはいけない僕、という関係性、というキャラクターを立たせて物語を作ったのはガンダムが初めてかもしれない。そういう視点で評価してくれた人は今日現在まで誰もいません。リアルタイムの50代はそういう視点では見ていません。君たちはガンダムファンだから論外です。物語見てないから。映画を作る=ドラマを作る、単純にそれだけなんです。


富野 「七人の侍」はそれなりに評価してますが、全部が良いなんて口が曲がっても言えません。ラスト30分が長すぎます。後ろ30分は切れよ。ちょうど良い長さで推薦できる映画ありますか、と言うとよくわからなかったけどこれは名作だったんだよね。DVD出てるから観ろ! 小津安二郎の「東京物語」。これは名作です。どういう名作かと言うと、話はごくつまらないです。日常的な。それを見せるために映画の技法をこれだけ使ってるか、と見事な映画です。小津安二郎の映画はこれを見始めたら最後まで見ちゃいますよ。日本間の畳の上で立って行く。それから歩く。立つ、座る、それから何かをする。このカッティング……これは舌を巻く程すごいよ。これは覚えておいてください。これを覚えた上で見てください。そうしないと見過ごすから、お前ら。どういうことかと言うと、動画を見慣れている人は見過ごすけど、小津安二郎の時代は動画の撮影をしていないんですよ。1cut1cutいちいち立って座って歩かせて。この流れ全部1cutずつ撮って全部繋いでいる。あれやってみせられるってんならやってもらおうじゃないか、ってくらいすごい。でもちっともすごく見えないから。もう一度あえて言っとく。日本間の畳の上でやってる挙動だからアクションシーンなんかどこにもないの。なのにするするすると。日本人ってのはああいう挙動が着物でできたんだよね。そのスピード感を一度気が付いたらたまりませんよ。映画ってのはそういうところから入っていく。その上で東京物語の持っているとっても切ないね……老夫婦の話があるんです。子供たちが結局お父さんお母さんを捨ててっちゃうかもしれない話。だけどまだ死ねない。東京物語は世界的にベスト100じゃなくてベスト20に入っている映画です。そういうことから黒澤の映画がどれ程酷いものか分かれ! という言い方もあります。日本人のあの世代の所作ごとの持っている綺麗さというのは、それはすごいですよ。我々がどんなに乱雑に日常を過ごしているかということを反省していただきたい。だけどすいません、僕にはできません(会場笑)。


質疑応答1 宗教とエネルギーを接続した理由
富野 (基本的に既出なのでカット)スコード教の宗教的タブーに疑問を持ってくれる世代が出てくれるとありがたい。(キャピタル設定理由)一度絶滅しかけてた人類にはエネルギーを触らせない。地球から取り出すエネルギーがひょっとしたらなくなっているかもしれない。太陽パネルを張ればいいじゃないか? 10年前までは僕もそう思ってました。はたと思ったことがあります。気候変動の問題が出てくる。サハラ砂漠からアマゾン地帯まで全部パネルを張ったら、きっと天候のコントロールができなくなるのじゃないのか。太陽パネルを張ることがそれほど善的なものだと思えなくなってきたのもあってフォトンバッテリーという絶対に完成しないだろうエネルギーを設定した。エネルギーは太陽光があることの象徴なんです。地球内で生成できるエネルギーには限度がある。本来エネルギーはそういうところから発想しなくちゃいけないんだけど、風力発電太陽光パネルでなんとなく「再生可能エネルギー」と言ってるけど、この数十年の迷信かもしれないんだよ。あんまり吹聴することが良いことだとは思えない。国連で演説する様な高校生(グレタ・トゥーンベリ)から怒鳴られる。


質疑応答2 ノレドやフラウ、ファとか主人公と一緒となっている女の子はどうして結ばれないのか
富野 そんなの知るか(会場笑)! なんなんでしょうね。僕がきっと嫉妬深いからでしょうね。メインの二人は絶対引っ付けない。そういう潜在的欲求というかいじめ癖があるのかもしれない。作者が一番の問題かもしれない。ベルリにしてもノレドにしても今回劇場版で肉付きが付いたかもしれないと思っている部分があるんです。さっきの言い方は半分は冗談なんですけど、半分は本当で。ご本人に訊いてみてください、としか言えない。理想がありましてね、そういう風に言える様なキャラクターを作っておきたい。絵空事のまんまで終わらせたくないという欲があります。そういう風な意見が出てくるということは、ノレドも上手くいったんだろうなと思う。


富野 G-レコ一般公開のことで、記者の方に伝えたことがあります。「ガンダムでなかったらガンダムファンのお母さんお父さんに言ってほしいことがあるんじゃないですか」と言われたことがある。「それはある。もうガンダムファンのお父さんお母さんはGレコは絶対分からないから観る必要はない。ただ、お子さんたちには観せてやってほしい。お父さんお母さんが分からないことの問題をきっと見付けてきて唸るはずだから。それだけで良いからそういう機会を与えてやってほしいな」と答えておきました。「ガンダムじゃないらしいんだよね、だけどとりあえず観ると面白いから観ときな」という勧め方はしていただきたいな。騙されたと思って観たらとりあえず最後まで観ることができるかもしれない構成にはしているつもり。お子たちには伝えていただきたい。
小林 親子で観に行ってもいいですね。
富野 そりゃあ無理だって(会場笑)。

上泉雄一のええなぁ! 10/27放送分ゲスト富野由悠季監督

富野 東映がアニメをやると言って、ディズニーみたいなのだと思ってたら中国の白蛇伝。これアニメじゃないでしょ。偏見だけど。大ヒットしなかったのに喉元すぎればで、ここ1年で大名作になるのね。問題意識のない人たちの評価。


富野 ジオンが中世だとしたらZは近世にズラしただけ。


富野 高畑監督もぶきっちょ、ひとつのイズムにハマっちゃったから。自由度を持っていないのが僕がONE PIECEに勝てない理由のひとつ。


富野 子供と一緒に(富野由悠季の世界に)来て「本物」を見せてやってほしい。

10/31 富野由悠季監督作品リレー上映イデオン 富野監督舞台挨拶

富野 おはようございます、富野です。長丁場になりますけど我慢していただきたい。何を見ているかと言うと、皆さん方の年齢層を見ております(会場笑)。歳を召した方はさっさとお帰りになった方が良いんじゃないかと。自分がこういう歳になったからです。


富野 ごらんの様なデザインで落ち込みます。落ち込みましたからキレまして。「映画らしい話」にするならこうするしかねぇだろう、というところで「皆殺しのトミノ」の汚名を着ることになりました。あまり冷静ではなかった、というのが回顧としてあります。


岡本学芸員 冷戦の空気感が反映されているのでは。
富野 今になってみればそう考えてみることもできます。先述の通りきちんと考えがあってやっていた訳ではないです。


富野 アニメや映画がありがたいのは、ヒーロー、ヒロインの恋愛が成立していれば異星人であろうがなかろうが関係なくって。観客が恋愛劇を観るのが基本として映画というのは成立している。イデオンもその部分を正面に持ってくれば良いだろう。必殺兵器な訳です。


富野 「なんで子供が巨大ロボットを操縦できるんですか」って質問は本当にいっぱいあるけど、おもちゃ屋さんがいるんだから、それを変えたら降りちゃうんだよ。それだけの条件です。物語の必然性は一切合切ない訳ね。イデオンは上手くいかない苦しみがずっとあって終わってく。苦しみがあるからです。皆殺しにするまで話が終わらねぇよね、っていう。イデオンの物語は僕の作家性ではなく今言った様な気分だけで作って終わらせるしかなかった。


富野 TV版のラスト、子供たちもおかしいよね、って気づく訳です。「おもちゃ屋がスポンサーだからこうなったんだよね」「視聴率が取れないからこうなったんだよね」「元々のイデオンとソロシップのデザインが悪かったからこうなったんだよね」その落とし前をつけるという劇場版を作る意味ができた。


富野 TV版のイデオンにはガンダムと同じ様に狂信的なファンがいまして。こういうEDを迎えると思っていない人たちがいっぱいいたおかげで、そういう人たちから嫌われました。「皆殺しのトミノ」を言い出したのはあいつらの訳で。スペースオペラができるんじゃないのかと期待していたらしい。それが裏切られてしまったという感触があるらしい。今年になって当時の視聴者に聞きました。40年経つとどうもこいつら忘れてる。その後の評価に便乗して「富野の代表作だ」なんて平気で言う人もいる。おじいちゃんは怒ってます(笑)。


富野 イデという絶対力を設定しないと映画的に一気に終わらせられない。延々と戦闘シーンが続いちゃう。映画って90分以内におさめられないといけないんです。120分超えちゃうのはほとんど外道だと思ってるくらいの人間です。作劇的な都合です。重厚と言われるのも映画を作るための方便だったのもなきにしもあらず。ただ、作品として今になってもイデオンがそれなりに評価されているのも、すぎやま先生がああいう音楽を作ってくれて。神話的な厚みを作ってくれたことで救われているんじゃないのかなとつくづく感じます。すぎやま節がいまだにゲーム以上に鳴っていると僕は思ってます。


富野 発動篇は湖川のプロダクション(ビィーボォー)がメインで頑張ってくれた。映画版として作画を頑張ってくれたので、一応の格好をとってる。僕ひとりが頑張ってた訳ではなくて。僕はスタジオの中でキレて怒鳴り散らしていれば良い立場だった。当時の若いスタッフで後半の様な作画ができたのは本当にありがたいと思ってます。ただ、デジタルを使っていないアナログ的な画面で、作品の手触りとしては好きなんですが、ポケモンショックの問題があって。発動篇はTVでの一切の公開が禁止になってしまった。


富野 3年前と去年もイデオンを通して見ている。


富野 現代でも基本的に通用する話。40年間に科学技術が進歩しているが、進歩に則ったくらいに人類が進化しているのか。つまりニュータイプになっているのか。なっていないよね。イデオンで行われた様なことが起こってしまうところにますます来ているのではないか。人間の知恵の在り方、国家統治論に対して経済人や政治家たちがそういうところに目が向いてない。イデオンが語っているんじゃないのかと一人勝手に思っています。そういう論調を持った作品を、それこそ巨大ロボットものです。おもちゃ屋さんの手先で作った様な作品かもしれないものが生み出すことができた。ありがたかったと思う。今言った様な背景でなければ、僕の様な人間はこういう話を作れなかった。そういう意味では外圧ではなくて、条件付けをされると人間というのは何か仕事ができるんじゃないのか。イデオンがあったからこそ作り直している「Gのレコンギスタ」で現代以後の未来を視るにはどういう風に考えなくちゃいけないのか、という課題に対して、自分自身で回答を出せないまでも、今の子供たちに問題点を提示できる作品を作れた。という意味ではおもちゃ屋さんがあったおかげで、ガンプラがあったおかげで、こういう物語をこういう状況で上乗せすることができた。そういう意味では力をいただいていると思います。その力は全部マイナスに見える要因でできている部分がある。解決策を見つけなきゃいけないんだけど、大人たちには見つけられない。16歳のグレタさんが地球温暖化に声を挙げた。そういうことに対して大人が何をしなければいけないのか、本気になって考えなくてはならない時代になってしまった。ひょっとしたら40年前より酷いかもしれない。冷戦より状況が酷いかもしれない。なのに国内のニュースでご存知の通りです。温暖化余波でしょう、台風がこれだけ来ている。温暖化余波でなく大人たちがだらしなくなってるために安倍内閣でこれだけ次々と大臣が辞めてくる。大人が正気になっていないんじゃないのかな。(話)止めます。余分な話は絶対するなって言われてた(会場笑)。どうも生き急いでいる様なのでこういう話ついついしたくなっちゃう。お若い方、なんとか頑張って大人たちを粛清してやってください、と言うのも大人なんで困った。

11/2 富野由悠季の世界 兵庫会場記念トークイベント「富野由悠季監督に質問です。」

富野 (挨拶もそこそこに)質問がものすごい数あるのね。本当に困ってるわけ。急ごう。

質問1 富野展の誉めるところとダメなところ
富野 誉めるところは6学芸員です。この説明をするとあっという間に時間が過ぎるんで説明はしません(会場笑)。このテンポで行ったら終わんないんだもん。とても手厳しいダメ出しがあって。富野由悠季が一番影響を受けたものを展示しなくちゃいけなかったがその部分が全くない。僕が小学校高学年~中学校で観たSF映画の資料が全くない。僕はそれに一番影響を受けてガンダムの様な作品を作ることになった。展示をしてくれと依頼しましたが、現在DVDも手に入らない状況が続いている。僕の本当の意味でのバックグラウンドが見えない。今みたいな説明をするとあっという間に時間が経つわけ。次に行こう。


質問2 少年時代に影響を受けたものは
富野 少年時代とは「初恋をした頃」という言い方があります。その時に初恋をした人が、文学少女だと思ってたらアスリートでショックを受けて絶望しました。


質問3 「母」のモデルはお母様でしょうか。
富野 当然モデルは母です。奥さんからは「マザコンだ、マザコンだ」と言われています。そういう母でした。次。


質問4 手塚治虫先生との思い出は
富野 具体的なエピソードはありませんがひとつだけ覚えていることがあります。あるミーティングで手塚治虫が「俺、絵が描けないんだよね」って嘆いたセリフを本人から聞いております。


質問5 東映虫プロの系譜の監督が多いのは何故ですか
富野 嫌でも応でもTVシリーズを作らなければならなかった。作るスタッフがいた。各パートがオンエアの状況を知っていた。環境がスタッフを育てていた。今のデジタル環境はスタッフを育てていないかもしれない、と言いたい。これ以上は時間が掛かるので言いません。はい次!

質問6 ライディーンの思い出
富野 第1話のダビングが終わって、東北新社の創業者の植村伴次郎さんから呼びつけられて。「こんな下手なダビングなんなんだ、リテイクしろ」って言われて。翌日真っ青になってリテイクしたのがライディーンの第1話です。


質問7 ペリーヌなど名作劇場の思い出
富野 名作もので基本的に気をつけているのは、ロボットものの気をつけ方とは全く違います。日常の所作ごとの手順というのをきちんと描いていくことを基本的に気をつけています。努力はしましたが、全部演出、作画として描かれているとも思えない。逆に上手なアニメーターのおかげで助かったこともいっぱいあります。


質問8 異形のエイリアンものをやらない理由
富野 いると思ってないからです。


質問9 なぜ人型兵器なのか
富野 おもちゃでしかないからです。


質問10 「優しさ」とは
富野 ものすごく簡単なことです。目の前にいる人、この人はどういう風に思っているのか想像してあげることです。


質問11 ヒット作の共通点とは
富野 そんなの知ってりゃこんなに苦労しません(会場笑)。


質問12 制作スタッフのチームワークについて
富野 プロダクションで制作しているので基本的な苦労はありません。元々共同作業を承知のスタッフが集まっています。その中での仕事の出来不出来は当然ありますが、それほど大きな障害ではありません。それなりの能力のある方が集まっていますから。この10年で言うと苦労はありません。それ以上の苦労は別にありますが2~30分で説明できません。


質問13 群像劇の作り方
富野 この質問をする人は創作能力がありませんと断定できます。きっと自分の好きな人を登場させたいと思っています。順序が逆なんです。人が居るためには社会が要るんです。世間を見れば嫌が応でも判るのに、それを全部排除しようとして物語を作ろうとするところに、基本的に想像力がないと言い切れます。


質問14 聖地巡礼向け作品は?
富野 作品を観ていないので挙げられません。


質問15 作品舞台としてロケしたい場所
富野 基本的に知ってる土地を使う訳ですから、皆さん方の出身地や馴染みの場所を舞台にせざるを得ないんじゃないか。どういうことかと言うと、日常の中のドラマの素材に気をつけて見ていれば作家的素養も生まれるのではないか。当たり前のものを当たり前のものとして受け入れて暮らしていくだけでは日常生活者です。クリエイターやアーティストは暮らしきっていません。全部に対して不満や好きなど感情が乗っかるものなんです。のせることができなければ基本的にクリエイターになることは不可能だと思います。実をいうとそういう人たちはそんなに多くはない。学校教育も嘘をつくんです。一般人にそういう想像力はありません。なのにそういう教育を受けていくと自分たちもアーティストになれると思って人生を間違っていく例をいっぱい見ました。


質問16 苦労した作品やシーン
富野 そういう質問に対してはムカッとするんで(会場笑)。全部ですよ。自分が作ったもの全部。そういう思い入れがない作品は基本的にクズですね。僕の場合、人気があろうがなかろうが同じ様に接してきたので全部可愛い子供です。特定のものを取り立てることができにくい人間です。


質問17 印象残っているロボット殺陣
富野 ありません。


質問18 劇場版ガンダム前後でロボットものへの考え方の変化
富野 全くありません。


質問19 ガンダムイデオンと打ちきりにあったのにも関わらず制作できた理由
富野 TVアニメ、スポンサー、時間枠、そういう規制全部に腹が立ってるからやれるんです。それだけのことです。


質問20 イデオンの狂気の理由
富野 スタッフは狂気を持ってません。極めて冷静に作画をしてくれました。本当に感謝します。狂ってたのは僕だけです(会場笑)


質問21 イデオンラストの波濤が実写な理由
富野 こういう質問には本当に困ります。答えようがないからです。これ以上説明すると角が立ちますので説明しません。


質問22 主人公に冷たい理由
富野 とてもびっくりする視点です。僕の作品のメインキャラは皆自立をしている人たちですから、構ってる暇がなくて。彼らが勝手に物語以降も生きているだろうと思ってます。そういう人たちを追っかけてどうします? 絵空事のキャラクターに肉付けがつくと完全に別の人格になるんです。彼らが僕の方を向いてくれません。僕が手を伸ばせばきっと逃げていく様な女たちがいっぱいいただろうし。それがクールに見えているのかもしれません。人の付き合いってそんなもんですよ。あなたが死ぬまで見てくれる様な「善い人」でないと。そういう覚悟をつけろ!


質問23 ネーミング理由
富野 そういうボキャブラリーしか持ってない幅の狭さを自覚します。


質問24 思い入れのあるキャラ
富野 ありません。自分の作ったキャラクターをなんでそんなに憎んでいられるか。悪人キャラでもそうです。上手く造形ができたら「しめた!」と思うだけです。その部分が一番欠けている創作力。作家として失敗だった自覚があります。


質問25 ララァ、ラライヤ、ロランに血縁はあるのか
富野 作品が好きになってしまうとそういう風に見えてしまうんだな。ひとりの人間作っているので同質性が炙り出されることを教えられた。本当は違うキャラクターを作りたいが、こういう系譜に陥ってしまうのは僕の癖なのでしょうね。ちょっと残念だなという指摘を受けている。自分としては全く別キャラクターを作っているつもり。本当は分かってほしいと言いたいけど、そういう風に作れていなかったと本当に残念に思ってます。


質問26 ロランとラライヤが金魚な理由
富野 僕が金魚しか知らないから。最近このキャラクターを知ってれば使いたかったものがあります。ニュージーランドのハッピーヘン。最近TVで見て、こっち使いたかったなという後悔、自分の趣味性の狭さの自己嫌悪に陥る。


質問27 女性キャラの造形で意識したこと、時代によって変化したこと
富野 自分の都合の良い他人なんていないんですよ。ドラマを作るにあたって何十人もの他人を使わなくちゃいけない。女性も全部自分の好きなタイプの……今迂闊にタイトル言いそうになった。同じ様な顔、目、声してるねーちゃんばっかとり囲まれて何が楽しいの(過去発言と合わせるとラブライブ!か?)? アニメであっても娯楽であっても、自分の都合の良い人だけを集めること程つまらない仕事はないとむしろ思ってるくらいです。作家になりたいんだったら僕のやってきた人物配置を容認しなくちゃいけないんじゃないの。あなたの作りたいものは既に皆がやってるんだから。10年後に好まれている女性キャラクターなのか、お前今から想像してるのか? そういう目線を持って次の時代のクリエイターになっていただきたい。


質問28 女性キャラは奥様から影響されていますか
富野 されてる訳ないじゃない(会場笑)! その前から出来上がってる性格なんだから。


質問29 結婚以降の家族構成の変化は作品に影響があったのか
質問30 G-レコの家族描写が真っ当な理由
富野 孫の顔を見る様になれば多少はあります。より明快に意識が言葉になったのは、大人ってのは子供に責任を持たなくちゃいけない。責任を持ってる大人がどれだけいるのか。自分が死ぬまでの立身出世と稼ぎが勝負な大人が多いんじゃないのか。今朝のTVでも何でこうまで小学校が荒れているのか。教員たちも業務をこなすというところに行っちゃってる。責任を持った行為ではないと言い切れます。大人は次世代に責任を持つべきなんだ。一番上の孫がそろそろ小学校を卒業する年齢。自分自身が訓練されてきたので、僕はGのレコンギスタを作りました。


質問31 主人公が子供な理由
富野スポンサーへのサービスです。


質問32 これからの子供に求められるスキル
富野 我々大人の杓子定規な考えを子供に押し付けることはしない。「気をつけてPCもスマホも与えていますよ」っていうのがステレオタイプなんですよ、押し付けなんですよ。皆がやってることが一番責任を果たしていないんです。


質問33 7歳の息子にオススメの富野作品
富野 強いてお子さんに見せる必要はない。子供が気がついて見る様になった時に制ししない。押し付けることは基本的に避けていただきたい。


質問34 子供の見る番組に下品だ過激だと親が規制することの是非
富野 自分たちの子供時代を思い出していただきたい。親が規制する番組を見てたでしょ。子供の自意識は止められないと覚悟していただきたい。ただ、放任してはいけない絶対例を挙げます。世界的なアスリート、アーティストは7歳から習い事をしています。「レベルが違うから」と放任するのは弱者の逃げ口上。どちらを採るかは皆さんの問題です。


質問35 小学校教員です。問題行動を起こす子と対等に話すにはどうすれば良いか、自信をつけさせるには
富野 わかりません。ただ、自分自身の経験から思うことは、本人が興味を持つこと、不満の原因を発見することが必要かもしれない。本人が変わらなきゃいけない。


質問36 Zの時にアムロ以外に軟禁されていたNTはいたのか(8歳)
富野 8歳の子供からそういう質問されると本当に頭痛。ディティールを追っかけてる暇ないんで。映画に映ってることしか考えてないんで知りません(会場笑)。ただ、絶対それはいるはずです。


質問37 民主主義、社会主義もすっとばして貴族主義に衝撃を受けた。なぜ描いたのか
富野 貴族という言葉をこの方はとても崇高な意味でとらえているのかもしれない。現在の経済格差はかつての貴族なんてもんじゃないですよ。現代中流階級は16世紀貴族並の生活をしているんです。エアコンやコンビニは貴族にはない。でも建物はみじめ。有産階級、権力を持っている人たち、悪い固有名詞を挙げるとオリンピック組織委員会。あいつらの金持ちのこと考えるとかつての貴族、屁でもないよ。


質問38 Vガンダムってなんで見ちゃいけないんですか(会場笑)
富野 病気になるからです(会場爆笑)


質問39 ターンエーガンダム風と共に去りぬを意識していたのか。雰囲気を感じた
富野 同感です。似てしまうんでしょうねぇ、という部分は自分の創作力が足りなかったと思ってます。全くなぞってないんです。意識してはずしてるんですけどね。同じセットを使ってます。使い方が全然違います。


質問40 6歳の息子がTV版G-レコ最終戦を理解して解説してくれました。子供の理解力を見込んでいるのでしょうか、それとも息子が天才なんでしょうか(会場笑)
富野 見込んでます。コンテ、編集時僕も訳がわかんなくなりました。今の世代の子は動画で内容を理解することに訓練されています。子供だからと舐めちゃいけない、むしろ子供の方が解像度が高い。ボケちゃった大人が現場に入ってきて子供を舐めるんです。トランスフォーマーみたいなバカな映画が作られるんです。


質問41 子供の頃の富野作品は理解できたのに最近の作品は理解しにくい
富野 大人になって判断力が劣化した側面もあるかもしれませんが、別の側面もあります。大人に場合。なまじかつてのものが好きだったりすると、その既成事実に囚われて目の前の論理を理解したくないという心理が働きます。それがガンダムの場合、制作側にも起こっています。僕自身もそうなんです。ガンダムの呪縛に囚われてしまって、Gのレコンギスタでもガンダムと同じようなことをやっていたりする。そういうものを映画版で整理されているので、見やすくなった。画像を見ているだけで理解できる様になった。TV版Gレコは旧ガンダムファンから基本的に袋叩き、総スカンくいました。「全くわからない」。困ったことに「ガンダム Gのレコンギスタ」と告知をした訳です。僕は許してません。営業が勝手にやってます。分かんない告知をしたらそりゃ分かんなくなります。


質問42 9歳の娘がG-レコに関心を持ってくれない。ロボットものが好きじゃない。映画に誘うアイデアは?
富野 本人が好きじゃなかったら押し付けちゃだめ。メカが出てきた瞬間に見たくない女の子がいるのは当然です。僕は孫たちに見せません。押し付けません。気がついて見てくれればいいんだけど、きっとそういうことはないだろうな。じいちゃんとしては泣いてます。


質問43 「映像の原則」再改定の予定はありますか。
富野 「習い性で仕事をやるのは危険だぞ」を追加したいがわざわざ再版する様なことでもないと思ってます。


質問44 声優を決める時に重要視すること
富野 絵は決まってる訳です。合う人を探す、それだけです。それ以上は一切ありません。さっき言った、声が高い人だけ集められるのは、耳を持ってないんじゃないのか。


質問45 阿久悠氏から習った手法や作詞で気をつけていることとは? 気に入ってる歌詞は?
富野 阿久悠さんとは具体的な話をしていません。実を言うとハウツーは伝えられないんです。その人固有のものですから。結局物語を考えるんだよね。作詞の回答はこれが全てです。それで想像できなかったらそういう仕事辞めろ。全部ケースバイケース。気に入ってる歌詞は「いい日旅立ち」です。本当はもっと好きな歌詞があるけど忘れてます。


質問46 世界観が決まっていれば歌詞はサラサラ書けるんですか
富野 サラサラ書ける奴がいたら連れてきてほしい。


質問47 アニメーション制作過程で好きな行程
富野 (全体ストーリーの)エンディングにとっかかれたら幸せです。その時は自分天才だと思ってます。


質問48 モチベーション維持方法
富野 仕事をこなしたからです。仕事でなければモチベーションが出る訳がない。そのくらい怠け者です。


質問49 世代を超えて響くアニメの共通点
富野 呆れるくらいつまらない回答を用意しました。希望とか夢のあるもの。それが達成できるという嘘を子供たちに見せることが共通点。


質問50 若いうちにこれだけは読め!という作品
富野 僕に実行できなかったけど実感できます。世界名作全集、日本と世界、できたら両方200冊読め!


質問51 作品制作におけるイデアの様なものはあるのか
富野 変わることのないイデアの様なものがあるべきなんです。そういうものを表現していくべきだと思ってます。日本語で言うと「善きこと」です。善きことを示す、ということに尽きる。これについては山ほど言いたいことがあります。


質問52 監督の衣装がおしゃれですがスタイリストがついているのか
富野 雇うとお金がかかるのよね。そういう面倒なことはやってません。全部私服です。愛人いませんから奥さんの見立てです。


質問53 好きな食べ物
富野 基本的に食べ物に興味がないので一切合財食べ物のことは分かりません。作品の食べ物が美味しそうなのはその時の担当アニメーターが大騒ぎしているからです。本当頭痛。


質問54 仕事後のくつろぎと睡眠時間
富野 いつも睡眠不足だと思ってるけど女房に「いつも寝てる癖に!」って言われてますのでよく分かりません。くつろぎの時間はこの歳まであまり持ったことがない。この10年は払わずに済んでいるけど、3ヶ月後の住宅ローンを払うのが安心だった訳です。くつろいでたら殺されます。


質問55 影響を受けた芸術家
富野 穏当な固有名詞を挙げるしかない。ゴッホクリムト


質問56 尊敬する歴史上の人物
富野 全く知りませんので挙げられません。1冊や2冊の評伝くらいでは信用しちゃいけない。まだ見つけていないのが本当のところかも。宝塚劇場を作った小林一三さんは偉いとは思う。あの当時レヴューをビジネスにできる想像力はなまじのものじゃない。だけどその部分で尊敬できる人にあげられるか?


質問57 一番幸せだと感じた出来事
富野 完全にこの観客に媚びてる回答を見付けました。「今です」(会場拍手)。


質問58 宇宙に行ってみたいですか
富野 行きたくありません。2日以上はきっと飽きる。地球と月が見えなくなったらこわいですよ。そのことを口にする宇宙飛行士はいません。そういうものに税金が使われるのに絶対反対です。


質問59 宇宙移民の前に宇宙で子供を産む実験がされると思うが、その子供は何人になるか
富野 こういう人は存在することがないと思ってます。おそらく1000年ないと思う。あり得るとしたら人類は全滅してます。


質問60 今注目しているテクノロジー
富野 海洋中のマイクロプラスチックを除去する技術。かなり深刻です。


質問61 現在のテクノロジーを知ってたら物語が変わるものはありますか。スマホなど
富野 あまり変わってるとも思いません。SNSで世界中の人たちと友達になれるみたいな話があったりして。Facebookは平気で嘘をつく。フォロワー=友達か? むしろ友達が少なくなっている、孤立している子たちが増えているんですよね。SNSのおかげで。今まで技術の進歩で人間は少しは幸せになったかもしれない。もう幸せの総量が増えることがない。人類は道具ほど進歩していない。進化から取り残されている。道具に勝ったつもりになった奴らって誰だか知ってます? 開発した奴らだけですよ。彼らに献金してるんです。


質問62 今後の作品に人工知能は登場するのか
富野 出てこないと思います。


質問63 若手科学者への忠言
富野 技術をどう行使するのか、社会に対しきちんと作用するのか絶えず疑え。技術は社会に対して優しくなければならないと提唱されていた方がいます。島秀雄さんです。


質問64 ターンエーよりG-レコの方が若々しい
富野 孫以下の世代に問題を気づかせるには嘘ついて楽しいGレコだから観てよと思って作ってます。


質問65 次回作の構想について
富野 物語を考えていく時に一直線に考えると、G-レコの次はますます過激になっていくでしょう。この歳になるとおかげ様でそういう病に陥ることがなくなりました。優しいものを作っていきたいなと思います。僕の場合はガンダムの後にイデオン作ったのね(会場笑)。「そうなったらイデオンだろう」って言われたら、それはさぁ……。一直線で考えるとそうなんです。そうではないと思いますけども。この次に何があるかはよく分かりません。この質問者は想像力がないなと思います。あと3日もしたら78にもなろう人捕まえてね、「おじいちゃんさぁ、次何作るの?」ってよく訊くよね(会場笑)。こういうところにリアリズムを見ていないガキ!という気がしますので、こういう質問はやめていただきたい。


質問66 没企画でこれは展示したかったという作品
富野 ……ないですね。没企画はちゃんとした企画になってないからでしょう。


質問67 印象に残っている仕事仲間
富野 高畑監督が結局一番色んな意味での影響が響いている方だな。接触は多くなかったけど。ハイジ、三千里、アンはTVシリーズで作品としてまとまってるかと言うと多少疑問があり名作とは言いづらいけど、学びは深かった。


質問68 別の仕事をしようと思ったことは?
富野 ありがたいことにありませんでした。アニメが一番僕の体質にも合ってたんではないか。


質問69 想像以上に苦労した作品
富野 概ね想像のやや上くらいで大変でした。


質問70 一番わくわくした作品
富野 あまりないな。


質問71 今後のロボットアニメについて
富野 考えたくもない(会場笑)。


質問72 何かひとつやり直せるなら
富野 そういう発想は絵空事だから口にはできないな。ただ、自分が孫世代のために本当は一番しなくちゃいけない仕事を考えました。悔しいけど農業しかない。絶対に死なないで済むかもしれない。高層マンションの家庭菜園の奴ら、お前らマンションの連中食わせられるのかよと本当に思います。農業というのは本当に過酷で、それなりに恵まれた、一族郎党を養える土地、子供の頃からの能力が必要。自分がなんて脆弱な人間なんだと自覚します。やはり基本は農業で自給自足をしていくのが原則だろう。日本は海に隣接しているので次にやるのが漁業。両方が兼業できる漁師さんになりたかった。それくらいの認識を持たなくちゃならない。オリンピックなんかやってる暇ないんだよね。台風で被災したブルーシートで暮らしている人たちの対策を考えなくちゃいけない。札幌マラソンも関係ないんですよね。あの人たちのことはどうすんのよ。なきものとして国家が動いているでしょ。これが国家ですか。我々大人は無残なのかもしれない。人類が瓦解していくのをただみていくだけなのかもしれない。オリンピック返上がまず第一にあるべきなのではないか。この部分は削除しろよと言いたいけど拡散しましょう(会場笑)。


質問73 今回の展覧会で富野監督の名が映像史に残ることが一層確実となった。後世へのメッセージは
富野 自己満足させられるという意味ではありがたい。発狂しないで死んでいける。もうひとつ重要なのは、「富野由悠季の世界」ではなく、富野由悠季の世界を描く上でこれだけの集団が集まったからできた。デジタルの世界でも全部が自動入力ではなくプログラマーの存在がある。ビッグデータから取り出せるということにいまだに信用していないことがある。電力どうすんの? 遮断を想定に入れてるの? 世界中に点在としゃらくさいことを技術者は平気で言うんですよ。テロ集団に襲われてミノフスキー粒子を撒かれたらどうすんの? そういうところまで想像して対応してるのか、いまだに信用できない。自動運転、リニアモーターカーもそうです。社会全体への「善きもの」なのか。「道徳律」なんですよ。人が本能的に共同社会で生きていく上で軸になる芯を確立したのは道徳なんです。道徳に則っているのか。道徳に則ったデジタル技術の論を展開した人はほとんどいません。遂に最近知りました。マルクス・ガブリエルというドイツの哲学者です。この方の本が出てますので参考までに読んでください。


質問74 歳を重ねて変わったと実感できる点
富野 いい人になったかもしれない(笑)
(ここで事前に示し会わせていた、ハッピーバースデイディアよしゆき、プレゼントに富野展デザイナーの非売品78歳Tシャツ)
富野 本当にありがとうございます。この会場の皆さん方に媚びてるかもしれない、「今が一番幸せなんだよ」ってのは、やっぱり嘘じゃないんですよ(会場拍手、退場) 。

11/2 富野由悠季監督作品リレー上映 逆襲のシャア 富野監督舞台挨拶

富野 年寄りを出迎えるにあたってニヤニヤする必要ないんですよ(会場笑)。どう考えたって僕なら77のジジイにニコニコ出迎える気にはならなかった。無理する必要ありません。俺帰るって場合も絶対に叱りませんし、後ろから殴りもしません(会場笑)。


富野 元町映画館について思うことはあります。このサイズの限定された空間、スクリーンの置き方含めてすごく上手だな。一番後ろが観やすいだろうなと想像がつきます。この規模の映画館を全く知らない訳じゃなくて。一番前で観たらスクリーン見えねぇよ、くらいいっぱいある訳で。お世辞でなく上手に建て込んだなと感じます。実は昨日見に来ました。よくやってくれたなぁ、こういう人がいないと、やれやれ(会場拍手)。


富野 (ここだけは見ろというシーン、カットは?)あるわけないじゃない(会場笑)。と言うのは、「ここが良かった」「あそこが良かった」と言われた映画は失格なんです。映画というのは本当にこわくて、全体を観た時に「得したな」「観て良かった」これが最大の評価です。一ヶ所に囚われてそこだけが良く見える、役者だけ見ていたりするのは最悪で、それは映画を観たことにはならないんですよ。そういうことがあるから今みたいな答え方になります。嫌味でもなんでもなくて。全編で観た印象でしか説明できないんです。だから、欠点を言うとラストシーンをああいう風にしか作れなかった、という意味での自分の力量がなかったと自覚する。最後の光は黒い紙に針で孔を開けて撮影するんです。あそこは半分以上僕が開けてます。誰もやってくれる人いないんだもん。本当はこういう質感でなくディズニーみたいに光をいれたいんだけど「もう嫌だ」って止めたんです。そういうことひとつ見ても「なんかなぁ、クオリティがなぁ」というのはある。


富野 (観て何が起こってるか分からなかった)最近観直してみて、よくわかんなかった(会場笑)。


富野 (観る歳、立場で見方が変わる)その感覚は僕の感覚と全く同じなんです。するっと観ることができない時があって。「こうなんだよね」と囚われると次のシーンがわかんなくなる時がある。映画としては必ずしも酷い映画だなと思うと同時に、本当に強がりです、映画ってこういう風にも作れるんだという部分があって。多角的に観られる性能を持っているらしい。アニメじゃなくてもろリアルに映画やってるんだ。巨大ロボットものここまで映画を作れてトミノは偉いなと思ってます。自画自賛です。10年ぐらい前から自分が作った仕事だと見てない部分があって、作品として独立してるんです。「この当時のトミノはこう考えていくいてこういう誤解があってこんな風にしか作れなかったんだ」と映画っぽく見える。一度観始めると困るのは最後までみちゃう。優れた映画とは言えませんが、一応映画になっている。作っていて良かったな。


富野 (富野由悠季の世界)見る必要はありません。時間が掛かるばっかりで大変だし、見るものは殆どないんだから。


富野 (逆シャアで意識した当時の出来事はあるのか)ありません。時代と対照して考えた、回顧したことがないので説明できません。ただ、作品を発表するにあたり絶えず時代に影響されたのは事実です。批判的に見たり好きな事件があったりして、作品に嫌が応でも反映されてしまう。僕の場合はそういう影響がかなり大きいと思ってます。「狂ってるんじゃねぇか」という部分は画面に出ている。それが狭い作品になってしまっている部分がある。そういう気分があるからこそそれぞれの時代を批判的に見ている部分がある。世の中と無縁なところでアニメを作ってるんじゃないんだよ、というところはご承知おきしていただきたい。


質疑応答1 ザ・ナックやサザビーの名前の由来
富野 本当につまらない質問ですね(会場笑)。(質問者が応援うちわを持っている)笑えない。少なくともね、自分以外の人が10人以上いたら社会性を持った質問をしろよ。その程度の質問なので答える気もありません。答えたらしらけるもん。その時の気分でネーミングしているから当時のことは思い出せねぇよ。偉ぶって言います。俺、逆襲のシャアしか作ってない人間じゃないもん。まともな質問じゃないと受け付けない。
参考:富野監督応援うちわ


質疑応答2 女性キャラのセリフが女性から見ても生々しい。モデル等あるのか
富野 先に説明することがあります。純然たる男性、女性というセックスが分化している人はそれほど多くない様です。だいたいがバイセクシャル的に両方の要素を持っているのが一般的な様です。という話をしておかないと誤解されるからで、僕は基本的に自分の中の女性性を自覚する時期がありました。それが小学校上級生か中学校かは分からないけど、そういう要素があったと自覚してます。シナリオを書く様になってはっきり自覚して、ものすごく命拾いした。キャラクターを作る時に両方の要素があって書けたんだな。だから他のアニメの女の子が大っ嫌いです(会場笑)! 全部おんなじ声で顔で、なんでこれで女性かと思うんだろうか。おそらく作り手がフラストレーション溜まってて、いつも女の子のお尻を追いかけてるからああいう風になるんだろうなと邪推してます(会場笑)。このレベルの質問なら追加して構いませんよ。


質疑応答3 ハサウェイは当時の若者を投射したキャラクターなのか
富野 ハサウェイのモデルは全くおりません。が、作る上でものすごく深刻に考えました。概ねのファンに知られているブライトさんとミライさんの子供だという大前提があるわけです。大前提を満たす子はどういう風にティーンエイジャーの時代を迎えたのか。ひとつふたつの凡例じゃないんです。ものすごく真剣に考えました。偏屈、向上心を持った子であろう。ひょっとしたらファーザーコンプレックス、マザーコンプレックス両方を持っているかもしれない。要素を組み合わせて僕の場合ハサウェイはああいうキャラクターになった。そういうハサウェイを逆襲のシャアで造形したおかげでその後閃光のハサウェイっていうノベルスが書けた。そういう意味ではおそらく当時のティーンエイジャーの立ち振舞いを意識してトータルでまとめたもの、だけど最終的にはブライトさんとミライさんの二人に育てられた子の持ってる鬱屈感があるのはと想像しました。


富野 逆襲のシャアは子供たちにと一般的に構えたつもりはなかったんですが、ハサウェイの造形を回顧させてもらうと、「普通の映画」としての作り方をしたかったのが基本的なテーマとしてあった。あったからこそ「ガンダム」に成りきらない「逆襲のシャア」という作品があったんじゃないかと自覚してます。


富野 チェーンは成功したキャラクター。


富野 あと2、30年、逆襲のシャアも生き延びるでしょう。


富野 (記念写真撮影時)そのうちわ(富野監督応援うちわ)は写させるな(笑)! 大人のやることではないでしょ。実はこのうちわ、かなり気に入ってるのね(笑)。

劇場版 Gのレコンギスタ ガンダム40周年プロジェクト発表後の声優陣の反応

18年11月21日の機動戦士ガンダム40周年プロジェクト発表会にて、Gのレコンギスタの劇場版制作が公式発表された後の声優陣の反応。

寿美菜子のラフラフ 12/15放送分

寿 (劇場版Gレコは)一回実は収録してたんですよ。Gレコメンバーと会う度にいつ発表するんだろうって。また新たな収録があるんですよ。富野監督に会えるのが楽しみ。

以前声優陣のtweetから劇場版第1部のアフレコがあったのではないか、という記事を作成しましたが、それを裏付ける発言。char-blog.hatenadiary.org

逢坂私立花江学園~Radio 12/21放送分

逢坂 Gレコ劇場版、ようやく発表されました。何かね、やるという話はあったんですよ。おそらく皆さんも知ってると思うんですけど。今回ようやく。これがどういう感じで続くのか。1部で終わるのか。
花江 あらすじとかは?
逢坂 まだだと思う。
花江 じゃあどの時間軸なのか、新規シナリオなのか。
逢坂 間の話なのか、ターンエーみたいに総集編なのかもしれないし。
花江 Gのレコンギスタだよと。
逢坂 そういうことです。楽しみにしていて下さい。

高垣彩陽のあしたも晴レルヤ 12/25放送分

高垣 (劇場版Gレコを)いよいよ皆さんに言えたかという嬉しさですね。実は結構前から劇場版の話ってのは勿論ね、聞いていましたので。いつやるんだろうと思っていたら、やっと2019年だよということが発表されて、本当に嬉しく思いますし。いやー、マニィ好きで下さって本当に嬉しいです。私も大好きで。ふとした瞬間に彼女の言葉を思い出す瞬間があったりするんですよ。言葉がすごく印象的な富野監督ならではの言葉の強さというものがありましたし。言葉だけ見るとちょっとトリッキーに見えるシーンももしかしてマニィあるかもしれないですけど、彼女の中では本当に大事なものがあって。かなり芯が通っていて。そこで激動で色んな方に心が動いたりしているんですけど。私も大好きなキャラクターですので。結構ね、Gのレコンギスタの作品の中でも最初はね、チアリーディングをやっていて。そんな女生徒だったのに後々軍に入るという。結構人生的にもすごく触れ幅のある彼女だったので、是非ね、劇場版に向けてまだ観たことないよという方は観ていただきたいですし、改めて観てみようという方もチェックしていただきたいと思います。ノベルもね~、私的にもね、ハロ的な存在を、しかも富野監督の作品でできたというのは本当にね、私にとって人生で素晴らしい出会いでした。是非是非チェックして下さい。

Japan Expo 2019 富野由悠季監督出演・劇場版Gのレコンギスタ ワールドプレミア上映

劇場版 Gのレコンギスタ 公式発表およびアフターレポート

劇場版 Gのレコンギスタ ワールドプレミア上映

V編tweew


ガンダム40周年PVに劇場版Gレコの新作カットが流れる。
7/5上映(+富野監督質疑応答)
観た方のtweet

  • I「行け! コア・ファイター」
  • TV版1~5話までの内容。OPはTV版と同様、EDはGの閃光とスタッフロールのみ。配給ロゴ、サンライズロゴなしなおガンダム誕生秘話にて、劇場版Gレコ演出吉沢氏のコンテ表紙から、3のサブタイトルが「宇宙からの遺産」であることが判明している。

観た方のブログ記事と私の適当訳


三本目の苦労の話は劇場版制作当初から出ていた。
char-blog.hatenadiary.org

声優陣の反応

twitter.comtwitter.comtwitter.comameblo.jpameblo.jpameblo.jp

制作陣の反応

7/4 富野監督サイン会と特別講演

7/6 ガンダム40周年富野監督特別講演


観た方の講演内容twと私の適当訳

7/7 富野監督サイン会

フランスメディアの富野監督インタビュー

Anime Expo 2019

同スケジュールで開催されていたAnime Expo関係。

全twは貼りませんが、その他の内容はツリーを見てください。

ノンストップ! 18年5月16日放送分 富野由悠季監督コメント

富野 「機動戦士ガンダム」はこの「赤毛のアン」が始まったころに始めてたんですけども。なんで巨大ロボットものでありながら、ああいう話とかああいうキャラクターを作れる様になったのだろうかと。今回、高畑さんの訃報を聞くまで、自分のね、才能で作れていたと思ってたのね。「ハイジ」と「三千里」の影響ってすごく大きかった。「ハイジ」の時に高畑監督から教えられたのは、演出的に飾る必要はないんだ。当時のリアルっていうことで言ったら、テーブルの上に直にパンも置いちゃうし、チーズも置いちゃうしっていう食事のスタイルなんだよ。いや、それだとちょっと抵抗感があるんだけれども、って言いながら「いや、今でもやってるんだよ、スイスの人たちは」って言われちゃうとやっぱりぐうの音も出なくなる。高畑監督というのは……何と言うのかな、リアリズムで描くということが、物語を伝える上で確実に、やっぱり伝えられる方法なんだっていうことをご存知だった。リアリズムを引き継いだって言うと、ものすごく分かり易い様な気がしてるんだけども……簡単に出来ることじゃない……! 簡単に。そういう意味では、俺は1/3ぐらいはやってみせたよ、っていう自負はあります。だからこれは高畑監督にも、それから高畑監督の周囲にいらっしゃるスタッフから嫌われるかもしれないけども、ほんとこの一ヶ月余り「あ、高畑監督って僕の師匠だったんだ」って本当に思う様になりました。

関連
富野由悠季が語る『ガンダム』のリアルを生んだ“高畑勲イズム” 「高畑さんは僕にとっても師匠」
https://www.oricon.co.jp/special/51017/

発表!全ガンダム大投票 富野監督インタビュー文字起こし

https://www.nhk.or.jp/anime/gundam/
公式Twitterによるとどうも再放送はないらしい?のもあって文字起こし。ネット公開分も一応。

富野監督にとってどんな40年間だった?

富野 元々1話完結のつもりだった、つまり「機動戦士ガンダム」で完結のつもりだったものが、結局継続してしまった。じゃあ「機動戦士ガンダム」を抜く方法は、越えられる方法はないのか?という風にして悪戦苦闘した40年間があって。そしてこの40年間の結果っていうのは結局「機動戦士ガンダム」に敗北しましたっていう経歴しかないっていう僕にとっての40年です。
小松 「機動戦士ガンダム」に敗北したっていう……?
富野 はい。だって「機動戦士ガンダム」以上の人気が出る作品が作れなかった。

逆襲のシャアに満足しているお気に入りシーン(アクシズ譲渡契約)

富野 まとめていくためのセリフという考え方をしてていった時に、例えばその会議のシーン。どれだけ言葉数を少なくっていう、その理論と理論武装のセリフをなるべく削っていって。要するにシャアが金塊を渡した。渡したってことでこいつら全部を買収したんだよね、っていうのをこれだけで見せちゃう(アタッシュケースを置くジェスチャー)。ここでこれを下す時のね、「ゴトッ」っていう。お、悪役と金塊。この動きが満足っていう(笑)。その説明ゼリフがない。良くやってるよねって感動するもん。

最近「逆襲のシャア」を見て不満だった点

富野 4Kの「逆襲のシャア」を見てほんと腹が立ったもんね。倍、戦闘シーンが多いって。これじゃ話わかんねぇだろって。要するに巨大ロボットものに聞こえてくるしゃらくさいセリフ。「発進します!」とか「ここでやってやる!」とか、そういうセリフをなるべく外していく努力、死ぬ程したもん。

シャア誕生について

富野 敵役はシャアという名前にする。で、シャアって名前かっこいいだろう。どうしてかっこいいの? シャーッって来るからシャアなんだよ、えぇー。僕が作ったのはそこだけなんです。そしたら安彦のバカが、僕はシャーッと出てくる敵役だから、マスクなんかしてると思ってなかったわけ。あのマスク。マスクをしている下にいる顔を持ったキャラクターが、ものすごく人間的な設定を加えれば、マスクは取れるだろうと。で、肉親が近くにいて、その肉親と出会って、みたいな生々しい話があったときに、マスクが取れる瞬間があるんじゃないかなと思った。これは事実。だから妹がセイラだっていうのはね、実際にコンテを描きはじめてから作った設定のはずなの。はなからあった設定じゃないの。つまり味方側に妹がいて。味方側にシャアという敵方が踏み込んで行かなくちゃいけない。で、敵方が踏み込んで行くような設定にしてくっていうのは、今までのこの手の作品に一切なかったから。これは劇のキャラクターとしては成立するな。つまり、作劇ができるんじゃないのかな、と思った。

富野監督が心を揺さぶられるシーン

富野 シャアが金塊をホワイトベースに残していった後で、セイラさんがひとりで泣いて「兄さん」って言う……ダメ、あの話になると本当に泣けてくる。よく作れたと思う。演出家と言われている人とか、それから小説家とか言われている人。ある時からキャラクターとか人物が動き出しちゃう。私は追っかけるだけだっていう。その感触ですね。それを手に入れられた時はそれはもう。40年経っても泣けちゃうんだもん(泣)。
小松 キャラクターたちが演じてくれた?
富野 そう(ハンカチで涙をぬぐいつつ)。だからそれはロジックじゃないし。だからその部分を「俺が作った」なんて口が曲がっても言えない。だから「ああ兄さん」って言った時に、一人部屋で股に手突っ込んで、セイラがドンとなっちゃうという。あれを全部作れた自分というのは、その部分に関しては威張れますね。だけど作ったんじゃない。作ったんじゃない。セイラさんが勝手にやってるだけ。

「ようやく話せる!」ニュータイプ問題 未公開ver.

富野 SFっぽく見せるのはどうしたら良いんだろうかっていう。要するに単純な戦記ものになってしまう、ということで、うっすらとそれは企画の時から考えていたニュータイプ話みたいなものを一応入れようと思ってたんだけども、いや迂闊に入れるとヤバいよとも思いながら。要するに入れてみたんだけどもニュータイプという言葉を作品中に出した瞬間に、人の革新論に対しての言葉を、言ってしまえば哲学論として持っていない自分に気が付いてしまったために、作劇ができないとこに行った。さぁどうするかっていうことで、このままではあと2クール保つわけねぇよねぇと思ってたところに打ち切りになったので、やれ良かった。全く逆転なんです。打ち切りで命拾いをして。全部喋らなかったおかげで結局余韻が残っちゃって。ニュータイプはなんだ、みたいなことが、それこそ受けてのファンに残ったおかげで。
小松 みんなで伝説になった。
富野 ダーッと行って。だけど今あえて哲学という言葉を使ったのは、実を言うと人の革新論は哲学論に足突っ込むことになって、すごく軽けんに考えることとか規定できることじゃないんだよね、ってのはずーっと言いたかったんだけど、それは僕この30年間今みたいな言い方で一度も言ってません。正直これで逃げ切れるとも思ったし、逃げ切れるということは、結局この問題一切合切まさに考えないで済むと思ってた。思って終わったら、なんか知らないけども「次やらない?」「何を?」「ガンダムを」って落ち込んだもんね。
小松 (笑)もうじゃあ、いわゆる「機動戦士ガンダム」終わって打ち切りになった時点では……。
富野 もうできないし、これ以上やるだけのまさに自分の中に器量、劇作家としての器量がないということもあったし。それからあとアニメとしてなんかちょっとまずいんだよねー。どういう風にまずいかと言うと、演出論的に言うとちょっとリアルっぽくなりすぎて。つまり実写の写りが見えてきて。アニメとしてあんまり良くないな。だからその時に、ほんとはここで宮崎監督の名前出したらいけないんだろうけども、傍に宮崎さんみたいなのが仕事やってるのがチラチラ見えるわけじゃない。アニメとしてはなんだかんだ言ってあっちだよね(笑)。それがバカじゃないからありますよ。あっちにも行けないし、ドラえもんとかオバQとかにはもう行けないし。って時に、どうして暮らしていこうか、ってことでそりゃもう絶望があるわけ、まず。それで「Ζガンダム」っていう言っちゃえばパート2ものみたいなものをやらせていった時に、こういう意味での「巨大ロボットもののトミノ」ってレッテル貼られちゃったんだから、だったらその部分で休み休みするしかないってのがそれ以後の僕のキャリアだったんで。それ威張れるものなんか何もありませんよ。

ガンダムじゃない!」Gのレコンギスタの真意 未公開ver.

富野 ガンダムからちょっと外れて、「Gのレコンギスタ」をやらせてもらったりしたのは、「Gのレコンギスタ」は徹底的にガンダムじゃないんです、僕の中では。自分の中ではガンダムってのは完結しているから、やっていられるのは何故かと考えた時に、「∀」以後のガンダムに関しては特に、ガンダムやっていないんだよ、ガンダムって名前を借りてるけれど。それの一番構造のところを見てほしい、物語の芯のところを見てほしい、ってことがチラッとあるわけ。今回の「Gのレコンギスタ」がなんでこんな面倒くさい話になっているんですか?、ガンダムを知ってる人は全く分かんない、っていう意見も当然聞いています。だってガンダムじゃないんだもん。それをお前ら見抜け。アニメという媒体は実を言うと、ルックスが例えばガンダム的であるけれども、それにこういう物語を貼り付けられるんで、って作業を、特に「Gのレコンギスタ」ははっきりしてますよ。それを見抜ける子が、やっぱり100人見ている子がいたら、2、3人は骨格を見つける奴がいる、っていう確信を持っている。「機動戦士ガンダム」を見てJAXAで職員をやってる人がいる。ロケットを打ち上げている連中もいるし、ってのを本当にこの20年ぐらい具体的に!見てきた。具体的に見てきたところで僕は実を言うと嫌なことがあるわけ。結局こっちだけかよ、ガンダムファンは、っていう。つまり理工科系とかロケット工学とか天文学とか、っていうとこに行っちゃう。でもガンダムってそうじゃない部分があるんだよ、って。ニュータイプって言った以後のところで見えている部分があって。だから「Gのレコンギスタ」でやっているのは、やっぱり歴史が見られる奴に見てほしいための、言ってしまえば……なんだろうなぁ……言葉遣いと言うのかな、現象というものを貼り付けている。それもこの10年で経験しているんです。つまり初めはもう成人していて、それなりの中堅でやっている人たちがそういうジャンルだけだと思ってたのが、もう7、8年くらい前から「あれ?」って思ったのは国会議員にいるわけ(おそらく渡辺喜美議員との対談)。いたりするってのも具体的に見えてきて。「実を言うとウチの省庁もかなりガンダムファン多いんですよね」とかって話も聞こえてくるようになったときに、文科系にもかなり響いてきている部分もあるんだな、っていうことも分かってきたんで。だもんで、だったら「Gのレコンギスタ」ってのをやってみる。これ絶対に100人いたら2、3人と言わず「あれ、これ変なんだよね、なんなんだろう」って考えてくれる人は絶対にいる。それは僕自身が変な小学生だったのかもしれないっていうこともあるし(笑)。

「全肯定するしかない」大河原ガンダム

富野 処女作ってのは忘れられない。それから、処女は乗り越えられない。だから大河原機動戦士ガンダムにとどめを刺します。何が出てきても、何が出てきてもあれを超えるものはありませんね。だからお台場に1/1が出来た時も大河原ガンダムだったし。それはこれ以後、どんなに作り直しても全部あそこに行きますね。っていうのはどういうことっていうのは、処女を今度は別の言い方をします。原型なんですよ。人型は人型で18mぐらいの大きさ。あの形は原型としてあるものでしかないから。あそこに別の奴があるんだけれども(1/1ユニコーンガンダム?)、やはりもう所詮別のアレンジ、まんが的なアレンジでしかない。アニメ的なアレンジでしかない。だからもうこれは10年ぐらい年をとってもやはり大河原ガンダムは好き嫌いを抜きにしてやっぱり全肯定するしかない、っていう風に思ってます。それで一時期本当に嫌いだった時もあったんだけれども「全部箱で構成されてる大河原ガンダムは嫌だ」って思った時もあったんだけれども、奇妙なものであの原型のアレンジで何とか1/1まで作られちゃった時に、やはり「あれを超えられるものがあったらそれを見せてほしい」と思うのは、あれを超えられるものを作れると思うのは、かなりセンスが悪いね、っていう言い方。つまり、この場合何に対するセンスかと言うと、造形とか、それから可動域を持ったものの人の形、っていうものの問題点というものがあんまり分かってない人がファッションでやってる。オーバーデコレーションのファッションが実を言うと良いのかって話はあんまりないですよね。結局またファッションって元のシンプルなものに戻ってくるみたいな繰り返しです。だからやっぱりその原型になっている大河原ガンダム以上のものは、ありよう筈がない、っていう。
小松 それはやっぱり1/1を見た時に確信に変わって。
富野 変わりました。だからそれは好き嫌いを言えるものではないということで、まさにそれが作品としての独立性だし自立したものであろう、っていう風に思う。

「投票してくれた皆さんへ」これからの富野由悠季 未公開ver.

小松 150万一票一票に思い、そしてガンダムに対する愛情が込められた票が届けられて。言わば応援の声でもあるんですけども。
富野 勿論。
小松 そうした皆さんに対して生み出した親、監督としてどういうメッセージ、どういう言葉を伝えられますか。
富野 こういう機会がないと、そういう具体的な応援とか支持があると知らないで暮らしているわけです。「あっ、これだけ応援があったんですね」、それはありがたいことだ。だったら死ぬまでもう少し、ほんとに勉強出来ないんだけども、もうちょっと勉強して、じいちゃんにも頑張らして下さい、っていうことが言える様になった。つまりどういうことかと言うと、勝手に頑張りますって言ってるんじゃなくて、あっ、こういう人たちがいてくれるんだったら、もう少し自分なりに頑張れると思うし。それから空頑張りにならないかもしれないという手ごたえを頂けるという意味ではそれは、それはそれは感謝します。だからこそどうするかっていうことは本当に分からないんだけども、この職業で身に着けたことでしかメッセージは発信できないんですけれども、やはりそれは否定したいし、させていただければありがたいなと思いますので。これ以後も末永くとは言いません、近々いなくなるかもしれないんですから。だけども本当末永く応援していただけたら嬉しいなと思います。

小松アナのコメント

小松 優しい方ですね、富野監督は。15問くらい用意して、事前にこんなの訊きますって言って。紙持ってきた瞬間に「いや、もうこんなのじゃ答える気しないよ」って最初入られて。もうインタビュアーとしてドッキドッキになって。汗だくだくになったんですけども。もう質問2、3問入れたら全部答えてくれてて。いつの間にか用意したのを答えてくれてて。もう富野節が次から次へと。

けものフレンズ スタッフインタビュー、コメント掲載媒体一覧その2

その1
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20170411/
文字数限界のため分割。

けものフレンズ』インタビュー どうぶつビスケッツが振り返るいままでとこれから

http://kai-you.net/article/47168

Editors' Lounge #11 〜「けものフレンズ」と「DOMMUNE」の編集メソッド 福原慶匡(ヤオヨロズ取締役)×福岡俊弘(Editors’ Lounge 発起人)

  • 例の件は今出ている情報が全てでまだ話し合いの最中。途中経過報告は井上専務と合意の上で出したいので見守っていてほしい。三田祭でも爆弾発言はない。
  • 来年3、4月にプロデューサー頑張れ的な卒業制作の本を出版予定。
  • 川上へ工程を戻すのは本来時間、お金、仁義の面でコストがかかるが兼任している本人がやるのであれば問題ない
  • 少人数制は意図した訳ではない。大人数なら休めるし
  • 吉崎先生とのやりとりは一般的な工程が増えるロスよりもプラスが多かった
  • ヤオヨロズの制作スタイルだと途中工程が少ない分、中間データも本人の作業用しかなく、製作委員会へチェックさせる素材がないことも。場合によってはチェック用のデータ作成というムダがある。また製作Pにクリエイティブ素養がなければ見てもムダではないか
  • けものフレンズ制作中、たつき監督はスタジオとAR現場以外に外界との接点がない世捨て人みたいな生活だったので視聴者反応にピンと来てなかった
  • たつき監督が言った様にラッキーパンチはひとつもなくウケたのは狙い通りだが規模が違った
  • たつき監督はニコニコへの10年間毎月投稿という蓄積があるから反応への勘所がある。たつき君がすごいと思うのはコメントを打つための間が映像中にある
  • 映像中への気付きに対する二度見とシークバーとコメントありなしという機能がマッチした
  • けものフレンズ攻殻の様な作品と違ってスマホサイズで見ても毀損される要素が少なく現在のメディアに向いていた。
  • 劇場アニメをいつかはやりたいが、ヒットさせられるかと劇場でかける必要性を出せるかが不安
  • 今は海外向けも面白そう
  • たつき監督は先を見すぎているからスタッフが理解するまでにディレイがある。制作Pには各所への翻訳者としてクリエイティブ能力が必要
  • たつき監督曰く、たつき監督がP寄りのディレクター、福原PがDよりの制作P。
  • 来年は他大学の博士課程に進みたい
  • 今後ビッグヒット作品は言語化しにくいのではないか。定量的価値にしないと一般にはウケない(何万ヒット等)。制作Pもプレゼンしにくい。けものフレンズも一言で説明できない。デジハリ進学はプレゼンにおいてハッタリを利かせるためでもある
  • アメリカではPの教育機関が数多くあるが、日本にはデジハリしかない。日本のPはポンコツが多い
  • アニメの制作費は1本(クール?)2億4、5千万かかる(一般論?)
  • 日本のテレビ局は出資額の少なさに対して権利を持ちすぎている。職権濫用ではないか(海外配信権など)
  • とにかくたつき監督には他の仕事をさせたくない。納期を気にせずとにかく楽しいものを作ってもらいたい。
  • たつき監督は正社員ではなく作品契約を5年継続中。
  • アニメ業界は契約書より業界慣習の方が優先される変なところがある。僕は異業種出身なので気がついた。

アニメカルチャー研究会2017年度三田祭イベント『たつき監督・福原Pトークショー 〜ふれんずと考える、アニメについての"ヤオヨロズ"〜』

基本的にたつき監督の発言。

  • 神イベントだった(ノルマ達成)
  • 例の件の話はなし
  • スライド紹介のたつき監督のけものフレンズ役職に美術デザインが追加されていた(以前からあった?)
  • てさぐれで福原Pに「1クール3キャラ」という話をもらったが実際はだいぶ違った。たつき「地獄アンド地獄」。2クール目の話を局Pからもらったがスケジュールが1年違った
  • コンテンツを作るとは
    Q.楽しいことと辛いこと
    たつき 楽しさと辛さの比率は変わらないが絶対値は変わっていく。農業感がある。楽しいだけの作品はそれはそれで危険な気がする。
  • Q.スタッフ募集について
    たつき (アニメ制作は)やらない方が良いと思う。雑誌募集の数十倍見てもらってありがたい。昔はオペレーター呼称もあったが、サンライズはしっかりアニメーター扱いしてくれた。
  • Q.海外意識について
    たつき 全然ですね。段々狭くなっていってる。自分たちが見たいものに寄っていった結果、大勢に見てもらえるという逆転が起きていますね。
    福原 普遍的なテーマは共通なのでは。おもねったアプローチはしない。海外は予算がデカいので、どの道海外となんとかやっていかないと。
    たつき kawaiiなどが通じる圏は日本に近い国から伝播するという話を聞いたことがありますね。
  • Q.P育成大学について
    福原 日本のPはクリエイティブ面に明るくてもビジネスは弱い(たぶん制作Pのこと)。大学を作るのはすげー金と土地がかかる。博士課程はマジで慶応を考えています。
  • Q.今一番作りたいアニメ
    たつき 作りたいのはたくさんありますね。
    福原 同時にやってるよね。
    たつき 最近気付いて、小ネタが数百、シリーズに進められるのが10いくつ。福原さんや伊佐が面白がってくれるものが次作に転がっていく。数に溺れるのも危ないのも分かっているのでバランス感ですよね。
  • Q.ネットフリックス展開について
    (加入サービスのアンケートしつつ)
    福原 契約による。
    たつき お声がけによりますね。
  • 司会 お二人の銀行口座を教えてくれという質問もありました(会場笑)
    たつき 永く応援してくれればそれで(笑)
  • たつき スタジオとコンビニにしかいないので、去年友達に会った日が思い出せない……。
  • ヤオヨロズCGアニメーション徹底解剖
    たつき CGWorld級の質問が20時間分来てますね……。
    C4Dについて
    たつき 色々触って、起動が早いかで。ツールには拘ってないのでフラッと替えるかも。
    福原 デメリットは他で使ってないから、外から応援を呼べない。どんどん内製になる。
    たつき フローもそうなってますね。
  • Q. 同人と商業の違い
    たつき 商業はお客さんと依頼者の要望かつ面白くが重なっているかをしっかり見ていかないと。同人は作りたいところだけ合っていれば良い。
  • Q. irodori結成について
    たつき 最初に伊佐に、大学の飲食スペースで、このまま就職するのかとか話をして、白水を入れて気付いたら今。福原 3人の結束はすごいよね。俺も入れない聖域。
    たつき 狂気ですよね、そうさせてるんですけど。淡々と仕事をするだけってのはたぶん無理で。この10年やってきたことの蓄積の意味が今になって半分わかってきた。
    福原 同人時代に培ってきたことが役立ったって言ってたよね。
    たつき てさぐれはアニメ業界のフローだと落ちるんですよ。irodoriのやり方をソケットで付ける感じ。
  • Q. リアルとデフォルメの良し悪し
    たつき 状況によりますが、うちのスタジオではデフォルメを目指してます。浮世絵の線と形状のデフォルメが僕は好きですね。ただどっちの良いところも見ておきたいですね。サンライズ時代の作品もセルなんでデフォルメなんですよね。そしてゴールが見えている。各人で基準は違うけど日本人は中にだいたい同じ物差しを持っているはず。本当に上手いキャラデの人はメディアごとの情報量ができますね(線数)。
  • Q.カット割について
    たつき FIX寄りなんですけど、堅気の質問じゃないですよね(会場笑)。3Dはカメラもキャラも動かしやすい(楽ではない)ので演出時増やしてしまいやすいんですよね。CG臭いのがあんまり好きじゃないんでFIXの方が伝えやすい。
    福原 最初に会った時、この線が良いって話したよね。
    たつき 結構良いとこつっかかるなぁと。のべ100人くらい声かけてもらいましたけど安く作れるかとかで。ドヤっと出すのではなくお客さんが知覚できないくらいのを徹夜して出すのが良いなと。
    福原 V編で差し替えるCutがあるんだけど、違いがよくわからない。Pの楽しみではあるんだけど。
    たつき レコードの聴こえない音と同じで。
    福原 今のところV編落としたことないんで。
  • Q.アニメ仕事と趣味の線引き
    たつき ありがたいことに重なることが増えているし、そう生きたい。
    福原 CGじゃない趣味ってあるの? 散歩好きじゃん。
    たつき そうですね。喫茶店とか。
    福原 中野の喫茶店だいたい行ったよね。
    たつき 書けない時、行きましたね。
    福原 行き付けって業界人の来ない寂れた喫茶店だからよく潰れてる。
    たつき 中央線と西武新宿線はヤバいですね。
  • Q.普段の学習、情報収集について
    たつき (フレンズの会の雨季の隆起などは)たまたまですけど。雑食な方です。ザッピング感覚で日常を取り込んでる感じ。近所のファミマの立ち読みとか。見る本はマンガの方が多いですね。
    福原 最近switch買ったんでしょ?
    たつき 購入する権利に並びました。
  • Q.音響について
    たつき 最初の人を決める時点でほぼ決まるんで、(音響監督を信頼して)あまり口を出しませんね。
    福原 けものフレンズも後半になるほど音響から提案が増えたね。
    たつき なんか言うのは鍵括弧でいうと"」"の部分の調整ですね。
    福原 阿吽の呼吸だったよね。
    たつき マイナスな直したいポイントは先に音響監督からリテイク言ってくれたので、ブラッシュアップの部分に集中できましたね。
  • Q.作りたいものについて
    たつき (お客さん、依頼者、自分の)重なりの範囲が広い方だから割と作りたいものができてる方。
    福原 締め切りが無限にあったらどうする?
    たつき 出なさすぎて腐るのも良くないんで。色んな視点がありますね。
    福原 兼任してるしね。
    たつき アニメーターのたつきはぶち切れますね。演出のたつきは、そんなこと言うからあかんねん、と。
    福原 (先日の金、時間、仁義の話)
    たつき 仁義にはめっちゃ気ぃ遣いますね。遣わない様に人員を配置するしかないですね。監督としてはリテイクを言わなくてはいけないんですが言えないので自分で引き取ったり伊佐と白水に明日までと言ったり。
  • Q.修羅場の必須アイテム
    たつき 脳のエネルギー残量には気を付けてますね。打ち合わせに出ても脳に入ってこないので。あとすぐ寝られる様に机の下にふとん敷いておきますね。こういうイベントに来ていただけるのは個人としても嬉しいんですが、業界としても嬉しいですね。ちょっとでも興味を持ってもらえるのは嬉しいです。過剰にですぎるのも良くないですけど。
  • たつき監督、福原Pの素顔に迫る!
    Q.ケニアの思い出
    たつき 犬とずっと遊んでましたね。治安上ジャーマンシェパードを飼っていました。友達は家が滅茶苦茶遠いんで月一で。弟か犬か亀と遊ぶか。カメレオン探しが熱かったですね。
  • Q.ケニアの影響
    たつき 犬まわりのところの影響に最近気付いてきましたね。あと関西のノリの影響も。犬と遊ぶとアフレコするじゃないですか。
  • Q.最近食べたもの
    たつき バナナですね。セロトニンを採って元気になろうと。ほっとくと鬱っぽくなるので肉を食べるようにしようと。食べ物でコンディション変わるのでそこで遊ぶ様にしてます。闘争心煽るカットなので肉食べようとか。
  • Q.冬コミ新刊は?
    たつき いつも通りまったり頑張ります。
    福原 当選したの?
    たつき みたいです。最近はお客さんの方が先に見つけてくれるんで。
  • Q.趣味もCG?
    たつき 寝る前に趣味の作業とか。休日祝日…祝日ってよく分からないんですよね、仕事してから休んでないので。おかげさまで仕事させてもらってます。
    福原 アニメ制作に無関係な趣味ってないよね。
    たつき そういうのを選んでいるので。
  • Q.新海氏について
    たつき 全然レベルが違うと思いますよ。DoGA時代の作品から見ています。新海さんは王道を求められてると思いますけど、僕はゲテモノの方で変わり種で、何か変だぞと言われる方ですね。
  • Q.福原Pの強いメンタルを保つ秘訣
    たつき メンタル強くないですよね。
    福原 俺メンタルそんなに強くないよ。酒飲んで寝るくらい。
  • Q.アメリカ視察で得たもの
    福原 クリエイティブについてはそんなに差がないと感じましたね。自戒を込めて言うと日本はPがダメかな。予算を出せない。1年間の研究費など、1作品に専念できる様なお金が出せない。
  • Q.異性の好み
    たつき 制作中に見たTVアニメの惨殺されたるけど後でなかった事になる子ですかね。あんまり現実を見てないのかもしれないですね。
    福原 橋本環奈。
  • Q.好きなアニメ
    二人とも 答えづらい。
  • Q.今一番食べたいもの
    たつき ハラミ。この前初めて食べて衝撃的でしたね。これまでホルモン好きじゃなかった。
  • Q.来年の目標
    たつき 今の進展で研究がもう一段奥深いところに行ければなと。
    福原 目標と現状の差は?
    たつき 6、7割行ってると思いますけど、10割の目標のベクトルも都度変えていった方が良いと思うんですよね。映像を見て「たつきっぽい」と言われると、気が楽になりますね。
  • Q.毎日やること
    たつき アニメ……ですかね……。
  • Q.老後までに叶えたいこと
    たつき なるべく長くやっていきたいですが、趣味でも長くやっていきたいですね。
  • Q.尊敬する人
    たつき ひとつ特定って考え込んでしまいますね。
    福原 あんまいないなー。
  • たつき 今回こんなたくさんの人がいるとは思わなかったですね。13、4人かと。
    福原 それ学祭として失敗でしょ。

上原あかり」声優インタビュー&ミニグラビア【声優図鑑】

https://ddnavi.com/interview/413481/a/

できうる限りロジカルに。『けものフレンズ』などのデザインワークを手がけてきた株式会社Y'sの考えるデザインとは

https://www.pixivision.net/ja/a/3056

【インタビュー】『けものフレンズサーバル役・尾崎由香×アライグマ役・小野早稀が2ndシングルとアルバムについて語る!「今回も間違いなく“神曲” です!」

https://cho-animedia.jp/music/31854/

舞台上で支え合うふたりは実はチワワ&うさぎ!? 来月再演する舞台「けものフレンズフェネック役・本宮佳奈さん、アライグマ役・小野早稀さんが出会いから今までを振り返る!

https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1512982424

【写真満載】ウラ話満載! 舞台「けものフレンズ小野早稀×本宮佳奈インタビュー“顔以外は汗だくです(笑)”

http://ure.pia.co.jp/articles/-/135943

舞台「けものフレンズ」再演 本宮佳奈小野早稀インタビュー「さらにどったんばったん大騒ぎ!」

https://enterstage.jp/interview/2017/12/008619.html

舞台「けものフレンズ」、サーバルやPPP(ペパプ)らも参加のとってもなかよしなフレンズたちの稽古場をリポート

https://spice.eplus.jp/articles/164055

二次元未来峰会 たつき監督講演翻訳

http://www.acgdoge.net/archives/23250
北京現地のレポートを翻訳していただきました。

質問1:
けものフレンズ』のストーリーの一貫性には驚かれていました。このアニメの制作工程はどういったものでしょうか。また、実在の動物に関する資料はどうやってメインストーリーに落とし込んでいたんでしょうか。

たつき
私達のアニメは、シナリオ作りの面では少し異なったものなんです。通常では一気に完成するシナリオに対し、『けもフレ』のシナリオは書きながら随時に加筆修正する形になっています。実在の動物に関しては、その資料はあらかじめ準備していたため、シナリオを書く時はやはり書き進めながら削除したりしていました。この点においては、ほかのアニメ会社とはちょっと違うかもしれませんね。

(答えを受けて、アニメ会社の副社長は、ほかのアニメの違いとして、『けもフレ』は本編の合間に実在する日本や海外の動物園の飼育員による動物解説を挟まれていたことを挙げたという)

たつき
動物園の飼育員さんに本編の合間に解説してもらうというのは自分のアイデアで、『けもフレ』には視聴者が現実の動物園に足を運んで頂き、実際に動物たちを鑑賞して頂けるきっかけになってほしい、という思いがありました。

質問2:
けもフレ』では、あれほど視聴者の共鳴を引き起こした伏線は、どのように構想したんでしょうか。

たつき
これは先程の質問と少しダブった所があります。創作する過程の中に伏線を構想することですが、共鳴に関しては、アニメ好き・漫画好き・ゲーム好きという受け手の視点から入り、自分だったらどういう要素が好きかと考えて、入れるわけです。『けもフレ』という作品も、やはり自分が作りたい内容を作ったまでのもので、最初はこれほどの人気が出るとまったく予想できませんでした。やはり、自分もアニメや漫画、ゲームが好きで、作り手であると同時に、作品に対する受け手でもあるわけです。

質問3:
てさぐれ!部活もの』から『けものフレンズ』までは、たつき監督は全てCG技術を用いて制作したわけですが、CG技術が好きという原因とはなんでしょうか。また、CG技術に関しては、監督はどういった強みをお持ちでしょうか。また、生産性についての特徴があるんでしょうか。
これからの日本アニメにおいては、CGはやはりそのまま補助的な手段に留まるか、それとも日本アニメ制作において不可欠な技術になると思うのでしょうか。

たつき
アニメを作るという意味では手書きでもCGでも構いません。自分は手書きアニメが大好きですが、自分が作りたい作品は、CGでの制作に向いています。
CG技術というのは、実は使うという意味ではなかなか大変なもので、自分も未だに試行錯誤中で、自分の色と言えるほどのものを持っていません。しかし、どうも自分はCG技術とは相性がいいようですね。
すでに50年以上の歴史を持っている、日本の伝統的な手書きアニメの制作に比べて、日本はCGの画作りの生産性においては、まだまだ改善できる余地が大きく残っています。CG技術自体は伝統的な手書きの助けにもなります。例えば、監督や制作者の参考になれるように、立体なモデリングを作ることなど。
CGは果たして補助的な技術、それとも重要な制作技術に関しては、自分も未だに考えていますが、補助的な技術であると同時に、重要な技術でもあると思っています。ここ数年間の作品にもCG技術で作られた画面がたくさんがあります。アメリカのアニメ作品がCG技術を多用しているように、日本もいつかアメリカのように、どんどんアニメにCG技術を導入ようになると思います。
それでも、日本ではやはり従来的な手書きアニメが依然として多くあり、また日本のアニメーターはとても優れた技術を持っていることを鑑みて、これからはCGアニメと伝統的な手書きアニメは半分半分になるのでしょう。自分も手書きアニメの一つ一つのコマ感が大好きですので、CGアニメの作り手としては複雑ですが、いつか日本のCGアニメが良い意味で手書きアニメに脅かすほどの存在になってほしいですね。

(補足:たつき監督は今日のイベント会場を回った時、中国のアニメにはアメリカ風の3DCG作品と日本風の手書き作品が同時に存在すると気づいたため、たつき監督はここで副社長に、中国では3Dアニメと手書きアニメのどちらかが多いと訊ねた)

副社長:
今までの中国では、CGアニメのほうが多かったんですね。元々国内のテレビ局に流れたアニメは児童向けでオモチャを売れる作品が多かったため、そういった作品は制作コストや周辺の開発コストにおいては比較的に把握しやすい3DCGを好んでいました。ここ数年では、特に中国の配信アニメでは、手書き技術のほうがだいぶ増えていましたが、全体的に、中国アニメはハリウッドやディズニーの影響を大きく受けているため、アメリカ風の作品が多いですね。

たつき
こうした状況のなか(中国のネット配信アニメでは、手書き技術で作られた作品のほうが多い)、『けものフレンズ』というちょっと特別なCG作品は中国でも受け入れられていたことには、自分も意外だと感じていました。なにせ『けもフレ』のCGは、今まで言うCGの大作に比べてやはり違うわけですから。

質問4:
たつき監督は以前、毎月定例的にサークル制作の自主動画をアップするという時期がありましたが、どうやって制作時間は割り振っているんでしょうか。チームの中ではどういう協力体制を取っているんでしょうか。
また、『けものフレンズ』のアニメ制作においては、制作を早めるためにはどういう手法で使ったんでしょうか。

たつき
今まで毎月に一つの短編動画を作る理由は、テレビ局に放送されるアニメと違うようなアニメを作りたいと思い、短時間で作れる短編をインターネットにアップするわけです。動画短編といっても、その制作の工程は普通のアニメとほぼ変わらないですが、短編ではチームに合わせるために、ディテールに関しては時間と縮める、もしくは逆に時間を伸ばしたりします。
けものフレンズ』は制作するのにあたって、作画監督は業界のベテランに、アニメーション制作は各所から集められた制作者にお願いしていたため、制作や意思疎通の効率は前者より良いです。

質問5:
けものフレンズ』はたつき監督のデビュー作ですが、このアニメの制作においては、どのような挑戦や困難に直面したんでしょうか。

たつき
アニメ監督というのはアニメーション制作における管理・統括する立場ですが、一番忘れてはいけないのは「いかにしてアニメをより面白くするか」ということだと思います。アニメの制作には膨大な工程が必要ですので、コミュニケーションが非常に重要なことだと思います。
けものフレンズ』の場合は、アニメーション制作のあらゆる部分において非常にスムーズなコミュニケーションを果たしたと思います。

質問6:
たつき監督は少し前ツィッターでアニメ制作者を募集していましたが、新作についての構想を少し教えていただけますか?

たつき
確かに、自分は新作アニメを作りたいですが……まさかとは思いますが、中国ではツィッターの書き込みが読めますか?(注:監督がその場で「自分のツィッターアカウントに返信することがある方」と訊ねたら、現場には多くの人が手を挙げたようです)
制作者の募集に関しては、実は原画と美術という二種類の制作者が足りないです。実際、ツィッターには中国の方からの連絡もありましたが、このように国境をも越えて連絡してくださった方がいらっしゃったことには、思いもしませんでした。今度の新作は、自分の趣味や好みに傾く内容になるとは思いますが、それに関してはもうしばらく待って頂ければ嬉しいです。

質問7:
たつき監督はこれからはどんなジャンルを開拓したいと思っているのでしょうか。また『けものフレンズ』みたいな荒廃した世界観の作品を作りたいと思いまか。

たつき
自分はやはりアニメを作りたいと思っていますし、アニメ業界でもっと活躍したいし、ずっとアニメを作っていきたいと思っています。
荒廃した世界観は自分も大好きですし、このようなジャンルの作品はこれからも作りたいですが、このような荒廃した世界観を持つ作品が好きなのはおかしいでしょうか?(注:レポでは実際のニュアンスを判明できない)
自分の作品のインスピレーションに対しては、乗り物を乗りながら考えています。また、思い浮かんだアイデアもすぐメモするようにしています。今回も、中国に来る途中では、色々考えました。

副社長:
たつき監督が新しいインスピレーションを掴むことをお祈りします。

たつき
今回北京に来ている途中では、すでにいくつかの閃きがありましたが、これから実際に落とし込む。
今回、中国に訪ねた時、中国の道路がいろいろと面白いと感じていました。運転席は日本とは逆ですし、やけにアグレッシブな運転手さんや、日本と一風変わった観光スポットにも興味深く思いました。
今回北京に来るのは、自分にとって20年ぶりの海外旅行だったんですよ。20年前には一度ネパールに訪ねたことがあり、さらに小さい頃ではアフリカで暮らしていた時期もありましたが、ここ20年間はずっと日本に引き篭もっていました。

質問8:
プロデューサーさんは、たつき監督はアニメ制作の休憩時間でもアニメを作る人だと仰られましたが、このように商業アニメと同人アニメはどういった関係で、監督はいかにして仕事と個人の趣味におけるバランスを取っているのでしょうか。

たつき
それは、下に座っている福原慶匡プロデューサーの、私に対する評価なんですね。商業アニメと同人アニメの関係は、互いに補完し合うものだと思います。同人作品は、商業アニメの宣伝になれますし、商業アニメもまた同人の創作に刺激を与えてくれます。両者は、ちょど人間には二本の足があるような関係なんですね。
最近では自分の創作においては、実はそれほど不満を持っていません。商業アニメは限られた時間内で作らければならないという条件があった上、企画参加者の利益を満たしながら、作品を面白くしなければならないという縛りがありますが、それは元々商業アニメが持つ性質なので、不満を持っているわけではありません。一方、同人アニメは時間の締め切りもなく、自由自在に作れるものですが、実は同人作品の制作も、商業作品を作る前の訓練になりうると思いますので、今日ここにいらっしゃった中国の方にどれくらいのアニメーターさんがいるかは知りませんが、アニメを作る時は、ぜひ自分と相談しつつ、受けいられる許容範囲を越えないでください。

質問9:
たつき監督はアニメの勉強や仕事においては、どんな作品の影響を受けたんですか。特別に好きな作品やアニメクリエイターがあれば教えてください。また、アニメ監督になるには、どんな素質が必要なのでしょうか。

たつき
自分は、この場では数え切れないほど、たくさんの影響を受けています。しかしながら、アニメそのものよりも、漫画やゲームから与えられた影響のほうが多いと思います。自分は、漫画好き、ゲーム好きという気分でアニメを作っている所があって、読んだ後に励まされた漫画などもあります。
ところで、日本にはいわゆる深夜枠のアニメがありますが、中国のアニメ放送には固定な時間帯とかがありますか?

副社長:
中国のテレビに放送されているアニメは一般的にプライム帯に流れるものなんですが、ここ数年では中国のインターネットに放送される日本アニメは、日本と同時に放送される作品もあれば、日本の初放送後すぐインターネットに配信される作品もあります。

たつき
自分も毎日退社して電車に揺れながら家に戻ってテレビを付けるのなら、堅苦しい作品を見たくありませんので、適切な時間を作って、自分に似合う作品を見るようにしています。
アニメ監督が必要な素質に関しては、自分はまだアニメ業界の新人監督として、有名になりたいですし、いつか業界の中では名を知られてもらいたいと思っていますので、監督にはどんな素質が必要かに関しては、私にも答えられません。私の場合はあくまで自分が好きなアニメを作っていますが、逆に苦手な題材でも質の高い優れた作品を作れる方もいますので、どちらが良いかは一概とは言い切れません。

たつき
けものフレンズ』の第1話が放送される時、日本、韓国、中国、台湾ではあまり反響がなかったものの、第3話からはいきなりブレイクしました。日本の作品に対する反応のほうが多少早かったとはいえ、中国や韓国でもやはり第3話から人気が沸騰したという事実を鑑みて、欧米に比べて、中韓などアジアの国々や地区の視聴者の好みはやはり日本に近いと思いました。この前にも中国や韓国の視聴者からの手紙(メール?)が届いていますが、少し前にあまりよくなかったこともあるものの、ファンは手紙で応援してくれていました。
私は、自分が正しいと思っていることを貫き、自分が正しいと思っている作品を作ることが大事だと思っています。自分もアニメ業界の新人監督として、いつか先輩たちに追いつきたいと思っていますし、同人作品に対しても初心を忘れず、これからも作り続けたいと思っています。
今回は貴重な機会に巡り、中国で交流会をやっていただき、本当に感謝しております。中国のファンとの交流はとても楽しくて、日本にあった色々を一瞬忘れる程でした。ありがとうございました。

【インタビュー】舞台「けものフレンズフェネック役・本宮佳奈×アライグマ役・小野早稀が意気込みを語る! 「キャストみんなが役に似てきています!?」

https://cho-animedia.jp/stage/34523/

やっぱりたーのしー!開幕迫る舞台「けものフレンズ」再演、稽古場レポート
https://enterstage.jp/news/2018/01/008728.html

アニカン どうぶつビスケッツxPPPインタビュー

  • 佐々木 アニメって、枠からなかなか出られないじゃないですか。けものフレンズって一般の人の目に止まるところにもガンガン出ていたのがすごいと思います(他番組のBGM使用、コスプレなど)。
  • 小野 大石さんがボソッと「みんな(レコーディングに)慣れてきたんだよな……」と言ってました。寂しそうな感じでw
  • 相羽 チーム感というか、どんどん親戚化している気がします
    根本 ごはんを食べてる時の話題が本当に親戚の集まりみたい

Twitterトレンド大賞 たつき監督コメント

田村 ガリガリじゃないすか、たつき監督。
たつき どうも。
田村 どうですか、けものフレンズTwitterの中でアニメ部門で一番呟かれた作品だって聞いて。
たつき これはでもお客さんのおかげというか。大いに盛り上げていただいたので。
(中略)
田村 ペンギンは出てくるキャラなんでしょうか。
たつき 動画に映す顔でもないので……。

内田彩 公式ブログ 出逢えた奇跡に感謝です*

https://lineblog.me/aya_uchida/archives/13167783.html

けものフレンズアワー大晦日SP 細谷Pコメント

色々あって、楽しいことが楽しくなくなってしまったなと。申し訳ないなと思っております。我々としても当然たつき監督はじめヤオヨロズさんの功績には非常に感謝をしておりますし、とてもたつき監督の2期を見たいなと制作委員会一同勿論思っていました。で、そこは嫌らしい話、ビジネス的にもそっちの方が絶対に上手くいくというのも分かっていたんですが。色々な事情があって、皆さんそこはとてもお聞きになりたいとは思うんですけれど。委員会は合議制でやってますので、誰がどうということでも実はなくって。誰かが何かを言った時に乗るか乗らないか、ということが色々あって。で、それを突き詰めていくと、逆に両方の個人攻撃にどうしてもならざるを得ないですし、そこはちょっと我々としても本意ではないというところであんまり……。今日僕が委員会を代表として出てきているわけではないんですが…。ということになりますので、ちょっと今回は……あの……色々と、ああいう福原さんからの発表もありましたが、我々としては9/27に出した声明が今の我々の見解であるということになります。この先も勿論我々は吉崎先生が作ってくれて、たつきさんが育ててくれた、けものフレンズを、もっと、またみんなが楽しんでくれる様なコンテンツにしていくつもりで動いていきますので、この先も応援をしていただければなと言う風に思っております。これでご納得いただけないのは百も承知ではありますが、すいません今の僕にはこれしか言えないです。皆さん仰りたいことがたくさんあるんでしょうが(以下違う話題なので略)。

けもフレ、君たちは…ヒットのプロに聞く(日経MJ

http://college.nikkei.co.jp/article/110514510.html

舞台けものフレンズ再演2日目ソワレ 山下さん最終公演挨拶

  • 山下 実は舞台が初めてでして、稽古中から勉強になることいっぱいあったんですけど、ステージに立って役者・フレンズの皆さん・スタッフのみんなが一緒になって作っていくものだと実感しました。私は千秋楽ですけど明後日からは圧の強いあいあいが戻ってきて再演ということですので、皆さんも足を運んでください。アドリブシーンほんと頑張ってるんですよ。笑いに来るつもりで。

加藤里保菜のりほにゃんばんわ!! 1月23日放送分ゲスト西川美咲さん

https://www.youtube.com/watch?v=ObSRxcIPwLE

  • 舞台再演は初演よりも演者同士の会話機会が増えた。
  • 加藤さんもタヌキのアドリブを舞台袖で悩んでいた。楽屋でウケたネタが観客にはニュアンスの違いで伝わらなかったりなど
  • PPPのアドリブは自分で自分の首を絞めにいっている。
  • 打ち上げの会話でも声優陣ひとりひとりのけものフレンズ愛が強いのを感じる。どうけものフレンズを続けていくかなど。私たちも舞台だけで終わりはさみしいので、関わることならなんでもやるよ。偉い人聞いてますか〜?

アニメビジネスフォーラム+2018 福原P登壇部分

  • オリジナル作品xパートナーシップ作品…原作権と著作権を含めて保有し活用するスタジオを目指す。また社内でその権利を最大化できるビジネスPを育成する。
  • ぴえろの様に資金がないと原作権確保は難しい。
  • クリエイティブとビジネスの両方できて初めてプロデューサーといえる。
  • ヤオヨロズは「積極的な鎖国」。気の合う仲間はどんどん入れていく。
  • たつき監督のTwitterのムービーはプリプロダクションでもあり、お客さんの反応を見ている。
  • 与信があれば、たつき監督オリジナルを発表できれば。
  • パートナーシップ方式とは、製作委員会とスタジオの関係を逆にしたもので、制作スタジオが全ての権利を保有する。パートナーに出資の有無は問わない。原作権を持っていなければこんな生意気なことはできない。
  • (今後の業界について)クリエイターにめっちゃ金を払いたい。憧れの職業になれば人も増える。Pの仕事は金を持ってくるのが一番。

イコラブ版舞台「けものフレンズ」初日直前でメンバー12人で意気込み!“のけものはいない助け合い”で結束固まり稽古乗り切る

http://www.edgeline-tokyo.com/entertainment/13054

=LOVE版舞台けものフレンズ

  • 背景の火山がアンチセルリウム化している
  • LBがいる(舞台と同じ仕様)
  • 図書館がある
  • アニメ版らしきサーバル、トキ、アルパカ・スリが設定上いるらしい台詞
  • PPPが5人組
  • ジャイアントペンギンがフレンズ化している
  • 公演毎の変化要素はシヴァテリウムのモノマネ。千秋楽はアニメ版らしき訛り、カフェ勤務のアルパカ・スリ。初日はサーバルにもテロップあり
  • アニメ版踏襲演出はテロップ
  • 共通項は「ひとりぼっちの夢を見る(=絶滅動物)」

ダイアウルフ山本さんSHOWROOM

  • 楽曲は全てオリジナル
  • =LOVEドキュメンタリーのスタッフも入っていた
  • 台本ビート時の行動は公演で違う
  • 一番好きなシーンは円陣
  • リョコウバト大谷さんは喋り方がイメージぴったりだった。二人で舞台が不安だった
  • アンサンブルがオーストラリアデビルを稽古で演じていた
  • ニホンカワウソ音嶋さんはメトロノームの様な役割と演出に評されていた
  • アリゾナジャガー齋藤さんは教科書or台本片手に稽古に来ていた
  • =LOVE版舞台DVDは出て欲しい

シヴァテリウム佐々木さんSHOWROOM

  • 演出川尻氏は自分らしく演じて良いと話していたが、ネクソン版ファンもいるのでなるべく似せる様に演じたが難しい。全く別物だとけものフレンズである意味がない。
  • 佐々木さんは元々アニメ版ファン。
  • モノマネはアニメの部分を切り抜いてずっと聞いていた。サーバルは似てない。主人公は難しい。アルパカとトキは特徴があるのでやりやすい。

デジコレ8 福原Pデジハリ大学院修了課題プレゼン

  • デジハリ大学院入学したのは、アニメ業界参入してアニメ業界の商習慣、音楽業界以上に複雑な権利関係に戸惑いがあったから。
  • けものフレンズにはデジハリ大学院で学んだことが反映されている。
  • よくけものフレンズ儲かったんでしょと言われるが権利がないので全然儲かっていない。
  • パートナーシップとは、スタジオで運営できる権利はスタジオが直接、そうでない権利をパートナーシップ企業と共同運営。

時間も短いのでほぼ3月の新刊の紹介。

ヤオヨロズ近況トークイベント

  • ケムリクサTVアニメ化決定告知映像上映。たつき監督が徹夜で作成。デスメタルさやかのいいとも風映像と、C93フライヤーをCG化したもの。ケムリクサTVアニメ化イベントをAnimeJapanで行う予定。
  • イベント応募総数3400通。2000通時点でたつき監督に相談、再演決定。この日になったのはコミティアに合わせたいというたつき監督の意向。
  • 白水「コミティアはまったり、コミケは殺伐とした感じで」
    伊佐「皆さん受けとる時に大事そうにしていただいてありがたい」
    たつき「あまり転売っぽい人がいない(会場笑)コミケは(あっ売るな)と」
    白水「はい、あります」
  • たつきコミティアは良い締め切りになる。空気が良く頑張ろう、と」
  • 年末は何年かぶりにレンタカーで帰省した3人。
    たつき「伊佐の運転は危ない」
    1月1日に帰宅してアニメを作るたつき監督「マウス長いこと握ってないと危なくなる」
  • 福原P「フォロワー数20万超えてますね」
    たつき「あれはもう監視やと。珍獣を見る感じやと。ライブカメラみたいな」
  • アニメーター募集、美術募集の方々とのやりとりがある
  • 伊佐「テンションが上がるのはキャラらしい動きができた時と、たつき監督から企画をいただいた時」
    たつき「伊佐が面白いと言うとお客さんとも感覚が近いので通りが良い。重要な位置ですね」
    白水「美術はキャラの住んでいる空気感をどれだけ出せるかが楽しいところですね」
    伊佐「ゆっこさんキャラも見てるので、たち位置が違う時はアドバイスもらったり」
    たつき「セクションが混ざりあってるので。割り振りが分からんからとりあえず作画監督にしとこう、みたいな」
    福原「画を全てコントロールしているという意味で作監職にしたと」
    たつき「3人とも10個以上役職付いちゃって面倒くさいから」
  • たつき「(傾福さんには)どういう意味が込められてるんでしょう……どうなんでしょう……」
    福原「最期死ぬまでに謎とかメモしておかないと本当に皆に怒られるから」
    たつき「何にも意味ないですから」
    伊佐「文字のこととか」
    たつき「覚えてない」
  • たつき「傾福さんAmazon1位は衝撃だった。商業アニメのつもりでなかったので何故カウントされるのか。その辺の公園で紙芝居屋が売ってた水飴がミシュラン1つ星取った感じ」
  • 福原「(傾福さんの)続きあるんですか?」
    たつき「いや〜……。あっでも最後なんか追加してたな(ラストカット)」
  • たつき「irodori作品は眼鏡、たれまゆ、ケムリクサの3系統あって、自主制作はそのどれかを筋トレにやるニュアンス。傾福さんはたれまゆに寄ってる感じ。商業で本気でやる時に全部全開。アトムを組むみたいな発想。アトムは一度に組めなかったから、アームやセンサーにバラして定期的に組む。けものフレンズもそれに近い。けものフレンズは(反応が)わあっと一気に来すぎた」
  • 福原「たつき君のスタンス、この10年で変わってる?」
    白水「昔からずっとこの感じで。世界で一番アニメのこと考えてる」
    たつき「怒られそう」
    伊佐「たつき君はこのままずっと突っ走ってる感じ」
  • 福原「よくPがブレーキでクリエイターがアクセルと言いますが僕らの場合はそうじゃないですね」
    たつき「そうですね」
  • たつき「(このイベントは)家感で喋ってしまう」
  • 福原「Twitterで呟いていただければ今後の参考に」
    たつき「なぜ(こんなに)応募したのか。僕適当に喋ってるのであんまり信用しないで。明日は違うこと喋ってる」
  • 福原「(へんたつは)傾福さんが一段落したのかなって。休まねぇんだ」
    たつき「あれよく分かんないです。なんなんでしょうね。あそこしかなかった気が」
    伊佐「タイミング出さなきゃみたいなことを」
    たつき「色んな作品そうなんですけど5年10年単位で実はずっと沈殿してたやつとか。これ今のがすともう作らん、みたいな。商業つくる為の引き付けが今ないと商業作れへんな、みたいな感じが。作る方の事情ですが」
    福原「どういう時に企画を思い付くの?」
    たつき「常時というとカッコつけ感があるんですけど。割といつも考える感じがあるんですけど。どこかで閾値を超えると作品感が出て来る。後はしんどいですね。アニメは大変ですね。オペレーションが。眼鏡は初日に最初と最後のオチは決まってたんですけど、(制作が)終わるまでが」
    福原「アニメは物理的な時間長いよね」
    たつき「アニメはトライアンドエラーを増やせない」
  • たつき「このコンパクトというかお客さんとの距離感はウチは本当に良いですね。なんというか……日本語が出て来へん。無駄な徹夜をしまして」
  • たつき「ブースに3監督が揃ってて弱小感半端ない」
    伊佐「自転車操業感が」
  • たつき「僕もセルアニメの感じでキャリアを進めるとアニメーターになったと思うんですけど、そうするとモデル作れなかったり撮影できなかったりになり易いので、中々自主制作一本作ろうとはなりにくい。AF使う美術さんとか」
  • たつき「アニメーターと演出は完全に別の筋力だと思ってるんですけど、キャリア上混ざりやすいところではあるので、自主制作は常に考えておきたい」
  • 伊佐「僕はひとつの世界観を作りたかったので。アニメーションはそれを構成する一部だと分かってきた」
    白水「中心は美術ですけど撮影とか別のセクションもやらせてもらって。今までの所ではできなかったこと」
  • 福原「情熱大陸のラストみたいに、一番大切にしているもの言えます?」
    たつき「それ言えないタイプですね」

ヤオヨロズ近況トークイベント追加公演

  • たつき「コンビニ店員さんとも最近ジェスチャーで。無人コンビニが早く欲しい」
  • 福原「普段打ち合わせするとき喫茶店とか道とか変えたり新しい刺激求めてるよね」
    たつき「あんまり出られる時間がないのでそういう時はなるべく。でも結局早く家に帰りたくなる。3人とも正月にスタジオに帰ってきてる。アニメはできることはいっぱいあるので。ホン書いたり絵描いたり、モデル動かしたり。そこでローテできるので」
    福原「端から見るとアニメ作ってるだけだけど気分転換できてると」
    たつき「そこはオススメですね。本当はある程度続けた方が良いですね。段々暖気してくるので。3日間くらいで区切るといい塩梅ですね」
  • フレンズの会のさばんなちほーの資料の話。何パターンか困難な道を考えろというたつき監督オーダー。
    たつき「ヌーが登れんと死んでるところ」
    福原「幼少期サバンナにいたわけじゃないですよね?」
    たつき「自動車が走ってたり全然近代感溢れるところです。槍持ってたんちゃうかと思われてますが」
  • たつき「最近二人(たつき、伊佐)ともスタジオに住んでる感じなんですけど、だいたいどっちかが起きてるから不夜城に。近隣の人に怖がられそう」
    福原「シェアハウスですね、今流行りのね」
    たつき「夜歩くと同業の人判りますね割と。明らかにおかしい時間に灯り点いてるとアニメ屋がいるぞと」
    伊佐「捕まえろ」
  • 福原「うちのスタジオ自体はそれぞれの人たちが前後のパートを受け持ったりすることで繋がりを良くしているこちがあるけど」
    白水「撮影的なことも少しさせていただいたりとか他の役職もやらせていただいてます」
    たつきモデリングや動かしもやったりしてるんで割とオールラウンダーよりになっていますね」
    福原「美術の人が撮影やるってあります?」
    白水「普通ないですね」
    たつき「ウチはそうすることで成立してる部分もありますね。そうしないと間に合わない」
  • 福原「たつき君に時間と予算を大量に渡したら何が生まれるわけ?」
    たつき「寝床が。今のが一枚隔てて金属があるんですけどビルの外に露出してて。ヒートシンクみたいに。そこを豪華にしたいな」
  • たつき「トレンド大賞の審査員の方ではないですけど話してると、完全にお客さんの圧に圧されて出さざる得なかった感が。お客さんが獲ったと思っております」
    福原「まだ情報解禁前だけどまた良いニュースも。また後日発表できるかと」(おそらくTAAF)
  • 福原「傾福さん、気になるところたくさんありましたよね」
    たつき「雰囲気です、雰囲気」
    福原「傾福さんってタイトル、どういう意味とかあるんですか」
    たつき「なかなか一言では言いにくい。4つくらいあったんですけど言いにくい感じですね」
  • 福原「irodoriが毎月ニコニコ動画に上げてた動画」
    たつき「自分に呪いをかけてたんですけど。忘れてました。去年の2月中旬、なんでこんなに動きやすいんだろうと思っとったら毎月の動画がなかったから。あったらけものフレンズが落ちてたと思うから100本で終わって良かった。100本続くとは思ってなかったんですけど、眼鏡は毎月やらんと完成せんなというのがあって。楽しいんですけど。その時は100本ではなく毎月1日に上げようと。マイリストが100本までだったんです。作っているうちに出てくるものも、半分くらいはそういうものなので、思い付いたものをよりなた次の作品へと生まれてきた感じが傾福さんはしますね」
  • 福原「傾福さんって続きあるんですか?」
    たつき「ありそうな気も……タイミングの気が来たら」
    伊佐「最後の人が気になります」
    たつき「いったい誰なんだろう……」
  • 福原「僕4、5年前にたぶん眼鏡を見たんだよね。でたつき君面白いなと思って連絡とったんだよね」
    たつき「過去動画消しても良かったんですけど、8年前の貼られると結構きついですよね。もちろん大好きな我が子でもあるので。さやかちゃんは愛憎たっぷりあるので」
  • たつき「(へんたつは)おんみょう以来何も考えんで作った。勢いというか流れでちょっとやっとくかという感じで。気付いたらできてた」
    福原「タイトルの意味は?」
    たつき「ぼんやりとあるんですけど、あそこにタッチしないのも面白い気もするので。もし続きが出たら考えてやっていただけると」
  • たつきヤオヨロズはスタジオのブランドで言うと来る意味があんまり良くわからない」
  • 福原「irodoriの名前の由来って?」
    たつき「なんでしたっけ……由来が7種類くらいあったのは覚えてるんですけど。2、3個思い出せるんですけど他をこぼすのは嫌なんで言わないでおきます」

AnimeJapan2018 BSフジpresents アニメギルド2018放送作品発表スペシャルステージ たつき監督、福原Pトーク

  • ケムリクサTV版は読み切りと連載の関係
  • たつき監督は原作と脚本も担当
  • たつき なかなか一言で。廃墟ものというか。詳しくは見てもらえれば。昨日一昨日、1話をなかったことに。前の作品みたいになったので。
  • たつき おかげさまで楽しくやっております。
  • たつき 邪神ちゃんのPVすごいな。
  • 福原 放送局、時期は決まってます。

たつき じわっと感づかれてると思います。ゆっくり待っていただけると、忘れた頃に。

福原 たつき監督が倒れない様にしっかり守護っていきたいと思います。

福原P「アニメプロデューサーになろう!」

  • 目次に反し、けものフレンズについては「皆さんご存じでしょうし多くは語りません(お手数ですが検索しててください)」とあり、ほぼ明記はされていない。
  • 明記はしていないがけものフレンズのことかな?という部分は散見される。 「実際に、原作者がかたくなに著作人格権(同一性保持権)を主張し、脚本まで進んだけれど放送できなくなった作品もあります」など(一般例かも)。
  • 製作委員会からの成功報酬の還元はヤオヨロズ及びたつき監督には来ていない?
  • 原作権と著作権のない制作会社は二次利用者の立場から著作者人格権を主張できる(くらいしか対抗策がない)。
  • 日本の本読みはお国柄として本音が言えているかは疑問で合議して改善できているのかどうか。日本はひとりの天才がワンマンで進めた方がとがったものができるが強いPも必要(ex.宮崎駿)。
  • 製作委員会の幹事会社に調整能力がないとプロジェクトが破綻する。が、権利はあくまで共同保有なのであって幹事であっても独断では決められない(一般論として)
  • けものフレンズがヒットしなければ、次作ではクラウドファンディングをやろうと思っていた。
  • 男性向け2.5次元舞台は歌を多めにしたミュージカルタイプでペンライトOKの傾向。
  • アニメのゲーム化は、アニメPがゲームPと打ち合わせして作品世界観を共有する。
  • 揉め事を引きずる場合は早めに手を引いた方が良い。
  • 製作委員会は出資額で権利の違いはない。
  • 製作委員会各社は著作権の70年間業務を維持する必要がある。当時の担当者はほぼ死んでいる。各社そこまで考えているか?
  • 委任状は金融商品取引法に触れる可能性がある。
  • ヤオヨロズも一般の3DCG会社同様に正社員制を採用しているかの様に書いてある(明記していないが文脈上そう読める)が、募集要項と違うのでは?
  • TOKYO MXは放送印税をとらない。
  • 今後放送予定の作品でゲーム化打ち合わせがある(ケムリクサ?)。

新書全体としては、アニメPに必要な業務を、細かく数字を添えて広くかかれている(流石に本読み、コンテUP時にどこをチェックすべきか、の様な細部は書かれていない)。どちらかと言えば制作Pにおける外部と関わる業務の解説がメインで、トリガー舛本氏の制作進行本と対になる様な内容。

アニメビジエンス Vol.14 クリエイティブスタジオ訪問 ヤオヨロズ 福原Pコメント

ちょっと変則的な構成なので福原Pコメント部分のみで編集。

  • 互いに“合わない”と感じたのであれば、これきり(てさぐれ)で終わっても仕方ない。それが運命のスタートとなりました。彼(たつき監督)と出会ってなかったらセルルックを極めようとは思わなかった。
  • セルルックCGを選んだクリエイティブ面の理由は、意思疎通のためにとにかくセントラルを小さくし、なおかつそのコミュニケーションを濃くするため。通常、アニメの制作工程は次に進めば工程を遡ることはほぼないが、ヤオヨロズでは、仮に仕上げまで進んでも(注:ヤオヨロズの場合はおそらく撮影前後のことだと思われる)、面白くするために必要であればプリプロし直すことができるような体制を維持している。そのため、作品に関わる人数を極力絞っている。
  • 経営面の理由は、後発スタジオだからこその特技で他と差別化し、ちゃんとポジションが作れるものは何だろうと考えた。
  • ヘッドクォーターを少数精鋭で、と意識、体制は常時5人程度。たつき監督と伊佐作監、白水美監の3人がプリプロ全てをやり、作品規模や制作工程ごとにそれぞれのタイミングでモデラーなどが5〜10人増えることになる。
  • ヤオヨロズ自体、たつき監督のスタジオ。作品をプロデュースするより人をプロデュースするする感覚が強い。面白い人をプロデュース、マネージメントしていけば、面白いモノはその人が作っていく。“アーティストとしての、たつき氏を育てている”というと生意気かもしれませんが、彼を拡げることが今は楽しい。近い将来、たつき監督のオリジナル作品が作られる。いずれもヤオヨロズ1社ででそれを実現したいと考えている。
  • ヤオヨロズという社名の意味のひとつに、いずれ海外に関わると思ったので、どこか日本らしさを残している名前がいい。国内で回収する方法は、どんなビジネスのロジックを組み上げても、ヒットしない限り難しい。それを打開できる可能性があるとすれば、それは海外配信。これからは海外対応できるようなオリジナル作品をワンオーナーで管理し、かつクリエイティブとビジネスの両方を理解しているスタジオになっていないと理屈上、生き残るには難しいと考えている。
  • 他の業界から来ているかもしれませんが、(アニメ業界は)変だなと思うことがすごく多い。自らの理想を貫くという意味で、感性の近い人が集まった自分たちだけでやるという「積極的鎖国」を推進している。
  • クリエイティブを手掛ける人にとって最も大事とするのは社風。社風がキープされなければ、大きくする術も、まとまる術もない。ヤオヨロズの社風は「クリエイティブ」「チャレンジ」「コア」「コミュニケーション」「カスタマー」の5つ。
  • 「クリエイティブ」クリエイティブ・ファースト、まず第一に考えるべき最優先事項。
  • 「チャレンジ」高い成功率を目指しながら、どこからに必ず入れていくもの。ただ良いものを普通に作るだけでは許されない時代。
  • 「コア」本質を見失わない姿勢の維持。ものつくりの会社は大きくしすぎず、なるべく目が行き届く範囲でやれることが理想。
  • 「コミュニケーション」チームをまとめるための対話の必要性。
  • 「カスタマー」作り手の都合ではなく受け手のファンがどう考えるかを徹底的に考える。
  • クリエイティブとビジネスの両立、これは絶対のテーマ。

機動戦士ガンダム 廉価版BD予約特典 アニメの未来について 総監督富野由悠季インタビュー

――「機動戦士ガンダム」が1979年に放送されてから今年で38年になります。
富野 この38年間がどういう時間だったのか。それを明確に感じさせる出来事が昨年ありました。「君の名は。」と「この世界の片隅に」の世間への受け入れられ方です。例えば「君の名は。」。個別の評価論として「おもしろい」「おもしろくない」という議論が出るのは自然なことですが、印象的なのは「アニメだから」とか「アニメなのに」といった観点が話題にならずに「映画」をめぐる評価の話になっていることなんです。日本アカデミー賞で、実写映画と同じ土俵で最優秀脚本賞に選ばれたことはその事態をよく表していると思います。一方「この世界の片隅に」は、「君の名は。」とはまったく性質の違う映画です。しかし、こちらも「アニメ」ということにまつわる議論はありませんでした。「戦時中の生活を思い出させてくれて胸が詰まった」というような、こちらもまたすごく一般的な言葉で作品が語られています。こちらもキネマ旬報のベスト10で作品が1位、さらに監督賞にも選ばれています。この状況はどういうことかというと、アニメが完全に“映画のサブジャンル”ではなく、メインになってしまったということです。サブカルチャーからメインカルチャーになってしまったと言っても良いでしょう。そういう風な評価と内容を持ってしまったわけだから、もうそろそろ「アニメ」という枠組みをとっぱらってしまってもいいんじゃない?と思います。それがこの38年で起きた端的な変化でしょう。
――「機動戦士ガンダム」について言うとムックで映画評論家の白井佳夫さんが登場して作品を語ったりする状況はありました。
富野 そういうことも一部にはありましたが、それはあくまで一部でしたね。「止まっている絵であっても映画を作ってみせる」という気持ちで作った「ガンダム」でしたが、「映画」かどうか以前に「アニメ」というレッテルをはずして論じてくれる人はいませんでした。同じ頃の作品で言うなら、例えば『スター・ウォーズ』のような「SF」の扱いも同様だったんです。でも今は「アニメ」とか「SF」がメジャーになって、そういう“言い訳”なしに流通するようになりました。これはアヌシー国際アニメーション映画祭でグランプリ(クリスタル賞)に選ばれた「夜明け告げるルーのうた」のメディアでの報じられ方を見ても感じることです。この変化というものが、評論家や制作者にどれほど認識をされているのか。もし意識しないで原稿を書いたり、作品を作っているのであれば、それは粗忽だとしかいいようがないです。そして、出資者もそこに合わせて認識を変えていくべきなんです。
――小さな変化が積み重なり、昨年、ついに大きな変化として目に見えるようになったという感じでしょうか。
富野 インテリの思惑を超えて、時代が変わるというのはああいうことだと思います。なにしろ世間一般が「アニメ」ということに特段の意識を払わなくなったのですから。
――「ガンダム」がその最初の一歩を刻んだという自覚はありますか? 世間一般が「アニメを作っているのはマンガ家でなく、実写と同じように監督がいる」と認識するきっかけになったのは、「ガンダム」ブームの中で、富野監督が積極的にメディアに出演したという側面はあったと思います。
富野 そうですね。当時はそういう役割を自分が果たしているという自覚もありました。でも「アニメ」の中でも最下層と思われていて、「ロボットアニメ」というだけで、賞の対象にすらしたくないといわれていた時代です。だから、自分の役割意識だけで、どうにかなったとも思っていません。むしろ、自分としては、フリーランスの演出家として、こうでもしなくちゃ暮らしていけないという気持ちもありましたから。ある程度の虚名がないとプロダクションには対抗できませんからね。だから1990年代以降の、スタジオジブリというか、宮崎駿監督のあり方というものについて嫌悪感というものがないんです。あそこには確固とした作品のスタイルがあり、同時にそれが世間一般に広く受け入れられて、「アニメ」というものがメジャー化していく大きなステップとなりました。ただ、昨年起きたことのインパクトは、その確固として存在した「宮崎アニメ」の受け入れられ方もまた過去のものにしてしまったことにあるんです。
――宮崎作品の受容のされ方というのは、まだ「アニメ」の枠にとどまっていたと?
富野 そうです。「宮崎アニメ」という呼ばれ方そのものがそれを表しているでしょう。僕自身は2004年から2006年までの3回、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査に携わりました。文化庁という公の組織の関わる賞ですが、その時も決して「アニメ」が今のようにメインになるという意識をもって審査をしていたわけではありませんでした。当時の全体についての講評を見返しても「アニメが社会的に認知されているという錯誤に基づく製作態度」と厳しい評を書いています。まだあの時代は「アニメ」であるという枠組みが前提にあった時代だと思います。
――つまり富野監督は「アニメ」の一般化への道のりがだいたい三段階になっているように感じられているわけですね。「ガンダム」が登場したころの黎明期、
それから「宮崎アニメ」が国民的ヒットとなった次の時代。そしてその「宮崎アニメ」の時代を終わらせたのが昨年の「君の名は。」や「この世界の片隅に」といった作品の登場である、と。
富野 そういうことです。そして「君の名は。」や「この世界の片隅に」というのは「映画って呼ばれるには、これぐらいのことをしなくちゃダメだよ」という、これからのスタンダードでもあるんです。それらが登場してきて、作品評価として貶める意味ではなく「「宮崎アニメ」というのは「アニメ」だったんだね」という認識論が生まれることになったんです。問題はそういう時代の変化が今起きているんだ、と認識している制作者、評論家、出資者がどれだけいるのかということなんです。……そこが、今日一番お話ししたかったことです。
――今、お話しされた富野流のアニメ史ですが、やはりその中で監督自身の果たした役割は小さくないと思うのですが。
富野 自分のことを客観的に話すのは難しいですが、自分としては勉強が足りなかった、と思うことが多いです。「ONE PIECE」を読んでいて気がつくのは、原作者の尾田栄一郎さんが、連載をしながら勉強をして作品をどんどん膨らませていってるところです。そういう馬力が自分には欠けていたのではないか、自分は勉強が下手だったなという思いが先立つんです。もちろん「ガンダム」で少しでも虚名を得たのなら、その虚名に見合うぐらいの勉強はしなくちゃいけないとは思い、そうはしてきたつもりです。人様に向けてものを作るのならば、それは最低限やらなくてはならないことでしょう。だから70歳過ぎた今でも「歯が立たないなぁ」と思いながら、いろいろ勉強しています。最近も「ゲンロン0 観光客の哲学」を読んで、いろいろ教えられるものがありました。ただ若い人には「年寄りになってからする勉強は大変だぞ」といいたい(笑)。
大学生までに培った教養がその後のベースになるから、若いうちは惜しまず勉強することがやっぱり大事ですね。思い返せば、僕自身、「ガンダム」を作るときのベースになった教養は、中学時代にロケット開発について調べたことがすべてでした。そうやって今の若い人が学んでくれれば、それが『君の名は。』以降の100年を作ることに繋がるはずです。

富山JC講演とセットになる内容。そういう意味では新規の話という訳ではない。東氏に言及したのは初。