ANIME EXPO 2016 メモ

西川貴教氏の劇場版SEED言及

西川 ガンダムSEEDの映画が実はまだでき
てないんですけども、まぁせっかくラクスがいるんで。いつか、ほんとに僕も待ってるんですが、いつか映画ができたら良いなと思って。それに僕も楽曲提供できたら良いなと思っているので。

サンライズパネルでの佐々木氏の発言

A.小説やまんがからのアニメ化はこれからトライしてみたい

A.たいへんなので要望があれば頑張ってみます

A.(アニメ質問と誤訳)今アニメ化企画はないんです。他ゲームのゲスト登場をご愛顧ください

A.BNEに言っておきます

タレコミいただきました、ありがとうございます。

第8回宇宙エレベーター学会にてG-レコ劇場版言及

表題の通り、第8回宇宙エレベーター学会の活動報告にて、「Gのレコンギスタ」の劇場版またはOVA全3部作について言及がありました。コンテから全新作とのこと。
なお富野監督はスタジオワークのため欠席。

ただ、この大野会長の発言、字面通りだと逆シャアの様な新作劇場版に読めますが、これまでの富野監督発言を考慮すると、実際はスペシャルエディション的なものを言いたかったのだと思われます。

富野流仕事術〜自分の個性を信じる〜 メモ

とりあえずG-レコ劇場版言及部分のみ(ほんとは全部該当ではあるけども)。

富野 まずお話する前に、もう一つ皆さん方にご了解いただきたいことは、今日のこういう講演でもNHK文化センターさんがギャラを下さるということなんですけども、今日のギャラに関しましては熊本の震災の方に寄付をさせていただきたいと思いますので。よろしいですよね(会場拍手)?
(中略)
あと今日ビデオカメラが入ってるのも、こういうハレの舞台ってのはここしかありませんので。死ぬ前の遺影として(会場笑)、撮影しておいてもらいたいなと入れさせてもらいました。
(中略)
G-レコの大問題がありまして。ヒットしなかった(会場笑)。子供にウケなかった。つまりリアリズムの延長線上にある問題提起を急ぐあまりにドラマを無視した設定紹介の作品になってしまっていた。ですから本当に理解していたら、現在只今性懲りもなく映画版にかかっている、というところに話が行きます。今度はこれはこれで大問題がありまして。今まで富野さんってそういう仕事をやっているから、そういう実績に胡坐をかいて座っているんじゃないの、って言われたらその通りです。反論しません。少なくとも今回のGのレコンギスタの映画版については、今説明したようなテーマを設定しましたので、もう少し広く観てもらえる作品にしたいなという風に思ってますが、ここでお話した通りの方法の作品の作り方をしています。ですからドラマを作りなおしているという言い方もありますけども、一番分かりやすい言い方というのは今日の為に本当に考えました。どういう表現したら一番分かりやすいか。「G-レコをゆるキャラの様に作る」(会場笑)。ゆるキャラってのは何なのか。表現のシンボルとしての分かりやすさ。同時に血肉があって。だっこしに行っても良い。そういうのはあくまでも理念として背景に置いておいて、作品の面はゆるキャラにする、というのを考えています。ですからキャラクターを作っていく、上手に表現しているところからピックアップして、今再編集やったり新しい作画のカットや何かを作っていると、やっぱりとても面白いものになってるなと感じがしています。その事は基本的に自分が作ったものは間違いなく絶対上手くいくんだ、じゃないんですsそういう風に考えているんじゃなくて、。結局それは自分の我を表現することになる。エゴを表現することになるんで、そういう自己主張はやっちゃいけない。キャラクターの持っているものをちゃんと分かりやすくするゆるキャラ的な分かりやすい作り方をするということになるんじゃないのかな、という風に思ってます。
(中略)
Gのレコンギスタの映画版1本目というのは、とても面白かろう、と勝手に思ってます(笑)。これはエゴでしょう(笑)。だからヒットしなければ2本目作らせてもらえないんですよ。そうなると次の仕事がないからどうするか、っていうことで多少深刻になります。
(中略)
映画版の作業を始めてもう半年くらいになるんですけども、実を言うと改めて勉強したことがあります。
(中略)
シナリオの段階から抜け落ちている大問題を意識してました。何かって言うと、(ホワイトボードに「統治論」と板書)統治論。統治というのは治める。政治とか。統治論のことをかなり意識していたんですけど、TV板をやるまで改めて勉強してこなかったんです。それで今回映画版を1本目は作って良いよと言われたんで、一番初めにこのことを調べました。何でこんなめんどくさいことをするかって言うと、アイーダが番組が終わった後に世界中を統治することができる女王になる、女王にさせたいと思った。そういう資質を出したいと思った。それは映画版を作っている時に付け加えられると思った。

また、今回の講演は事前に用意した原稿を読むスタイルでした。亜阿子さんもいらっしゃいました。
カメラは劇場版のメイキング映像ではないでしょうか。

夜のG-レコ研究会 〜富野由悠季編〜 文字起こし その2

その1
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20160401

質問者1 ソフトにいきます。ターンエーを作られて、その後からG-レコ作られた訳ですけど、富野監督としては初めて時間を遡った作品を作られた訳ですが、その点について何か心境の様なものは。

富野 遡ってっていうのはどういう意味? 先に行ってなの、後ろに遡ってなの?
質問者1 ターンエーよりも昔の物語を作られたということで
小形 時系列的にっていうことですよね。宇宙世紀の時系列はターンエーが一番先にあるって考え方。
富野 (首を横に振りつつ)いやいや。逆です。ターンエーはG-レコよりも50……500年くらい昔の話です。
小形 昔の話なんです?
富野 そうです。
小形 え? 昔の話なんです(動揺、ざわめく会場)? え、ちょっと待ってください(会場笑)。
石井 え、でもそうなるんじゃないですか? だって、じゃなかったらカプルみたいな。
小形 あれでもZZ出てきたから。
石井 あ、そうかそうか。
小形 F91があって、Vガンがありますよね?
富野 (頷く)
小形 富野さんがやってないかもしれないけども、ガンダム的な時系列ではターンエーが一番なんか奥にある様に見えるんですけど。
富野 (首を横に振りつつ)違う。
石井 違うんだ。
富野 違う違う違う。
小形 これブックレットとか全部間違えてますよね(会場笑)。
石井 ここにいる皆さん知れて良かったですね。
小形 これちょっとスタジオパニックになる(会場笑)。
富野 何でそういう風に考えるの?
小形 ターンエーが一番奥に見えるんですよ。
富野 奥に見えるってのは簡単な言い方で、黒歴史みたいな設定があるからでしょ?
小形 そうそうそうです。
富野 そんなのはあのターンエーの時代の黒歴史でしかなくて。
小形 ループしているってことですか?
富野 あんなの関係ない。
小形 関係ないの(会場笑)?
富野 つまりその時代その時代に黒歴史的に見えてるだけの話で。
小形 見た感じだと宇宙世紀が終わってから1000年後の話じゃないですか。だからターンエーってもっと奥の話。
富野 奥?
小形 奥って言うか宇宙世紀がずーっと昔に思える位未来の話。
富野 いや、見える?
小形 見えます見えます。見えてたっていうかそうしてた(笑)。
富野 えーっ。見えてるとしたらそれはおかしい
小形 そういうつもりではなかった?
富野 全然そんなつもりもない。
小形 ターンエーがもっと前にあったってことですか?
富野 500年くらい前。
小形 (Twitterを見る)
石井 ざわざわしてます?
小形 これものすごいタイムラインが(会場笑)。僕の手元のTwitterが。吉田さんが「そんな気がしてたんだよな やったー」って書いてある。
富野 そういう話一切してないもん。
小形 えーっ。
富野 誰かが勝手に作ってることでしょ。
小形 そうです。
富野 だけどそれはそれでバカヤローとか言いません。それで良いんです。
小形 監督的にはそのつもりで作ってた?
富野 そうです。
小形 なるほど。だったらしいです。
富野 もしそうでなかったら、だって、ものすごい簡単な話で、クレッセントシップみたいなものをG-レコで作りませんもん。ターンエーの時にクレッセントシップレベルのものがありました? ターンエーレベルでは出来る訳がない。基礎技術もそうだし、エネルギーもそうなんだけど。ターンエーが一番パッとしなかった理由はその辺のことの強力なバックボーンを作らないで作っちゃったからなんです。そういう意味では過去のガンダムをずっと引っ張っている怨念みたいなものに引きずられて何となく作っちゃったからターンエーになってるんです。僕がターンエーって名前を作った時に、全部一派一絡げにしたものを作りたかったんだけども、何か引っ込んじゃったなぁ、むしろターンエーって時代設定的にも精神構造的にも後退したような気分があった。で、じゃあどうするかってんでG-レコの時にものすごく悪戦苦闘して、2、300年時間を飛ばしただけではどうしようもないってんで1000年飛ばした。1000年飛ばしてみたら、ガンダムの時系列からも離れて、独自の物語が作れるところまでのバックボーンが作れた。作れたっていう話で、さっきのリアルな話を一見しているようだけれども、リアルな問題も考えられるようにアニメに素材を全部放り込んだのは、今までのガンダムがやってこなかったことなの。ターンエーまではガンダムの話しかしてない訳。G-レコで初めてそこを突破できたという意味では、G-レコは遂にリアルなアニメになった。中国陸軍の逆をやってる。さっきの話の続きですよ。
小形 お姉ちゃんたちのアレではなく。
富野 生身の女性を使ってアニメをやらせるというそんな残酷なことは、それはしてはいけないよ、って話をこれ以後できやすい、っていうことも含めて、ターンエーではこの話はできない。G-レコでできる。だけどG-レコでできるんだけど、そんなリアルな話かって、すごくアニメ的で、むしろ年齢的にも下がってるし主人公達も。おもちゃっぽく見えるじゃないか、おもちゃだから力が持てるんですよね、て話を改めてしたいというところまであるんで。僕はG-レコというのはターンエー以上に力を持つと思ってます。チャチな話の様に見えてるけども。
小形 僕はちょっとパニックになりすぎてて、ちょっとなんかアレなんですけども(会場笑)。そうなんですか。ありがとうございます。この後色々と整理をしたいと思いますんで、一旦は皆さん今日聞いたことは胸の内にしまっていただいて(会場笑)、次の何かの機会の時にしれっとそうなってる可能性がありますんで。
富野 それでこれから2、3ヶ月皆さん方で討議していただいた上で、皆さん方なりにガンダム全史、みたいなものを作っていただければ良い訳で。そういう時にはG-レコの位置づけというものを今言ったところに置いていただけたら嬉しく思います。
小形 なるほど。全然収まってないですね(会場笑)。上手くすごい言っていただいてるんですけど、かなり今動揺が広がって。ライツ的にも動揺が広がって。はい、大丈夫です、何とかします。

質問者2 G-レコを見て親について質問したいことがあります。ウィルミット長官と富野監督が重なる部分があるなと思ったんです。激務の中で子育てをされて、しっかり育てられてると思うんですけど。

富野 (崩れ落ちて笑いつつ)そういう風に言っていただけるのはありがたいんですが、それは買いかぶりというものです。そういう意味では、娘2人がおりますけれども、こんなことを娘2人が聞いたら辛がることも分かりますが、僕は子育てを失敗したと思ってます。娘の立場に立てば失敗なんかしてないよお父さん、私達こういう風に暮らしてるじゃないの、っていうことがあるんで、子育てを失敗したという風には思ってないはずです。ただ、子供を持ったときの親っていうのは、ものすごく理想が高かったりする。僕が子育てを失敗したという言い方をしているのは、きっと自分の理想に沿ってくれなかった娘という者がいて。そういう風に育てられることを技術的に持てなかった、それから時間的にも持てなかった、っていう意味で、ほんとに娘に対して申し訳ないと思ってるのがすごくあるんですよね。むしろ謝罪感の方が強い。謝罪感が強いんで失敗したという言い方をしてるんだけれども、娘の立場にしてみたらそんなこと言われたらたまったもんじゃない。もし失敗してたら私もっとグレてるよ、って。とっくの昔に親元離れていなくなってるよ、っていう言い方があるからです。だからこの言い方もしてはいけないという風に考えたときに、どう表現したら良いかほんとに分かりませんが、親は親なり、子は子なりのそれぞれの立場があるんだ、っていう風に言ったときに、親にはそういう発想もあるんだ、考え方もあるんだ、だけど子供の立場で考えたらそういう風に思ってませんよって。今日までこうやって40になるまで暮らさせてもらってるだけでも、ちゃんと親は親なりのことをやってくれたんじゃないのか、っていう娘の立場もあるわけです。だからその立場もそうだろうと是認すれば、そういうものをやはり、そうなんだ、そういう風に言ってくれる娘がいてくれるという意味ではありがたいなと思うから、子育てが失敗したなんて口が曲がっても言っちゃいけない、という風に言葉がまた戻ってくるんですよ。言葉の表現ってのはそういうものだから、ほんとに気をつけなくちゃいけないと思うし、気をつけなくちゃいけないと思うんだけれども、G-レコの時系列に関して言えば(会場笑)。
小形 また戻って(笑)。
富野 いや、それは僕言ってないから。
小形 そうですね。
富野 言ってないから。僕は知りません。

質問者3 G-レコで見たオーシャンリングがとても印象的で、Vガンダムのアンダーフックとか、ターンエーのロランが運河人でしたね。富野さんの作品の海がとても印象的なんですけども、どういう思い入れがあって描いているのかをお聞きしたいと思います。

富野 これは現在宇宙開発をしている関係舎とか、そういうものに資金を投入しようとしている経済人とかに対して、もっと冷静になってくれという言い方をしたい。その為にオーシャンリングってのを思いつきました。まさか自分があんなものを設定できるようになるとは思いもしませんでした。設定することができたのは今言った様に、僕にとっては決定的な敵がリアリズムでいるから、そういう人たちに対し宇宙開発というものを冷静に考えてほしい。宇宙で暮らすということはこの程度のものがなければ人ってのは暮らせないんだよ、とほんとに分かってほしい。だからああいうものを作りましたというのがほんとのところです。そして実際にああいうものを劇中で登場させてみて思ったのは、やはり今言ったような、自分の想いを正しく表現できてると思うからこそ、大切にしたいなと思ったと同時に、海のことですけど、僕神奈川県の小田原で育った人間で、かなり波の荒い海岸線を見て、泳ぎまで覚えた人間で。僕潮っ気がないと実を言うと暮らしていけないっていう感じがあって。すいません、山の方には申し訳ない。山に篭るってことができない人間なんです。今言ったことも、実を言うと山の民を否定している訳じゃなくて、まさにああいう空気感というものを人間の身体ってのは嗅ぎ分けるんですよね。海風が臭うところ、海風が臭ったらちょっと辛いんだよね俺、っていうそういう人間の生体というものはものすごく敏感で、そういうものと本来共生しているものなんだ。こういう都市空間というものが我々にとって便利なのか、便利でないのか、健康に良いのか、健康に悪いのか、ってことを考えたときに、そう簡単にひとつの結論を出す気はありませんけれども、やはりそういうものをしょっちゅう考えなくちゃいけない、っていうことを表現するためには、やっぱりあって良いものだろうという風に思ってますので、今回オーシャンリングが上手くいったことと、やっぱり海というものを本能的にかなり好きなんですよね。隙なんでやはり山の民の方にも多少は潮っ気というのはたまには嗅ぎに来てくださいよ。僕だって、僕だってです。富士山には二度登ってますから。圧倒的なキャリアがありまして。その両方を……あっそうそう。その両方があったからG-レコの最終回はああいう風にしましたってことです。
石井 そっか、登山しましたね。ベルリ君は。
富野 それで富士山に二度登ったのは中学二年の時に一度登ったのは、ものすごく荒れてて山頂まで行けなかったんです。九合目で引き帰ってきて、雨というのは下から降るというのを知りました。翌年もう一度登ってみたら今度は完全にピーカンで、日本海と太平洋がパッと見えた(前後を指差しつつ)っていう。そういう様な体感はこの歳になっても絶対に忘れない。圧倒的な力としてあるというときに、我々は宇宙で暮らせるんだろうかっていうことをほんとに考えてほしい。月に資源を採りに行くという発想を持ってるキチガイ的な発想というのはそろそろ止めるべきで、地球をどれだけ長持ちさせるかってとこに行かなくちゃいけないんだよ、って話にまたスルッといけるんです。するとさっきの中国、韓国、日本、それから東南アジア全域でこの真ん中の海どう利用しようかって話にいくでしょ、ってのはアニメ観てからでないとこの話できない。G-レコを観てからでないとこの話できないんです。っていう話です。

質問者4 初めて初代のファーストのガンダムを観た時に、僕はすごく、平易な言葉になっちゃうんですけど、ロボットアニメだなと思って観て。最終決戦が終わってめでたしめでたしで終わって、アニメを観たなっていう感じだったんですけど、G-レコを観てアニメを観たっていうよりは、現実の問題とリンクするとこがあってリアルに感じた部分があったんですけど、今の現状を積みかさねていった結果はG-レコの様な未来にはならないだろうなっていうことを思って、何でかって言うと今のまま積みかさねていったら、G-レコみたいに宇宙に行って戻ってくるようなことは起きなくて。多分ヴァーチャルな世界に人類は引きこもっていくんじゃないかなと思ったんですけど、どうお思いですか?

富野 仰られている通りで今のこのままで行ったらヴァーチャルに行きます。ヴァーチャルのまんまで行ったときに、まさにヴァーチャルってのはファンタジーですから、リアルな社会の中でファンタジーをやられるんです。底抜けに経済論的に圧倒的に消費を拡大していくだけにしか行かなくて。今までの資本主義論で考えているような経済以上に、おそらく底抜けになっていくんじゃないのかな。だけどその為に地球というのはそういう無尽蔵の人類の消費行動っていうものを容認できるところまで支えてくれる訳がないんです。そういう問題をそろそろリアリズムで考えさせるためにはどうするかってことを考えさせる。考えさせるためには先程言った通りです。今の大人達はまだ19世紀のままなんです。頭の構造が。だったらという風に考えて先程言った様な方法論しかないので、アニメという武器とか、ロボットものという武器を利用して、次の世代に何とかニュータイプになってくれ、っていうそういう物語を作っていくためには、まずこういう一見アニメ・まんがっぽく見えているんだけどもリアリズムを想像させるような物語から入っていって、次の世代、次の世代、さっき言った通りです、30年単位が3代です。つまり100年位の間に地球を共同運営していく為にはどうしなきゃいけないか。っていうことの新しい方法論を人類は生み出していけるんじゃないのか、っていう風に思ってますし、生み出していかなければ人類の歴史はもう1000年は保たない。っていう風に思ってます。その為には経済論を含めての我々の考え方、それから生活の仕方についての考え方もそうだし、自然と共生していかなくちゃいけないというさっきの話ともリンクしたところで我々はどういう暮らしを選ばなきゃいけないかっていうことも、やっぱり新しく発見していかなくちゃいけない時代が来てるんじゃないのかなと思ってます。これは石油がすぐなくなっちゃうみたいな話は30年も40年も前からあるんですけども、結構保ってるじゃないか、って話が今日現在まであります。だからこの気分が永遠に続くと思うのはやっぱりもう止めた方が良いかもしれないし。僕は実は今言われてる温暖化の問題ってのは、必ずしも賛成派してません。賛成はしてませんがだけどやっぱり緊張感を持つためにはそういうものも大事な事で。これ以後風速70mの巨大台風が日本へ上陸するみたいなことを、やはりきちんと予定を立ててインフラ整備をしていくみたいなこともやはりやっていかなくちゃいけない。という風に、話が全部G-レコの話をしていくと、簡単にこっちに行けちゃうんですよ。そういうことを考えてくれる世代を育てていくようにするしかない。少なくとも我々には解決する方法は見つからないし。見つからないと思ってますので、だからやっぱりこれから5、60年みんなで耐え忍ぶための心構えを作っていくような、何なんだろう。やっぱり教育なのかなぁというところから話を始める部分がありますが、この話をした瞬間にまた文部科学省のバカ共、って言いたくなっちゃうんで止めます(笑)。

質問者5 (石井氏に)ベルリの収録で初めて監督に会う時と、最終回までご一緒した監督のイメージで変わったこととかってありますか?

石井 やっぱり皆さんが監督に初めてお会いになった時と多分同じ気持ちだと思うんですけど、やっぱり最初はどうしても富野監督はこういう人だっていうイメージしか知らなかったんで、実際にお会いした時には本当にもう緊張してて。本来100パーセント出さなきゃいけないのにちょっと怖気づいちゃって全然100パーセントも出し切れてないっていうことが多かったんですよ。でも収録が進むごとに富野監督がどんな方ってのは分かってきたので。
富野 とっても優しいお爺ちゃんだもんねぇ〜。
石井 そうですね(会場笑)。本当にもっと厳しい方だと思ってて。勿論厳しいんですけども、そこに愛情があるんですよね。だから、何だろうな、それに応えるっていうと違うかもしれないですけども、少しずつこうだろ、こうだろ、みたいなのを出来たら良いなと思いながら収録してて。最終的には僕、監督のこと大好きです。
富野 ……(笑)。
石井 って言うといつもこういう風に困るんですよ。
小形 ラジオの最終回でも大好きですみたいなこと言ってたね。
石井 そうですね。本当に監督に会えて良かったなって思ってます。
富野 だったら盆暮れの付け届けくらいちゃんとしてくれ(笑)。
小形 そうですよね。それはそうです。

質問者6 G-レコの内容的な面に戻ってしまうんですけど、ターンエーよりも先立ったG-レコの話ということですけども、ターンエーでは月光蝶によって文明がリセットされてしまったって状態だったんですけど、昨日発売された最終巻にも載ってるんですけど、G-ルシファー月光蝶を使ってるシーンがあるじゃないですか。ターンエーで文明を破壊したものをもう一度G-レコに持ってきた意図みたいなものをとても知りたいんですけども。

富野 単純に技術論です。ある有効な技術というのは継承されて繰り返し使われていくだろう、それだけのことです。特にG-レコの場合にかつての技術は保全しなければいけない、保全して良いのではないのか、それから意識的に人間というのはそういうかつての自分が憧れているようなものを再生するということはやるのではないのかな、ってことがあるんで、オーシャンリングにああいう組織を作った訳です。作ってみて実際にそういう技術というものを獲得して再現することができたときに、今度は人間が困ったことがあるのは、一度使ってみたい、ということが起こる。今回ルシファー程度の使い方しかしてないのは、要するに初めて実戦みたいなとこで使ってみて、あぁこんなもんなんだ、って思ってるとこで話が終わっちゃったからあれだけのことで。これ以後どういう風に展開するのかというのは、その時の人々がどういう心持なのかによって決定されてくる訳だし。今回G-レコで人間ってのは性懲りもなくまた同じことをやるんだよね、っていう様なことがある訳だから、物語を作ろうと思えばいくらでも作れるという言い方はあります。が、先程から話している通り、G-レコでは今回先程までお話した様な精神構造で作っている部分があるので、かつてのターンエーの時代の様なところに戻る程、何て言うのかな、キレる人達が出てくるとは思いたくないな、という風には思ってはいます。ただ、これも一応権利を売り渡しているトミノですから、どんなバカがどういう使い方をするか、それは私は知りません。それに関しては関知しません。が、自分についての思い入れはG-レコの部分で。

質問者7 女性に寄った質問を。リンゴとラライヤと三角関係がケルベスはあったんですけど、その辺の話とか、あと昨日も再放送観てて思ったんですけど、ミラジさんがギゼラさんにちょっとこうポッとしてたりとか。

富野 (笑)。その辺の話は勘弁してください。というのはもうちょっとやりたかったんだけど、後ろがなくなっちゃったんで全部尻切れトンボになってますんで、後は当事者達の関係性というのに期待しましょう。予定はしてました(笑)。

質問者8 G-レコを観ていてとても魅力的だなと思った部分がキャラクターが非常に自然に踊っているシーンが所々見られて。あと、アイキャッチとかもそうだったんですけど、踊るシーンが素敵だったんですけど、富野監督にとってダンスってのはどの様な想いがあってキャラクターに踊ってもらったのか、ちょっと聞かせてもらいたいなと思いました。

富野 今みたいに言われるとほんとにびっくりするんですが、もっとシナリオの段階では躍らせる予定がありましたけれども、実際の制作プロセスのことを考えると躍らせている暇がなくなっちゃったので、殆ど踊りをカットしてます。カットしたからこそアイキャッチャーで使って、何とかそういうイメージを見せたかったんですよっていうサインにしています。何故踊りのことをそういう風に想定していたかと言いますと、人類が一度全滅しそうになるくらいまであって、歴史をまた積み重ねてきた人々というのはきっと人間の身体のあり方ってのをとても大事にする人々だろうと思ってる。身体でものを表現するって踊りですよね。というものをすごく日常の中に取り入れていたんじゃないのかな。つまりご挨拶ひとつにしても身体を動かしてみせる。っていうことで、ちょっとしたステップを踏む、みたいなことで、ありがとう。ちょっとしたステップを踏むことで、手前ぇ殺すぞ、っていうそういう様なものを日常の中に取り入れてたんじゃないのかな、という風に思った。その事が身体性、つまり身体というものは、僕アニメの作品で今一番嫌なのは動かないアニメがとても嫌なんです。つまり動物でないからです。動くものでなくって、喋るだけのアニメというのはとても疑問を感じています。だからです、アニメの中で本当に身体性、つまり身体を動かすということの持っている意味というものをもっと大事に考えてほしい。さっきハグの話をしました。ハグするということは、これアクションでしょ? きちんと立ってるだけではハグなんかできないのに、何で立って喋りっぱなし、座って喋りっぱなしのガンダムの作品が何で多いんだろうか! っていう様なところにも実を言うと繋がってくるんです(小形Pを見つつ)。
小形 (笑)。すいません、すいません(会場笑)。
富野 だからアニメであっても人間の身体性ってのは大事にしていきたい、っていう事はほんとにアピールしたかったんですけども、だから今仰られた様なことはとてもびっくりすることで。ほんとは劇中でもっと常時いっぱい皆に躍らせたかったんですよね、ってのがあって。つまり、手前ぇ〜って言ってる時にもステップ踏んでるっていうG-レコの時代の人々がいたんじゃないのかな、っていう。本当はそれをやりたかったんですけども、それを本気でやると何が起こるかって言うと毎日毎日コンテを描く度に振付師ここに置いておいて、お前この振付考えろ、ってやらなくちゃいけない。これを今度はアニメーターに渡した時に、手前ぇこれ1カットで150枚かかるんだけど書け、って。明日の朝までに作画するんですか、ってそんなことできる訳がない。というので諦めましたというのがほんとのところです。

ガンプラ

小形 良い質問だったんでここで質問タイムは終わらせていただいて行きたいと思います。
富野 すいません。
小形 この辺りで1回ガンプラのやつをチラッと見ましょうか。こないだガンプラ選手権やって、石井君もなんか作ってもらって。
石井 何か(笑)。そうなんですけどね。ほんとはもっと色々やってみたかったんですけどね。
参考:http://bandai-hobby.net/g-reco/special.html
小形 これ監督選んだやつ。監督の意見聞かないと。
富野 だってこれが監督賞で、他に監督賞考えられなかった。これ他を見れば分かります。これが一番ユニークだったからです。
小形 次、安田さん賞見てみましょうかね。かっこいいG-セルフ
富野 だってかっこいいだけでしょ(会場笑)?
小形 めっちゃちゃんと作ってますよ。じゃあ形部さんの方行きましょう。これ監督。
富野 え、かっこいいだけでしょ(会場笑)。
小形 そう言うなと思ってたんですよね。
富野 面白くないもん。
小形 山根さんの作品行きましょうかね。
富野 ね、かっこいいだけでしょ。
小形 これでも結構鮮やかだと思うんですけど。
石井 トリッキーパック作ったんですね。
小形 じゃああとスタジオ賞。これ僕が選んだ奴ですね。
富野 これちょっと変でしょ。
小形 そうですね。僕は変なの担当だったんですけど。これとかグリモアハンバーガーになったちゃったって奴。面白かったんで選ばせてもらったのと、これは結構綺麗な。綺麗ですよね。
石井 綺麗ですね。
小形 バンダイさんが選んだ賞ってのが、こんなの選んだんだ。ルシファーが自然の。これどうですか監督的に。
石井 お花みたい。
富野 これは僕は2番手か3番手に予定してました。
小形 これ結構自然の中で映えますね。次。これはかっこいいだけになりますね。
富野 かっこいいだけ。
小形 じゃあ最後のバンダイ賞は。これは。
石井 すごい。
小形 すごそうですよね。
富野 だからこれはバンダイ的に言うと色んなもの買わせるっていう魂胆ね(会場笑)。
小形 原価がかかってるからこれは良いと。なるほど。それでバンダイ賞ということで。じゃあこれを見た後で石井君の作品を見てましょうか。
富野 かっこいいだけでしょ。
石井 素晴らしいですよ。
富野 これ?
小形 これクリアーバージョンを作った。
富野 組んだだけでしょ(会場笑)。
小形 言っちゃった。
石井 墨入れちょっとしてるんですよ。ちょっとだけ出来る部分。
小形 写真はバンダイさんが撮ったんですよね。
石井 そうなんですよ。ただG-セルフは作りたいなと思ってたんですけど、折角ならクリアーパーツのもの作ろうかなと思って。
小形 作った。
石井 作ったんです。元々はほんとはもっと。
小形 やりたかったんだけど時間がなかった。
石井 そうなんですよ。
小形 結構ギリギリで頼んじゃったんで。売れっ子ですから。お忙しい身ですから。
石井 いやいやいや。
富野 ふと思い出しました。石井君の年齢の時に自分も組むだけだったよね(笑)。
小形 じゃあ大丈夫。他の方にも作ってもらってるんで監督にちょっと。アイーダの嶋村さん。嶋村さんが作ってくれた、何故かアルケインじゃなくてグリモア
富野 いや、ほんとにそうなの?
小形 そうですよ。
富野 へぇ〜。
小形 良いですか?
富野 ちょっと良いとは言い難いんだけれども(会場笑)。
小形 良いって言いましょうよ。
富野 こういう風に作れるっていうのはすごい。
小形 嶋村さんに作っていただいて。
富野 へぇ〜。良いじゃない。
小形 可愛いですよね。嶋村さん、良いじゃんいただきましたよー。次じゃあかぬかさん。アダムスミスのかぬかさん。
石井 これジャハナムと。
富野 やっぱり映画的なセンスがあるのね。年齢が見える。つまり映像を作るという。視点を持ってて。
小形 声優さんより演出に向いてたかもしれないですね。かぬかさん見てますか。映像的なセンスが監督から中々。
富野 だって今までガンプラコンテスト全般見てて、こういう写真ってあった?
小形 いや、なかったですね。二体使うのも中々。
富野 映像でものを考えるとか演出をするってセンスをお持ちだって。
小形 かぬかさん、今度絵コンテ描いてみませんか。
石井 伝えときまーす。
小形 じゃあ次ギゼラ役の佐竹さん。上手いんですよ。
富野 だから、えぇ?
小形 監督より上手いんじゃないですか?
富野 上手い上手い上手い。
石井 監督より。
小形 監督より上手いですよね。
富野 この塗り分けなんか。
小形 センスありますよね。
富野 すごいと思う。あの顔で!?
小形 いやいやいや、そうですよ。あんな女性なのに。
富野 だから。
小形 そうなんですよ。こういうのが。
富野 すごいね。
小形 次が、杉浦さん行きましょうか。
石井 チッカラ。
小形 チッカラの杉浦さんもこれ作りました。ジャスティマ。すごい頑張ってます。
富野 へぇ〜。
石井 これ何で塗ってるんでしょうね。
小形 すごい質感が。どうやってるのか全く分からない。
富野 僕もう分からなくなってきた。女の人が何でこんなことやるの?
小形 いやー、分からないです。良いことなんじゃないですか。
富野 これ偏見なんだよね。
小形 今女性もガンプラ作る時代ですから。最後がハセガワダイスケさん。「Gの閃光」歌ってる。
石井 え(会場笑)?
富野 線香だ(笑)。
小形 これタイトルがGの線香なんですけど、線香が光の方じゃなくて線香花火の線香ってタイトルになってますね。
富野 だから皆すごいねぇ。
小形 皆頑張っていただいて。
富野 その上で、こういう風に見せられて分かるんだけども、やっぱり僕が一番偉いのね。とても変じゃないですか。
小形 監督賞を最後に見てみましょうか。
富野 ね。
小形 これはすごいですね。
富野 これはこれですごいのよ。
小形 すごいセンスを感じますけどね。オタサー姫とかそういうタイトルだったような。
石井 そうなんですか?
小形 アルケインが真ん中。
石井 ほんとだアルケインだ。
小形 G-セルフに囲まれて。マックナイフのパーツと。
石井 脚マックナイフだ。
小形 はい、こんな感じで皆さんも色々G-レコのプラモデル買っていただいて遊んでいただければと思います。
石井 パーフェクトバックパックも出るんですよね。
小形 出た感じです。
石井 買わなきゃ。
小形 石井君買って、是非Twitterとか上げてください。一応昨日最終巻が発売されて安田さんのBOXが付いてますんで。
石井 初めて見ました、僕今。
小形 バンダイビジュアルさんががっちり安田さんに張り付いて、何とか上げさせたBOXのイラストです。
石井 これバックパックが全部載ってるんですね。
小形 もっと初めの予定では、安田さんにこんなこと言うと怒られるかもしれないですけど、もっとバーッと揃う様な感じだったんですけど、ちょっと時間がもうヤバいってことで、ロングの方に色んなバックパックがいるんですけど、ちゃんと入ってます。監督どうです? ご覧になって。
富野 僕も実を言うと初めて見て、えー、うん。ほんとのことは言えません(笑)。
石井 気になるなー。
小形 だそうです、安田さん、すいません。
富野 いや、ほんとにご苦労様でした。って言うのは手間を掛けてるから。
小形 そうです、非常に。
富野 ただ、ほんとのことを言うと、手間を掛け過ぎてちょっと問題がある、っていう感じはあります。つまりちょっと重っ苦しい感じになっちゃったな。安田的な軽みがないかもしれない、っていうのが手間を掛け過ぎたという感じがあります。
小形 ということです、安田さん。一応キャラも描いてもらったんですよ。ベルリとアイーダ。では時間になりましたんで名残惜しいんですけど時間になってしまいました。一言ずつメッセージをいただいて皆さんに対して。終わろうかと思うんですけど。まず石井さん。
石井 僕からで。まず本日お越しくださった皆さんほんとにありがとうございます。急遽来ちゃったので。
小形 ほんとにありがとうございました。助かりました。
石井 昨日最終巻発売されて、実は僕自身も何回も最終回観てて。今でも覚えているのがベルリ君の最後の台詞なんですけど、僕はこれで世界一周するぞ、って台詞をどうしても最終回の収録の時に言えなくてというか言いたくなかったんですよね。でもその後に色々考えて、ベルリ君を送り出さなきゃいけないなと思ってやったらそれでOKが出たので。再びG-レコを観ていくと本当に色んなキャラクターがいて、色んな描写があって、生活感が溢れてて。何だろうな、富野監督が仰る通り、アニメなんだけど現実味があるっていう作品なので、今ずーっとBlu-ray観ている方ももう一度1話から、ね、是非観直してまた新たな発見をしていただけるともっと楽しめるんじゃないかなと思うので、今後ともG-レコを宜しくお願いいたします。本日はありがとうございました(会場拍手)。
小形 では監督。
富野 今日こんなに話す予定がなかったので、ちょっと自分でもびっくりしてるし、本当にごめんなさい、皆さんの時間をとってしまって。ただ、さっきまで喋った様なことも喋る気になったのは、実を言うと皆さん方のお顔を拝見したからです。G-レコスタートの時点でのイベント上映会の時から、実を言うと2、3ヶ月はガックリしてた時があるのは、旧ガンダムファンの年齢を引っ張りすぎてて、世代が変わらないんじゃないのかという恐怖感に、本当に囚われてたんです。今日ここに来るのも実を言うとかなり嫌だったのは、そういう僕が知ってる人だけが来るんじゃないだろうか、っていう落ち込みがあったのは、さっき言った様な話をする気にさせてしまったんです。殆どの方が初めての方で間違いなく年齢・世代が下がってて。先程のお話でも分かる様にほんとに皆さん方がお父さんお母さんになったときに、今度はお子達に見てもらえる様な作品にしておきたかった、っていう部分がありますし、そういう継承する作業が皆さん方がいるお陰でできるかもしれないと思わせてくれたことがほんとに嬉しい。そういう意味では本当、小形からも言われてるんですが、歳のことはあんまり言うなと言うんですが、やっぱりこの歳になると継承してくれるかもしれない方の顔を見ることができるということがどんなに嬉しいことかというのは、分かってくれとは言いません。歳をとらないと分かりません。本当にそういう意味でとても嬉しくさせてしまってる部分がありますので、多少リアリズムでヤバい話もしちゃいましたけれども、某国会議員の様に誤植だったとか、誤謬だったとか、そういう様に言った覚えがなかったとか、そういうストラクチャーを使ってなかったとか、言い方しません。そういう覚悟も持てる様になったのもやっぱりこういう皆さん方の顔を見させていただいたからです。本当にそういう意味では今日いらしていただいてありがとうございます、ありがとございます、本当にありがとうございます(会場拍手)。
小形 監督ありがとうございました。一応このG-レコ研究会、BDが出ている間は何とかやっていこうということなんで、一旦これで区切りにはなるんですけど、監督もまた金融編とかやりたいとかそういう感じになるし。
石井 金融編?
小形 今日本当は吉田さん色々言われるところだったのがなかったりするので。また我々は来月9月12日にイベントありますんで、毎月G-レコのイベントがありますので、不定期開催になるんですけど、ここでまたお集まりいただければと思ってますんで。またその時に色々良い話もできればと思っておりますので。まぁ全然、まだ何にも言えないんですけど。監督も色々頑張っておりますので。
富野 そうなんだよね。G-レコにひとつ大問題があるのは、AKB的にならなかったってのは大問題でね(会場笑)。
小形 そうですね。100万枚ですね。
富野 100万枚とかないとお祭りできないからそっちが問題なんだよねぇ。
小形 ま、30年かけて100万枚売ってく様に頑張りましょう(会場笑)。
石井 ゆっくり頑張りましょう。
小形 監督も30年経って100歳のなんか貰えますよ色々。
富野 やだやだやだやだ(会場笑)。それは嫌だ。
小形 以上な感じで本日は本当にありがとうございました。
富野 ありがとうございました。
石井 ありがとうございました(会場拍手)。

ぼくのかんがえたガンダム全史

ファースト〜宇宙世紀諸々

アナザー諸々

二度目の宇宙世紀

RoG

ターンエー
↓500年後
G-レコ

SDガンダム

夜のG-レコ研究会 〜富野由悠季編〜 文字起こし その1

ガンダムチャンネルでの配信が終了するのと、写経で理解度を早めるという事で。
長いのとはてダの限界だったので分割。
その2
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20160402

本編

小形 本日もお越しいただいてありがとうございます。サンライズの小形です。今日、ようやくここに監督をお連れした感じなんですけど。ガンダムカフェは何回目ですか、監督は。
富野 おそらく3回目。さっきから実を言うと、今しがた来たんでトイレに行きたくてしょうがないんですけど。ちょっと間合いをもって行かせてもらいます。と言うのも、ここにいらっしゃる方はご存知でしょうけど、ここに来てない人、トイレも見ものなんですよね(笑)。
小形 はい、監督はちょっとトイレ行くと思うんですけど、その前にもう一人。急遽今回駆けつけていただいた、スペシャルゲストを厨房に待たせてるんでお呼びしたいと思いますんで。ではスペシャルゲストのベルリ・ゼナム役の石井マークさん(会場驚嘆)、お願いします。石井君、ごめんね。急遽でね。
富野 冷静に考えたら、スペシャルでも何でもなくて。
石井 はい。
小形 (笑)
富野 G-レコで僕が来ていれば、スペシャルじゃないもんね(石井氏を指しつつ)。
石井 (笑)
小形 そう、ないんです。
富野 きてちゃいけない人なんだ。そういう意味ではごめんなさい。僕も実を言うとマジな話で。吉田君の話、聴きたかったんですよ。つまり僕自身は絵描きじゃないし、デザイナーでもないんで。「なんでああいうキャラクターになったの?」みたいな実はいくつか訊きたい事があって。それが訊けないんで、ちょっと、むくれています。
石井 (笑)
小形 今配信見てると思うんで。後で文句を。
富野 ちゃんと見てろよー(カメラ目線)!
石井 言っちゃうんですね(笑)。
小形 今必死にイラストに色を塗っているみたいなんで。本当に申し訳ありません、という事で。でも今日は石井君が来てくれたんで。
石井 はい、皆さん宜しくお願いいたします。
小形 監督、トイレは大丈夫ですか?
富野 今まだ良いみたい。
小形 じゃあまず座っていただいて。
富野 自慢じゃないですけど、この年になると、頻尿ですから(笑)。
石井 (笑)
小形 じゃあいつもの恒例な感じなんですけど、ドリンクを頼みたいなと思うんですけど、頼んじゃって大丈夫ですか、ドリンクとか。はい、じゃあメニューとか見ていただくんで。
石井 実は僕、初めて来たんですよ。
小形 ガンダムカフェ、はじめて?
石井 初めてなんですよ。
小形 それは今日、ゲストだから、皆さんはお金出さなきゃいけないけど何たのんでもタダだから。
石井 マジですか〜(笑)。
小形 どんどん頼んじゃって下さい。
石井 じゃあ……。
富野 これ頼め! これ頼め! これ頼め! これ頼め!
石井 じゃあすいません、チュチュミィひとつ。
小形 これ一応、夜のG-レコの、この日のための特別メニューで作っていただいた、チュチュミィですね。
石井 これ特別なんですか?
小形 そうです。特別メニューです。
富野 それで、チュチュミィをちゃんと食べられると思うなよ。
石井 (笑)チュチュミィは食べられない?
富野 逃げるかもしれない。
石井 ああ、そうですね。
小形 監督は何飲まれます?
石井 どうなさいます?
富野 僕はもう大人ですから。こういうふざけた話には乗らないで。ちゃんとしたコーヒーがいただければ良いなぁって。
小形 はい分かりました。監督にはコーヒーと、じゃあ僕はマスク大尉の方をちょっと。選んでますけど。じゃあ後、ごはんものを頼んでみましょう。
石井 ごはんものですか。ごはんもいっぱいありますね。
小形 監督何か、せっかくだから。色々。
富野 僕は食べ物の名前にこういう名前をつけるのが、ほんとに、つけられると食べられなくなるんですが、唯一。
石井 唯一?
富野 一目惚れで。
石井 一目惚れで?
富野 僕の好きな、フラウ。
石井 という事で、僕の好きなフラウ。サンドイッチですね。
小形 危なかったです、裏で見てて「どれも頼めない」って言って。石井君は何を?
石井 えー、どうしよう。そうですね、こういうごはんもの頼んじゃうと、ずっと食べてるかもしれないんで。
小形 ずっと食べてても良いよ。
石井 良いんですか?
小形 ええ、全然。
石井 じゃあ、折角なので、連邦の白い奴ver2。
小形 監督の「そんなん頼むのか」って(表情)。
富野 こういうとこでホントの事は言えない。こういうネーミングにして、素敵なお料理にして下さって、食欲をそそるんで、ワクワクします。殆ど嘘です(舌を出しつつ)。
小形 自分でつけたというか、自分で考えたネーミングなんですから、本当は。
富野 あのさ、その話、僕はメカのネーミングと人のネーミングをつけるのはとっても好きなの。全く料理音痴なんで。食べ物に名前をつけるという事自体がよく分かんないっていう、そういう感覚なんですよ。
小形 そうですね、確かに。
富野 だから本当にマジな話、対象が違うとできる事ができなくなるっていう事がありますんで。そういう事はちょっとだけ覚えておいてください。だからこれが得意だからこっちも上手だろう、ってのは嘘です。
小形 そうですよね。あれだけネーミングをね、キャラクターとかモビルスーツとかつけてらっしゃるんで、皆名前つけてくださいとかそういうの来るんじゃないですか?
富野 そういう事で、実際に経験はあります。あって大体、全否定されます。自分の子供に、今度名前つけてくださいって。大体無視されますね。
小形 そうなんですね。お孫さんの名前とか、一応候補には?
富野 全然。娘が父親の言う事聞くか?
小形 (笑)いや、聞くところもあるかもしれないですね。
富野 あともうひとつ言えるのは、こうやってネーミングをいっぱいつけて、姓名判断という言葉があります。かなり僕はそういう部分に拘ってる部分があって。名前の力強さというのが、日本語の感覚であっても、他の国の言葉であっても、名前の感覚、それから歴史的な背景というのがあります。パッと思いついたので、イギリスで言えばエリザベスとかっていう名前の歴史的な背景があります。そういう力で、人と人ってのはかなり左右される部分があるんだろうと思うんで、キャラクターの名前を作るのはそういうのもものすごく意識します。つまりこの音(おん)はこのキャラクターに良いんだろうか、悪いんだろうか。つまり音の強さってのはひどく気にしてます。で、三つか四つそういう風に努力して名前をつけた後で、次の名前をつけた後には、努力を止めます。あんまりにも疲れるから。すごくおざなりに、カツだレツだキッカだ、みたいな名前を作っちゃうって事を(会場笑)。
小形 それはおざなりだったんですか?
富野 おざなりなの。
小形 なるほど。
富野 おざなりで作った名前が、何か知らないけども、三十数年経ってもこうやって話をしても、もう全然世代の違う方に笑ってもらえるという意味で、名前の力ってこわいなって。ホントにこわいなって。だから、やっぱり冗談事でやっちゃいけないんですが、今言った通りです。本気で名前つけようと思うと、本気で疲れるし、アムロの名前つけるのに一ヵ月半かかりました。ホントに疲れ果てるんで、他がおざなりの名前になるんですが、またおざなりの名前で、かなりこちらが思ってる以上にヒットしちゃった名前があって、未だに困ってます。
小形 何ですかそれは?
富野 敵ってのはさ、シャーッって出てくるんだろ、だからシャアだよね、って言ったら、こうでしょ。っていう意味では、ホントに困ってます。
小形 シャーッと出てきましたよね。あれでシャアになった。
富野 そうそう。それがこういう風に生き残っちゃうと、困ったなというのと、名前が
支配するもの、名前が独自に持ってくるもの、それは実を言うと、名づけ親の意思には絶対従わないんです。名前そのものに引きづられてそのキャラクターが出来上がってくってのはあります。それはファーストガンダム以後、何十人かのキャラクターが名前に支配されてこういう運命を辿った。必ずしもこちらの予定通りの運命を辿ってません。そういう意味では名前の意味ってのはすごかったなと思うし、皆さん方それぞれ、お父さんとお母さんからきちんとつけてもらったと思うんで、名前は大事にして、名前に恥じない様にこれからも生きていこうね。
小形 おざなりにつけられちゃった名前の人はどうするんですかねそれ。
富野 ……これはとても良い運命を手に入れたと思ってください。
小形 逆に?
富野 ぬるま湯のまんまで、人が成長しますか?
小形 しないですね。
富野 だからおざなりの名前をつけられたら、わかったよ! って。父ちゃんと母ちゃんがそういう根性だったら俺は! って。あんたらを見返してやろうっていう風にして、名前を立ち上げていけば良いんです。それも名前が輝いていく事だと思ってます。つまり、今のシャアが良い例で、つけた時は簡単なつけ方をしちゃったんだけども、実を言うと、自分の思ってる以上のシャアはシャアなんだよね、っていう事で、シャアが出来上がってくっていうプロセスを踏む事ができた、っていう意味で、おざなりであってもその音(おん)が持っている事とか意味性みたいなもので、ものすごくマッチしてくると、そのキャラクターが名前によって立ち上がってくる、ってのがあります。だからファーストガンダムアムロに関して言えば、ああいう名前にしちゃった為に、アムロってのはシャアに勝てなかったんだよね。つまりどういう事かと言うと、アムロって、我々よく知ってます、女性の名前についちゃってますよね日本で言えば。そういう優しさみたいなものがあって、アムロってのはシャアには結局対決し得る男にはならなかったんだろうな、みたいなところは。ものすごく頑張りました。頑張りましたけれども、やっぱり名前には勝てなかったっていう。これG-レコの話じゃないんだけども。
石井 (笑)そうですね。
小形 大丈夫です大丈夫。ベルリ・ゼナムはどうなんですか?
石井 そうです気になります。
富野 これ劇中で一回か二回言わせてます。「ベル」なんです。ベルを鳴らす子にしたかった。立ち上がる子にしたかった。そういう象徴として、始めはベリルって名前をつけてたんだけども、それを「ベルにしなくちゃいけないよ」っていう意見があったりして、最終的に劇を作り始めて、こういう声が来てからじゃないんです(石井氏を指しつつ)。ベルに合う声を探してマーク君が来たんです。というのはどういう事かと言うと、今みたいな考え方でキャスティングをするって事もあまりないんじゃないです、名前優先で考えたんです、って時に、既存の声優さんの声だと新しいベルにならない、っていう事で、マーク君にお願いする様な事になりました。そういう事情もあります。なった時に実を言うと、この声がキャラクターを作り物語を作っている僕の立場で好きかと言われると……ちょっと(首を傾げつつ)。
石井 ええー。
小形 (笑)
石井 監督ー。
富野 必ずしも好きじゃない。
小形 必ずしも好きじゃなかったみたい。
富野 だってあんまりかっこ良くないもんね。
石井 そんな(笑)。
富野 すごく俗っぽいところがあって。だけどもさっき言った通り、今まで知ってる様なキャラクターに作りたくない時に、必ずしも自分の好みではめていくとこうなるぞ、みたいな事があるんでそれを外した。外していったから今日こういう風に仕事以来久しぶりに会うんだけども。この声を聞いているとこれもあのベルの声なんだよねっていう風な植え付けも自分の中にあるから。どういう事かと言うと、僕の声じゃないんです。ベルリなんです(石井氏を指しつつ)。コイツなんです。他人なんです。この他人がどういう風になるかっていう事を考えて実際にこういう風に作品を作らせてもらったので、今あらためてまたちょっと、この仕事の事をもうちょっと良い形にしたいと思ってやってる作業でも、やっぱりベルリを作る、というところに行ってて。「俺の予定通りの主人公になってくれなくちゃ困る」という作り方が完璧にできなくなる。そういう意味でもやっぱり第三者のキャラクターになってるって事があります。だから男の子でも僕は好きだよ、って言い方があります(石井氏を見つつ)。
小形 (笑)
石井 そうですね(笑)。

小形 うまくまとまったとこで、(注文が)きましたんで。チュチュミィをちょっと見てください。
石井 チュチュミィだ!
小形 チュチュミィの金魚部分はこないだも聞きましたけど何でできてるんでしたっけ?
石井 これはグミですか? バジルシード?
小形 タピオカです。じゃあ監督はジャブローコーヒーを。マスクも見てあげてください。
石井 マスクがある。
小形 マスクは何でしたっけ。これもこないだ聞きましたよね。あ、マスクはリンゴでできてます。こんな感じで。
石井 マスクはリンゴでできてるんですか。リンゴなのに青い。なぜ。
富野 (飲む)
小形 下、かき混ぜて飲まないと。濃いところ。飲んじゃいましたね今。
富野 甘すぎる。
小形 だってシロップのとこしか飲んでないですよ今。あらら、悪いとこしか飲まないですね今。監督ジャブローコーヒーお気に入りですね。マイク、マイク。持っていただいて。
富野 ここのコーヒーは、この界隈で一番素敵なんじゃないんですかね。
小形 ありがとうございます。
石井 ありがとうございます。
小形 皆さん秋葉原にお立ち寄りの際はジャブローコーヒーを宜しくお願いいたします。
石井 コーヒーを是非。
小形 本当においしいんですよジャブローコーヒー。
石井 おいしかったです。
小形 僕もコーヒーは毎日飲む方なんですけども。ジャブローコーヒーはここ来ると、ないのかなぁみたいな感じでいつもおねだりする様な。
富野 参考までに、ジャブローってのはつまり南米の名前、伊達につけてませんって。本当に南米の豆ですので。
小形 なるほど。ちゃんと南米の豆で。今回もジャブロー出てきましたよね。一応G-レコで。
石井 出てきましたね。
富野 いや、よく覚えてるね。
小形 石井君的にも半年経ってないのかな? アフレコ終わってから。五ヶ月? 半年くらいですかね。
石井 もうそろそろ半年経ちますね。
小形 もうそろそろ、ベルリの事忘れてきてるんじゃない?
石井 全然忘れてないですよ。
小形 そうなの? ほかの仕事で忙しくなってるとか。
石井 いえいえいえいえいえ。そんな事は。
小形 ちゃんと、いまだにベルリの声は出せる感じなの?
石井 もちろんです。
小形 最近ちょっと、ぷよぷよしてきたって噂がなんか。
富野 (マスクアピール)
小形 ちょっと待ってください。ちょっとストローを上げて飲んでください。あ、上から飲むんだ。
石井 ちなみにぷよぷよはちょっとしてきてます。どうですか?
富野 酒?
小形 これノンアルコールです。アルコールが良かったですか? 全然呑んでいただいてもかまわないんですが。 コーヒー限らず。マイク(会場笑)。
富野 週の五日はウィスキーの寝酒をやってる人間ですので。
小形 飲むと寝ちゃう感じ?
富野 いや、結局仕事やってるんで夜。
小形 そうですね。
富野 だから寝るつもりで飲み始めるんですよ。ところが、あんまり飲んでもいけないだろうなと思いながらそれなりの量を飲んで。それでも手元の仕事がとか、パソコンの仕事が終わんないんで。結局醒めてから寝る、という事をやってる。
石井 (笑)
小形 意味がないじゃないですか完全に。
富野 だから寝酒じゃないんです。殆どしょっちゅう、医者から止められるくらい飲んでる。こういうのヤだなーって(マスクを指しつつ)。
小形 甘いお酒はでもそんなに飲まないですよね、たぶん。
富野 量が飲まないけれどもとりあえず今言った通り、ホントに困った事に一年の三百日飲んでますね。
小形 習慣になっちゃってる。
富野 なってます。
小形 よく演出さんとかでも、飲んで仕事をする人って昔はよくいたんですけど。飲んだ時って、だいたいやった後に「なんでこんな事したのかな」ってだいたい後悔すると聞いた事が。
富野 僕の様なキャリアを持つとそれはやっぱり素人ですね。基本的に能率上げるために飲みながらコンテはやります。それは殆ど間違いない。
小形 間違いない?
富野 間違いない。それで余程狂ってる……ここにはご婦人はいないから。
小形 いやいや、いらっしゃいますよ。ご婦人いらしゃいますよ。ご婦人はじゃあ耳を塞いで。
富野 塞いで、塞いで。時々コンテやってる時に、妄想が湧いた時に、瞬間芸で三十分くらい狂う時はあります(笑)。
小形 狂うってどういう事ですか。
石井 (笑)
小形 僕ら(制作)的には怒られるって事ですか?
富野 違う違う。
小形 そういう事じゃなくて。
富野 自分の、つまりプライベートなファンタジーの世界に入るって……素敵な言い方(笑)。
石井 自分の世界観に入るっていう。
富野 ファンタジー
小形 今素敵そうに言ってますけど、ちょっと外側から見ると危ない感じにはならないですよね? 大丈夫なんですかそれは。
富野 だから大丈夫じゃない。
小形 ですよね。家でやってるとだいたいそうなっちゃう?
富野 スタジオでやってても時々ムラムラってなる時があるんで(会場笑)。これはマズい。
小形 確かに今日も女性の制作にね、いきなりちょっと後ろからウフフって感じで。
石井 えーっ。
富野 そして「愛の交感(交換?)」をやったりする訳よ。スタジオで。
石井 何をしたんですか(笑)。
小形 スキンシップというか、なんというか、触れ合い的な感じですか。そういうのをやってらっしゃいましたけど。
富野 やってほしい(石井氏に向かって)?
石井 来てください!
富野 やだ!
小形 来てくださいとかそういう恥じらいがない感じがたぶん石井君はダメなんだよ。
石井 あぁ、そうですか。
小形 そういうところちょっと。
石井 もうどんと来いなんでね。やっぱりいろいろと。
富野 それはファンタジーじゃないでしょ(笑)。
小形 そのファンタジーってのは、妄想極まっちゃったりとかって感じなんですか? すごい踊るとか、そういう感じ?
富野 ……(笑)(会場笑)。あの、ファンタジーの世界ですから。あとは勝手に想像して(会場向きつつ)。
石井 皆さんの中で。
小形 30分間ファンタジーになるってのは、僕も初めて聞いたんで。ちょっと興味津々でしたね。
石井 気になりますね。
富野 ただ、こういう仕事やって、つまり絵空事の仕事をやっていると、自分がどれだけの切り口を持てるのか、ということは、僕の作品の場合はかなりリアルっぽく見えていたり、真面目っぽく見えてはいるんだけども、基本は全部嘘八百の話なの。
小形 はい。
富野 だから、実を言うと、嘘八百のまんまでやってると、もっとガチガチのものができる。その部分をぶらしていって、何て言うのかな、なるべく大勢の人に見てもらうような柔らかいフィーリングってのを手に入れるためにはどうしようかってときに……あぁ、どう言ったらいいのかな。言ってしまえばAKBのねーちゃんのスカートと膝の間をじーっと見るみたいなことは、そりゃしますよ、って話です。
石井 (笑)
富野 うまい!
小形 今日残念ながら、いつも裏手には隣のAKBパブの子が働いてたりするんですけど、今日いなかったんで。危なく警察沙汰になるところでした。よかったです。
石井 (笑)
富野 いたら今頃もう、この辺パトカーが2、30台(会場笑)。
小形 そこの警察署行ってるところでしたね。
石井 危うく僕一人になるところでしたね。
富野 そうそう(笑)。
小形 じゃあ、食べ物の方が来ましたんで是非、見ていただいて。フラウと言いながら結構すごい量ですね。
富野 量はすごいですね。これ一人で食べきれるの?
小形 いや、無理しないで。
富野 皆さん方はその歳ですから想像がつかないでしょうけども、自慢じゃないけどこの歳になると、これ半分食べられない。
小形 いやいや、これを食べること自体が結構すごいと思いますよ。
石井 じゃあ僕が食べます。
富野 はい。
小形 石井君まだ若いし。
石井 そうですね。
小形 衣装が入るくらいにしてくれると。
石井 ぶよぶよにならない程度に。
富野 はい、それ。
小形 ちょっと監督の目が厳しくなりましたけど。どうですか、連邦の白い奴。
富野 ねぇ。
小形 じゃあちょっと一口だけ食べていただいて。折角なんで。
石井 いただきまーす。
小形 監督は結構ジャンキーなとこから選んでいきますね。監督どうぞ。どうです?
石井 おいしい。普通?です。
小形 ちょっと監督微妙な感じになってますが。
石井 もっと詳しく言いましょうか? 口に入れた瞬間に、すごい味がフワーって膨らんできて。もうこれ、止まらないですね。
小形 この辺で止めといた方が。石井君の将来のためにね。食レポが回ってこない可能性があるから。
石井 そうですね、もうちょっと勉強してから。
小形 (最終巻が倒れて)最終巻が。
石井 俺のせいかな?
小形 いやいや、監督がちょっと寄りかかって。
石井 監督、サンドイッチはどうでした?
小形 マイクをすいません。色々食べさせたり、色々やらせてすいません。
富野 ほんとのこと言っちゃいけないから、とても難しくて(会場笑)。
小形 ここは文化人としての監督の姿を見せていただいて。
富野 節度をもって。ガンダムカフェなんていうちゃらけた名前の店だから、ロクなもの出さないんじゃないかと思ってましたけど、いやいやそんなことはなくて。お若い方には大丈夫でしょうと言うと、実を言うとこれほんとの話なの。50過ぎるとね、油が強いとやっぱりちょっとダメなんですよ。
石井 (爆笑)
小形 そりゃそうですよ。そりゃしょうがないですよ。
富野 だからこれほんと厳しい話なんだけど、これ年寄りの話だとい思って聞き流してください。衣がちょっと油が、ンー、ちょっと新しいのに変えてくれ、って感じはありますが(会場笑)。おそらく皆さん方は絶対それ感じないと思う。
小形 若い人はそれぐらい歯応えがないと食べたくないと。
富野 ほんとそうなの。その辺が悔しいなと思うところで。それもさっきのキャラクター作りと関係してきます。あまり自分の好みは出さない努力をしなくちゃいけないな、ということはこういうところでもやっぱり教えられることです。上手にまとめたね(笑)。
小形 (笑)そうですね。今回やっぱりG-レコやってく(上で)デザインとかそういうところで自分の好み以外も、吉田さんとかが書いてくるキャラクターに関しても、全て監督が好きな訳ではないってことですかね、そうなると。
富野 (頷いて)もちろん全部が全部好きな訳ではありませんし、全否定したいキャラクターもある。だけれども吉田キャラクターに関しては全体的に75点から80点くらいの点をあげられるくらいに自分の思っている以上のものを付け加えてくれたので、本当にホッともしているし嬉しい。で、それの一番大きな感覚ってのは何かと言うと、全体的にキャラクターとキャラクターの描き方の線、が柔らかい。それから丸みを帯びているという直線的でない感じが、今どきのアニメにはあまりないんじゃないのかなという意味では、年寄りの性癖として好きなんです。ただ、それを上手に活かしきれなかったという演出の力がちょっと足らなかったいう反省がある、というのは一番あります。それで気に入らないキャラクターが何人かいるというのは、これは当然しょうがないことで。やっぱり年をとって分かる年寄りの描き方、みたいな部分が、吉田君の場合ちょっと過激に年寄りにし過ぎてて。ちょっと見づらかったなという感じがある、っていうことは感じます。ただその辺はアニメの絵、って考えたときに、どうしてもああいう吉田的なデフォルメの仕方というのをしてしまう部分がある。という意味では認めることもできるし。デフォルメの仕方が他の漫画家とかアニメのデザイナーとは違うデフォルメの仕方をしているんで。あの、極度に嫌いではないですね。ものすごい分かりやすい言い方をします。女性の漫画家の描く年寄りよりはキャラクターが良い(笑)、そういう言い方があります。
小形 女性の漫画家が描く年寄りのキャラクターってのはやっぱりちょっと型張って定型的に見える、そういう話ですか?
富野 ものすごく定型的だしものすごく分かりやすく言うと、宝塚の役者さんなんですよね。女性がそのままお髭を生やしたり、ここ(頬をほうれい線を指して)にシワをつけたら年寄りに見えるだろ、って。見えねぇよ。
小形 なるほど。
富野 吉田君にはそれがない、ってことです。
小形 そうですね、それはそうです。吉田さん、75〜80点って、中々富野さんに言われないんで、ほんと来れば良かったのに、って思うんですけど。
石井 そうですね〜。
小形 その中でもこれはデザインとして上手くいった、ってのは監督の中ではいらっしゃるんですか?
富野 キャラクター単体ではそれなりにあるんだけれども、一番、鷲掴みで言うと、キャラクターじゃないんです。
小形 何ですか?
富野 宇宙服のデザイン。あの宇宙服のデザインが、実はこれ吉田君だけの仕事じゃないんです。
小形 コヤマさんとか?
富野 コヤマ、安田の手も加わった上で最終的に吉田君がクリンナップしてるんです。そうでなければ実を言うとあの形はできませんでした。そして、あの形を作るためには僕の方の意見もものすごく強力に入っていて、こうしてくれなくちゃ困る、ということを吉田・コヤマが検討して、だったらこういう風にできるよという方向性が見えて、その上で吉田君がああいう形にしてます。今月のHJの方だったかな? 電撃? ごめんなさい、アイーダのフィギュア? のまだ色つきでないやつ。
小形 原型。
富野 見て分かる通りで、ああいう風にしたかったという部分はやってくれた。あのパッションはとても好きです。その好きな理由というのが実を言うと、今パッションの話だけをしてるんですが(身を乗り出しつつ)、パッションだけの話じゃないんです。僕が好きだって言うのは、あの宇宙服のデザインで実を言うと人間の身体の構造を示すようなことが宇宙服のデザインで示すことができた。ということでとっても気に入ってます。ものすごく分かりやすい言い方をします。概ねの今までのハリウッド映画含めてですけど、宇宙服ってどうちゃって脱いだり着たりするか分からないでしょ?、って。今回は脱いだり着たりができるようになっている。それをG-レコの場合、ある段階からアニメーターがそれを気が付いて、それを面白がってくれて動かしてくれたという意味で、いわゆる衣装になったんですよ。だけどこの話だけをすると一見衣装の話だけの話なんですが、だけどあの構造を手に入れた人間の身体ってのはこうで。要するにトイレに行った時にどうする?っていうことと、それからモビルスーツのシートにトイレを付けました。それとの関係性、を示すために宇宙服のデザインまで絶対的にトイレのことまで考えなくちゃいけない、ということを考えたときに、あのデザインになった。あのデザインになって、結果として今の話を全部忘れても、何かこの宇宙服って変だよねって。何が変だって、何か身体が匂うんだよね、って。っていう風になっているっていう、ここを見抜いて欲しかったし、それができたっていうのがとても嬉しいことだ。で、僕自身ガンダム系の仕事をここ30何年もやってて、あの宇宙服を今回のG-レコをやるまで思いつかなかったかったんですよ。気にはなっていたんだけども、どうデザインして良いか分からなかった。っていうのが、今回本当実現できたという意味で、とっても嬉しく思ってます。だけどそれはひとつには吉田君の画力だけではない部分はもう一度だけ言っておきます。僕自身が宇宙服をGOサインを出した一番の理由は、アメリカのヒューストンで、NASA人工衛星が周ってます、そのコントロールやってます、あの場所に7年くらい前に行った時に、そこで実際の宇宙服触らせてもらって、分かったことがあって。結局ファスナーで脱ぎ着してて。あのファスナーの閉じで宇宙活動ができるような宇宙服なんですよ、っていう裏付けも手にあった、確信があったので、ああいう風にしました、っていう。そういうようなものがあるんで、宇宙服に関しては絵空事ではなくて、ああいうデザインになっているっていう。それで尚且つ今言ったような理屈は見えないようなデザインになっているという意味ではまさに吉田君が最終的にフィニッシュしてくれたという意味では、とても好きな洋服です。そこからG-レコという物語はかなり影響されている部分があるな、と思ってるし、アイーダにしても他のお姉さん方が着ている宇宙服の姿はとても好きで、全部前をはだけているというのはすごく実を言うとエッチなことなんですよ(笑)。
小形・石井 (笑)
富野 ファンタジーとか妄想ってのはこっから始まるの。だからそういうコンテを切ってると、時々ムラムラムラ(笑)。
小形 30分間ちょっとファンタジーな方向に。まぁ根源的な部分ですよね。人がやっぱりどこに興味を持つのかとか。やっぱそういうところから始まってるということですよね。いくらファンタジーとは言っても、やっぱり僕らが分かる感覚というか。延長線上になっている。
富野 ですから今回宇宙服のデザインができるまでに、何となく思ってた、この手の宇宙もののSF映画とか、アニメは何か嫌だよねと思ってたのは、人間の身体を想像させないで、活劇とか恋愛をやってるってのが、何か嫌、何か不自然で、アニメとか映画とかこれで良いんだよねと思ってたのが、そこは今回突破したいと思ってやってみたら、実を言うと意外とエッチなのようふふふふ、ってなって。まさにこの部分が人間を考える上で、とても大事な要素なんじゃないのかな。、ということも改めて実感できているので、それこそ、この歳でああいうことができたのはとても嬉しい。だからなんです。ここにいる皆さん方以外の方にももう少しG-レコの楽しいところを見てくれたら良いなという風に思ってるんで、もうしばらく頑張らさせていただきたいというのが僕の立場です。あっ全部話してた。
小形 石井君は今回G-レコ出てもらって、半年経って他の仕事とかもやってるとおもうんだけど。
石井 そうですね。
小形 全然違うものなの?
石井 全然違いますね。何だろうな、やっぱり富野監督が作ってらっしゃるキャラクターたちの台詞が、他のアニメと全然違くて。ふと台本とか見直してやってみたりすると、全然言えなかったりするんですよね。でもそれが一般的な……なんて言うんですかね、アニメになって、よくあるような台詞を言うことに慣れていると、ふとしたときに監督が作ってらっしゃる台詞を言えなくなるなというのは実感しました。
小形 それは生身から出ている台詞か、そうじゃないかとか。まぁ勿論アニメーションなんでそういったものが売りな作品もあったりするんで。
石井 そうですね。
小形 そういう方向性のものもあるとは思うんだけど、それはとはG-レコはちょっと違う感じ?
石井 いやー、全然違いますね。本当に監督が1話から芝居をするなと仰ってたことをすごい今でも思うんですけど、それはG-レコの中だけのお話かもしれませんけども、でもそこをちょっと大事にしてみたいなって自分の中では思ってて。少しでもアニメだけど人間らしさが出たら良いなっていうことを思いながらここ最近はお仕事をさせていただいてます。
小形 G-レコやって石井君的には良かったのかな?
石井 いやー、ほんとに良かったですよ。だって声優になったばっかりで、普段絶対に声優になったばっかりでラジオやらせていただいたりとか、舞台挨拶とか、それこそ一番びっくりしたのがキャンペーンでCMにも出させていただいたことなんですけど。経験できないことを一気に経験したので。階段を一段ずつ上がらなきゃいけないのに飛ばし飛ばしで上がったな、ってのがあって。逆にそこは不安でしたね。飛ばした分の階段をどうやって埋めていくのか。埋めていけば良いのかなってのは思ってました。
小形 確かにいきなりロケットスタートしたような感じだもんね。いきなりガンダム主役って中々ないこと。
石井 ほんとにないですね。だからこそすごい大事にしたいなと思っています。
小形 まだベルリちゃんとやれって言われてもできる感じになってる?
石井 全然できます(笑)。いつでも。
小形 こないだもチラッとそこで会ったんだけど、少し声が太くなってるような気もしないでもない。
石井 あー、でも実は監督が1話の時に「腹から声出せ」っってアドバイスをいただいて。それからボイトレに通ってて。そしたらなんか多分、色々と体の中から変ってきたのかなっていうのは思いますね(頷く監督)。だからって声自体が低くなったわけじゃなくて、どちらかと言えば響くようになって、っていう方が正しいのかな、って思ってます。
富野 あの、まったくそうです。響くというか通る。
小形 言ってましたよね、監督がずっと。
石井 今でも忘れませんよ、ほんとに。
小形 1話のときとかね。やってましたよね。じゃあそういうのを意識して日々やってる?
石井 そうですね。G-レコで学んだこととかを別の現場でも少しずつ、全部を活かす訳じゃないけど、ここはこういうことやってみても良いかな、みたいなことをできるだけ活かしていきたいなと思ってやってますね。
小形 監督的に石井君は久々に見て変わってないですか、全然?
富野 いや、少し大きくなったっていう(笑)。
小形 ぽっちゃりしたってことですかね。
石井 ぽっちゃりか。
富野 大きくなったってのは、またちょっとだけ大人になった。だからこれ以後大事なことは、さぁこれをどのように持続させるか。我々ガンダムワールドの世界では、古谷徹さんというとんでもないない人がいて。もう50半ば過ぎても未だにああいう発声ができるという。あれは何となくではできることではないんで。それを今度は石井君がどこまできるのかな、っていう意味ではやっぱり僕はその部分の節制の仕方とか持続の仕方ってのは知らないんだけども、やっぱりそれは教えてもらってほしいなと思うし、何かそういう機会は何かあったら作ってほしいなっていう風には思いますね。ただ今こうやって石井君の話を聞いてて、もうこういう意識を持っているだけできっと大丈夫だろうと思うから、やっぱりもう少し幅広く色んな仕事をやって、言ってしまえば人生経験を積んでくれれば、G-レコの本当の意味も30年後に分かるであろう(笑)。偉そうな言い方をする(笑)。それだけ。
小形 古谷さんはやっぱり全然他の人とは違う感じがしますか?
富野 この10年ぐらいつくづくそう思います。そういう意味で劣化をさせないという覚悟を持った時期もあったんでしょうね。それで間違いなくあの年齢でも維持しているという意味では声優だからできるだろうなと思いたいんだけども、やっぱりそうでもないだろうな。そういう意味でかなり頑張ってらっしゃるっていう風に思います。すごく極端な言い方だけども食事のことから気をつけている部分ってあるんだろうし、家庭を持ってるという部分での気をつけ方もなさってるんじゃないのかなとそりゃ想像します。そうでなければやっぱり人間ってちょっと気を許すと崩れていくもの。それは姿、かたち、声、に間違いなく現れますからね。それは僕自身も経験したことなので、つまり鬱病みたいなことにもなったこともあるので、そういう時の自分の顔つきとか。それから喋り方。みたいなことも微かに覚えている部分でそういうところに出てきます。だからそれを出ないようにするためにはどうするかっていうと、こういう仕事です。コンスタントに忙しいわけじゃないんですよ。つまり独りで寂しいときにも病気にならないようにするという努力をしていいかないと、そりゃ簡単に鬱病になります。ほんとおそろしいくらい。それは皆さん方こういうところにいらして下さってる方は、実を言うとマメなんです。マメだしフットワークが良いからこういう風にしてられるんだけども、そういうことができかねて、それこそモニターを見て気を済ませている方には、もうちょっとだけ外に出るという努力は今のうちから身につけておいた方が良いですよ、ってことはこうやってじいちゃんの立場から言っておきます(笑)。
小形 まぁ外に出てね、色んなイベントなりそういったのを見るってのは良いことですよね。人と出会って話をするってことですか?
富野 話をしなくても良いんです。他人と、人との場所でわさわさするだけで良いんですよ。つまりお祭りがそういうことでして。何で人類が世界中で季節ごとにお祭りをやるかって言うと、結局独りで暮らせないからです。それで時々自分が今こういうところで暮らしているんだよね、っていう嫌いな奴も好きな奴も、あいつ殺してやりたいと思う奴も含めてわさっといるような景色を見ることで、実を言うと自分がものすごく安心している部分がある。そういう意味ではやっぱり社会的な動物なんだ、って部分はもう少しきちんと自覚した方が良いと思います。今あらためてきちんと自覚してくれって言うのは、今、ネット社会になってしまいました。全部ここ(手元の端末)にあることで全部繋がっている、LINEで繋がってる。LINEって言葉も酷く危険な言葉で、LINEを使ってるから向こうと繋がってると思う、嘘です。顔を見なくて、要するに嫌だなと思って肩擦り合ったみたいなことがない人間の関係性では、それは信用できません。だからそういう意味ではちょっと手元にあることで全部伝わる、いわゆるメッセージが伝わってるという言い方。人間のコミュニケーションってメッセージだけでは伝わりません。あるときにはハグひとつで全部済んじゃうこともあるわけ。そういうことは一体どういうことなのかということは、皆さん方の年齢の頃からずっと考えていってほしいし、こういうとこでこういう話を聞いたら、これを今度は周りの人に伝えていくみたいなことはしてほしいな。ネットでLINEでじゃなくて(笑)。
小形 Twitterで拡げるんじゃなくて、ちゃんと直に、といういことですね。
富野 それはものすごく億劫なことなんです。億劫なことなんですけども、暮らしを立てる、ということは億劫なことを順々に目潰ししてやってく。それからそういう気力を持ってる自分、というものを育てていかない限り、実を言うと暮らしってのは成り立たないんですよね。そりゃ今コンビニがあるお陰で、ってことで我々は買い物も何も考えないでここのコンビニにひょいって寄ったときに、自分の欲しいものがとりあえず手に入るみたいなことが、実を言うと人間の努力を、努力するということをそぎ落としているって感じがします。だからその部分を気を付けて便利は便利なんだけども、それで暮らしが全部成り立つってもんじゃないよ、人間関係って便利には良好な関係ってもてませんからね。努力しない限りもてないから。だからそういう部分ってのは意識していくときに何が必要かと言うと、結局自分の中に踏み出していく勇気とまでは言いません。踏み出していく気力と、今度はここにいる奴が半分嫌い半分好き、だけど嫌いは嫌いなりの付き合い方をしないといけない社会的な関係があったりするわけだから。って言ったときに上手にこなす……。
小形 どうしました?
富野 今この話をした瞬間に、今日はものすごく嫌なことがあったの(を思い出した)。ものすごく嫌なことがあったの。とにかく怒るまい怒るまい怒るまいっていう風に来て。大きな声をあげるのを30分我慢したら、今度はここに来た次の人に話をしたときに、ものすごく楽しく話ができてこちらの意思を伝えることができたってときに、うわーっ、キレたらダメだよねって。ほんとに。つい6時間くらい前に実感してますんで。そういう億劫なんだけどもそれをやってくと結果的に上手くいったときに、上手くいかなくてもです。喧嘩別れをするよりは一応ここで何となくお互いの目と目が合って、ン、となって済ますことができたら大喧嘩をして別れるよりはとても気持ちが良いですよ。そういうものの積み重ねが暮らしなんじゃないのかな、ってことは、今日こういう話をする場所じゃなくて(笑)。
小形 いやいやいや、そんなことはないですよ。でもそういうことは監督の言われているニュータイプとかそういった部分にも繋がってるんじゃないですか、やっぱり根底的に。
富野 初めはニュータイプは、そういった単語を生み出したときにはSFらしくするためには「ニュータイプ」なる単語があった方が良いなと思ってました。だけどニュータイプってのはどういうことなのかということをこの30年間定義づけすることができなくて。そしてG-レコをやるときにまた改めて考えるようになって。ニュータイプの定義がほとんど決まりました。とても優しいことなんです。要するに自分の周りのものを全部認められるようになんなさいよ。それと、自分の周りにあるものを、さっき僕自身が経験したことです、初めての所に行ってキレそうになるくらいカーッとしちゃって。こんな所火ィつけてやろうと思えたくらい(会場笑)。そういうものをずっと我慢してって、この存在を認める、この存在を認めながら尚且つこの存在を改善する方向に向けるためにはどういう風な言葉遣いを先方に与えるか、みたいな回路を作るためには怒鳴っちゃダメなんだよね、って(笑)。
小形 監督が「怒鳴っちゃダメなんだよね」って言うとすごい……ありますけどね(笑)。
富野 うるせぇよ(会場笑)!
小形 怒鳴っちゃダメですよ。
富野 っていうような話をして、実際に相手方と話が通じるようになってきたときに「あぁこれでまた広がるかもしれない」とか、広がらないまでも少なくとも人を罵倒しなくて済むことでこちらも楽になる。楽になった上でもし向こうの、受け手側に能力があったら、その人がそちらの方を改善してくれるだろう、とかって期待を持てる。だから人の関係性ってそういうものなんだよって全部にこうやって分かるようになっていけたら、ニュータイプだと思いません? っていうことです。つまり超能力というところに翻訳していくよりはむしろ今みたいなところで、今ここ(会場を指しつつ)にいる奴全部好きになれって、好きになんかなれる訳ねぇよね。だけど好きにならないまでもこの存在をお互いに認めようとか、っていう風に思うだけでもだいぶ違うんじゃないのか。そういう風にみんなが認められるようになってくれば、ということで、今ので事件の話をするのはちょっと角が立つから止めるんだけれども、皆さん方が知っているような殺人犯とか殺される側とかにならないことってのが起こるんじゃないのか。ああいうものが起こってしまうのはどういうことなのかと言うのは、両方に隙があるし、どちらかにつけいる奴がいて、つけいろうという人の目の前で自分が餌みたいになってピヨピヨと飛び出していったら、それは殺されるよね、みたいなこと。すごく一見一方的なんだけど、実を言うとそれぞれがそれぞれの立場のことしか考えていないからそういうことが起こって。ある時偶発的に起こった人間の関係性の中で殺人が起こってしまう事件がある訳です。それを止めれば良いだけなんだよ、ってときにどういう心持を持つかって言うと、絶えず周囲に対しての私っていうのが嫌悪感をもたれない。それから病人だと思われない。それから健全だとは言われないまでもこの人がここにいる分には別に事件にはならないんじゃないのかな、っていうそういうオーラなり気を発することができるような穏当な人になるということが、実を言うとそれほど簡単なことでないわけです。まして今度は自分があいつとあいつは好きだ、あいつとあいつは嫌いだ、って絶えず本能的に識別してるじゃないですか。そういうものをもう少しふんわりとして見ることができる人格とか心のありようを持つということが僕はニュータイプ論としてとても大事なことのような気がする。そのことはここにいらっしゃる方で多少興味があるんでお分かりのことですが、今の日本の政治の問題とか、中国とか韓国のとても偉い人たちの言葉や何かが、何でこうなんだろう、っていったときに、今言ったような心持を持ってないからなんです。全部自分の立場! を守る。ってとこに入る。それから自分のお祖父ちゃんが為し遂げなかったこと何とかやってみせたい! と思っているという、たったひとつの想いがあるために、要するに国会もそうだし国民にも半分以上嘘ついて法律を通そうなんて思ってるのも、そういうフラットに広く物事を見るとか問題を考えるという精神を持ってないからじゃないのかな、という気がするんです。だからニュータイプってのは難しいことじゃないんですよ。だけど実際にそれを実践しようと思うと、それぞれの立場があって、それぞれの社会的な地位があるから、確かに言葉遣いも難しいし、やるべきことも違うわけだから。組み合わせ方がとても難しいんです。難しいんだけれどもやっぱりそれが皆が合意ができるような、皆で合意が取り付けられるようにしたい、取り付けるようにしよう、そういうものを今度は受け入れていきましょう、というような心持を皆が広く持てれば、それこそもうちょっと良い世の中になっていくんじゃないのかな、という風に思ってます。今みたいな言い方だけしているとすごく一般論なんで、中国と韓国と日本の問題を出しましたんで、ひとつだけこういう言い方をします。例えば今中国が問題にしている南シナ海というところに領海権があるみたいな行動をとっていることだって、どう考えても公海上なんですよ。だけどそれは例えば本来経済的に共同開発にしようというところに持ち込めば良いだけの話ですよ。とにかく自分の覇権主義的な威力をもってそこを領土としようと思ってる力を見せてるわけです。ところがこの僕の言い方が実を言うと一方的なんです。ある中国人から僕教えてもらいました。「だけど富野さん、中国に行ったらその気になりますよ」って。「どういうことですか?」「60億喰わせなきゃいけないんですよね。それの責任背負ってるんです」じゃあその60億80億食わせていくためにどうするかって言ったときに、軍事力が先発して食わせられるかっていう風な言葉遣いを、我々は今まで持ったことがないんです。今までは皆20世紀までの覇権主義、つまり領土をどれだけ、領地をどれだけ持ったら国民全部を食わせられるかっていう発想しかなかったんです。だけどこれからはもう少なくとも中国、韓国、日本で共同開発してそこはもう中立地帯として経済・資源発祥地として共同管理していこう、みたいな話をしなければいけないはずなのに、それをしないで戦争論に行ってしまう、ってのが20世紀・19世紀の発想でしょ。ニュータイプの発想は戻ることじゃないんですよね。ところがこれをまだ外交的に解決しようなんて発想を今の偉い人たち、大人たちが絶対に持てないのはそれぞれの立場があるからです。ここで弱腰を見せたら次の選挙では勝てないかもしれない私、っていう論法に入るわけね。って時に「打倒中国」って奴も出てくるのが今の日本の政治家。それはだけど19世紀の話なんだよね。っていう話が、例えばですけど、皆さんこの1、2カ月テレビとか新聞で聞いたことありますか?すごくチャチな言葉遣いかもしれないけれども、もうそういうところに行かなくちゃいけない、という言葉遣いはまだ聞いていない。これはチャチな言葉遣いかもしれないけれども、ガンダムで戦争をずっと考えてきました。戦争するのにね、資源が要るのよね。電力が要るのよね、石油が要るのよね。そういうこと考えたときに、自衛隊に多少の武力を持たせたからと言って勝つとか負けるとかの話、ないもの。それは実を言うと中国にもないの。一見あるようにも思うけれども。これも中国の人から聞きました。中国って皆さんご存知ですか? ひとつの国じゃないんですよ。っていうようなこともやっぱりほんとは知ってほしいことです。すいません、また余分な話をしてしまいました。
小形 まぁ余分な話というか、石井君とか結構難しかったと思うけど。何気にG-レコ色々含まれている話。
石井 そうですね。今の聞いてて思いましたけれども。
小形 このまま続けると監督また立候補の話が来ちゃうので(会場笑)。
富野 数年前にそういう話がありまして。立候補しなくて良かったなという風に今思ってますが、2、3年後のこと考えるとほんとはやっぱり立候補してなくちゃいけなかったのかなと思ってます(笑)。
小形 でも立候補してたら作品作れなくなっちゃいますよ。
石井 そうですね。
富野 それはそうです。その当時そういう話をいただいたときに、どっちを選ぶかって言ったときに、僕はやっぱりアニメを作るという方を選びました。というのは、今みたいな優しい言い方をしてかないといけなくて。いきなり外交の話で始めていくと、面倒臭いことが2、30年続くんですよ。それではきっと結果は良くないんじゃないのかな。G-レコで手をつけた一番の理由ってのは、今の14、5歳の人たちがG-レコの精神をもって30年後に国会議員になってくれて、それから外交やってくれた方が早いかもしれない。つまり50年スパンで考えました。って言ったときにアニメを作るという方に行ったというのが僕の立場です。
小形 そうなんです、我々くらいの年齢だとちょっと手遅れになってる部分があるんで。もう固まってるし、社会的地位もあるし。捨てられないものもあるし。まだ小学生とか中学生だったら、これからそういうところに行く人たちがいるわけなんで。アニメはそういうところに働きかける作用が非常に他のメディアと比べても強い。
富野 という風に僕思ってますし。じゃあ大人が色んなことを考えないバカチョンかというとそうではなくて。家庭があって、家族を食べさせていかなくちゃいけないっていう切実な問題があるわけです。そして今日まで来た自分の立場というものをそう簡単にチャラにすることはできないし。もう一度やりなおそうということもとても大変なこと。だから一番大事な、大人になってもうこれ以上新しいことができないからって絶望する必要はないんです。絶望する必要はないっていう決定的な言葉を与えておきます、皆さん方に。犯罪者にならないで死んでいけるんだったら、それは立派な人生です。大人がやる最低限のことはそれで良い。子供を犯罪者にしないように育てる、ってことだけで良いんです。だからです。世作りというのを俺の政権の間にやってみせる! って言ったらさ、今生きてる政治家がやるわけだから、これから5年とか10年とかやるわけよ。そうするとさ、余程上手にやらない限り改革なんかできるわけないわけ。そういうスパンで世直しをやるなんてできるわけない、ってこともそれこそガンダムやって分かった。だからです、ターゲットは今の10歳! この世代を30年後に世直しの勢力にする。それを3回くらいやったら、つまり100年くらいやったら少し世の中良くなるだろう。そういう発想を持てばさっき言った通り、中国、韓国、日本だけではなくて、東南アジアが、要するに南シナ海全体の資源を共同開発するっていう話し合いをする精神を持つことができる。現在そういうことを持つことができないのは、19世紀までの20世紀までのつまり植民地主義みたいなので痛めつけられた中国人。日本人なんてのはね、俺達をいじめただけの民俗なんだよ、っていうトラウマがものすごい人たちなんです。日本人はそのことを想像しません。原爆を被爆者、被爆者、被爆者、って言う風に生きてる。中国人にしてみたら日帝のやつらにやられた、やられた、やられた、で原爆以上の被爆を受けているんですよ。だからそういう人たちと話し合いをしていくためにはどうするか、って言ったときに、これから5年10年でそういう話し合いの場が持てると思えません。だからです、今言ったようなスパンで考えていって、皆で資源を共同管理していかなかったら地球ってのはひょっとしたらヤバいんだよ、って話ができるようになる。そういうような場を作っていくようなとこまでやりたい。これはほんとにリアルに政治を見てる人たちから見たら、バカな話なんです。アニメなんです。アニメ的だからよね、そういう言い方をするんだよね。そういう風に僕は言われても構わないんです。だけど、まさにその部分をこれから30年、50年積みかさねていけば、アニメの話じゃなくなると思ってます。今一番こわいのは、今こんな話をしてようやく4、5日前の新聞のおそろしい写真を思いつきました。今むしろ、リアルの方がヴァーチャル、つまり絵空事に走ってるんですよ、って話分かりますか? 今中東でテロ対策や何かで時才に爆撃をやってるのは、地球の反対側にいるところでまさにです、リモコン操作でやってる戦争みたいななことでテロの要人を空爆するみたいなことをやってて。アメリカのねーちゃんみたいな兵隊が、これだったら私スイッチ押せる、って言うんです(机叩きつつ)。戦闘機乗ってないから。ところが実際に殺人やってるわけ、地球の裏側で。そういうシステムが完備して、これヴァーチャルですよね? 4、5日前に読売新聞で見た一番すごい写真。中国が今回日帝打倒の戦勝記念パーティーをやります。陸軍の徒歩部隊の写真が一枚だけ載ってました。ネットで載ってるかどうかはチェックしてませんけども調べて下さい。中国陸軍の徒歩部隊、歩く部隊です(注:朝日記事ですがリンク:http://www.asahi.com/articles/ASH8Q4R20H8QUHBI01Q.html)。女性の部隊。全部美人! 全部8頭身以上の隊列。アニメ以上にかっこいい! これをリアルな軍隊が遂にやった。北朝鮮喜び組なんてもんじゃない。とっても素敵な写真です。全部綺麗なねーちゃんだもん。宝塚以上に皆。良いタマ揃えて。これをパレードに持って来るってのは一体何なんだ、ってときに日帝、つまり日本帝国主義に蹂躙されその戦争に勝った中国が70年後にやるパレードがもっとリアリズムに軍事論とか力を鼓舞するパレードやるんだったら僕ね、しょうがないなと思うし、その位トラウマ酷かったんだよねって思いますが。僕はあの綺麗なねーちゃんの横列縦隊を見せられた瞬間に、あれ、中国陸軍も共産党もアニメになったかもしれないと思ってます。こういう見解、ネット配信されるってことで中国関係者もひょっとしたら見るかもしれないってことを、実を言うと承知します。アニメの目線ってのはそういうところでとてもこわい。そろそろもう少しリアリズムで物事を考えていただきたい。つまりリアルに政治経済に対応する人たちってのはリアルに考えて欲しいな。っていうのは今回の……あ。止めます(笑)。
小形 あんま深いところはね。
富野 金融の話もしたいんだけども止めます(会場笑)。
小形 それはまた違う回で。監督そろそろトイレとか大丈夫ですか? 行かなくて。
富野 さっき頻尿だって自慢してたんですけど、よく保ってるなって自分でも感じてるんで(笑)。トイレ行っておきます。
小形 そうですね。そろそろトイレへ。
富野 こっち?
小形 そうです。じゃあちょっと監督トイレ行ってもらって。石井君、ちゃんと付いて来れてた? 今の話。
石井 半分くらい(笑)。
小形 (笑)。石井君の世代とか新聞とか読まないでしょ? 俺もとってないもん新聞。
石井 とってます。
小形 実家?
石井 はい、実家です。気になったニュースとかあったら新聞は見るようにはしてますね。
小形 テレビはニュースちゃんと見てる?
石井 あまり見ないですけど、親が見てるときとかに、このニュースちょっと気になるなとかなったら、新聞の方が文になってるし細かく分かるかなと思って。
小形 ちゃんと読んでる?
石井 一応見ますね。
小形 その割にはあまり漢字が得意じゃないよね石井君。
石井 そこは別なんで(笑)。
小形 そこは別なんだ(笑)。
石井 別ですね。
小形 そうなんだ。
石井 でもほんとに、監督が仰るように、何て言うのかな。
小形 そういう風になれなたらね。
石井 そうですね。
小形 監督はまだ、もう70にして、まだ理想のところには行ってない訳だから。我々も、石井君なんてまだ監督の歳になるまであと50年。
石井 そうですね。
小形 ある訳だから。50年考え続けなきゃいけない感じになるのかな。
石井 その50年の間にもいったい何が起きるか分かんないですしね。
小形 分からないね。50年後もでも生きてる限りベルリの声は出さなきゃいけない。
石井 そうですね。50になってもベルリやりたいですね。
小形 ていうかやんないとマズいんじゃない。
石井 「ありあとあす(ダミ声で)」とか言えないですからね(笑)。
小形 「ベルリ、石井君声変わったな」みたいな。誰だか分からないみたいに言われちゃう。
石井 それは嫌なので。
小形 ガンダムの主役やると大体ゲームとかで今後も出続けていく感じになってくと思うから。その辺はほんと古谷さんとかに聞かなくちゃいけないんじゃないの。
石井 そうですね。まぁ実際僕は今やってることがボイトレだったり、できるだけそこそこ運動しないとなと思ってて。余裕ができてきたらそれこそちゃんとトレーナーさんとかに見てもらってジムとかに通いたいとは思ってて。何で思うかっていうと、23歳なんですけど、それでも自分の体がなんか変わってきてるなってすごい実感することがあったりして。自分なりに。
小形 40くらいになるともっと変わるよ。どんどんダメダメになっていくよ。
石井 (笑)今、感じられているから、もっと先になると大変なのかなって思ってて。それをできるだけ今の内に少しずつ改善していけたらなとはやっぱ思いますね。
小形 他の仕事とかで歴代のガンダムの人たちとは会ったりするの?
石井 そうですね、別の現場だと今度堀川さんにお会いします。
小形 83の。
石井 はい。あ、監督が。
小形 どうでした、トイレ?
富野 何も変わってないんで別に。
小形 ちゃんと男性用に入りましたよね?
石井 えっそこから?
小形 ダメですよ女性用は(もどるそぶりを見せる監督)。
富野 こんなに真っ赤だったんだ。
石井 真っ赤なんだ。
富野 暗い。やだなぁ。
小形 トイレあんま明るくてもアレですけどね。堀川さんに会った。
石井 そうですそうです。あとは別の現場で石田彰さんだったり子安さんだったり宮野さんだったり。まだ一番最初の頃の方とはお会いしてないですけど。
小形 池田さん古谷さんにはまだ会ってないと。
石井 はい、まだお会いしてないんですけど。でもここ最近出られてた方、内山さんだったり、っていうのはお会いしてて。
小形 ガンダム談義とか俺の方が強いとかそういうのは?
石井 いやーっ、でもこないだ子安さん宮野さん石田さんがいる中で、実は僕の乗ってる機体、僕しか乗れないんですよね、みたいな(笑)。僕だけじゃないですけど、ちゃんと認証しないと乗れないんですよね、って言ったら、お前ズルいな、って(笑)。俺達一応あるけどさ、って。皆さん仰ってました。
小形 そういう感じの話を。
石井 ちょこちょこやったり、宮野さんが、俺がガンダムだ、って言ったり。
小形 やっぱ言うんだね。
石井 僕がガンダムです、って言い返したり。
小形 なるほど、ガンダムもいっぱいありますからね。
石井 そうですね。
小形 監督は自分のやるガンダム以外はあんまり見ない感じなんですかね。
富野 あんまり見ないじゃなくて、実を言うと今日、こんなに若い方がいらっしゃるとは思ってなかったんです。
小形 若い方いらっしゃいますよね。
富野 ここまで若くなってるとは思わなかったんで、びっくりしましたので、ほんとの事言っておきます。一応僕ガンダムを作り始めた人のつもりでいるわけです。そういうプライドがあったり、ゴーマンかましてる部分があると、社会的な関係性つまり法の問題で言ったときに、一応権利は全部売り渡したものだから、他人がガンダムを作られても文句は言えない立場なんです。が、他人のガンダムを観ることができないんです。だってガンダムは俺が作ったのに何で他人が作れるんだ、ってことが35年経ってもまだ飲み込めない部分があります。だからどういうことかと言うと、観る努力をしますが、しましたけれども、5分観てられないんですよね。ってのは、俺が作ったらこうではないよね、っていうのがキャラクターからメカから物語の構造からしても基本的に他人のものだから。その苦痛があるために一切合財観なくなりました。それは例外作品は一切ありません。全部観られないんです。そのくらい辛いものです。こんなことをしてはいけませんよという言い方があると同時に、これも自分でOKしたからなんですが、だけどこういう風にOKしなければ、ガンダムってのはここまで拡がらなかったってことも分かりますのでやっぱりこれで良いだろう。それから個人的な感情は抑えて他の人が作るガンダムがあっても良いというのはあるところ、そうですね20年くらい前からは容認することができたし。思い出しました、今川君がやったガンダムは何だ?
小形 Gガンダム
富野 Gガンダムの時に、こういうガンダムが作りたいって言った時にむしろGOサインを出したのが僕です。あれが結局突破口になって、それ以後何やっても良いんだっていうガンダムになったっていうことです。
小形 そうですよね。それがGガンダムだったんですね。
富野 だからそれは基本的にビジネス論としてそれを容認した部分があります。が、僕の様な気性の人間はビジネスが良くってもそれで我慢ができるかって言うと、作品論的には我慢できないんで。他人のガンダムは全て、ORIGINも含めてです、クソです(会場笑)。
小形 言ってしまいましたね、これは(笑)。
石井 言っちゃいましたね。
小形 やっぱり監督はクリエイターですから。そういう気質はほんと大事だと思います。ただ、我々はビジネスマンとしてそういったところを含めて僕もユニコーンをやらせていただいたりとか、そういうのありますから。でも監督がそういう立ち位置になってくれたからこそ、色んな人たちが入りこんでガンダムを作れるようになったし。これがまぁ、どうなんですかね、良かったのか悪かったのか。
富野 総論的に言えば良かったし、間違ってなかったと思います。僕自身が我慢できたっていう。さっきチラッと言った鬱病にかかったというのは、この権利を全部自分のものにしたいという欲望をした瞬間があるんです。それで一度アクションをおこした時に、完璧に鬱になりました。絶対に突破できない部分があって。だけどそれを何とか個人のものにしたい。っていう様な欲をかくと鬱になります。だからそれがやって酷かったんで、それを止めてみてターンエー以後の仕事をぼちぼち始めていって、そして漸くG-レコに辿り着けたので、G-レコに辿り着けたお陰でさっき言った様な話が、一見無理してリアルな話をしているようなんですけど、実を言うと違うんです。G-レコを作ることによって、リアルな話がしやすくなるという物語をG-レコで作りました。だから実を言うと金融の話もしたいくらい、ムラムラムラムラしている部分がある(笑)、構造があったりするんですが、アニメにはつまりそういう力があるんだっていうことを改めて自覚すると、これで良かったと思っています。その上でビジネスマンにもっとこわい話をします。本来著作権というのは売り買いができません。著作権ってのは本来です、個人のものです。
小形 ちょっと僕の方見ないでください(笑)。
富野 企業体が持てるものじゃないんですが、ある時期、それが企業が持てるのではないかという風に錯覚した時代も30年から20年くらい前までありました。特に映画界が映画の著作権というものを会社が持てるという風にしたお陰で、著作権そのものが全部買い取れるもんだという風に錯誤していることがあるんですけど、国際法的な著作権で言うと、著作権有機体しか持てないんです。有機体というとんでもない言い方しているんですけど、つまり個人。組織が持てるものではない。著作をする、創作をするということは組織がする訳ではないですよね。だけども、制作費を出していたり、お前そのアイデアが出るまでうちが飼ってたじゃないか、だから権利よこせ、って構造がある時から出来上がってしまう。サンライズは実を言うとその部分も突破したんですよ。
小形 ご存知なんですね。
富野 幾つかの権利を分けることによって、全部が全部広告代理店のものではないとか。著作権のある部分もこちらの管理にしてくれ、みたいなことのサンライズの戦いもしました。ですから法的な理解という言い方も実を言うと一面的に理解することも危険な部分があるんだってこともちょっと承知しておいていただきたい。だからと云って俺が俺が俺がと言ったらこういう風になるかと言ったら、絶対になるわけないんだから。僕が全部の権利持ってたらガンダムカフェなんてやらせないもん(会場笑)。
小形 そうですよね。全部の権利持ってたら今頃宇宙のどっか行っちゃってる可能性がありますよね。
富野 行っちゃってます。ガンダムカフェじゃ嫌だもんね。もうちょっとね。
小形 もうちょっとお姉ちゃんたちをこうやって。
富野 そうそうそう。
石井 えぇーっ。そうなんですか(会場笑)。
富野 それはそうでしょ(会場笑)。そういう意味では趣味良くないもん。
石井 (笑)。
富野 そういう意味ではビジネスのことを全否定している訳じゃなくて、ビジネスマンって絶えず社会と対決してるじゃないですか。お客さん。結局客を見てるってどういうことかと言うと、世間見てるんですよ。世間の好み見てるんですよ。だからビジネスマンって自分の好み言ってる様で自分の好みでは言ってる事はユニクロの社長以外誰も言ってないんじゃないのかな。
小形 またまた物議を醸し出す(笑)。
富野 すいません、今のは削除してください(会場笑)。
石井 削除できるんですか?
小形 今日色々深い話もありましたけど、たぶんさっきのガンダム自分以外のクソだってので、ネットのこわいとこで、ORIGIN含めてクソですからね、ORIGINだけじゃなくて色んな作品含めてクソなんで(会場笑)。
石井 そういったフォローの仕方します?
小形 タイトルでよく出されちゃう時があるんで。それがこわいところなんで。富野さん以外のものに対しては観れないということを皆さん重々分かっていただいてネットで色々やってもらえれば。
富野 2ちゃんで書き込む人もそれ程バカじゃないと思うよ。
小形 いやいや、それがですね、色々あるんですよ。
石井 僕の知らない世界だ。
富野 少なくともガンダムっていう固有名詞を使って、書き込みをなさる方はそれ程単純な方じゃないと思いますので、ちゃんと英知をもってニュータイプとしての言論を発信していただけるととても嬉しく思いますんで(会場笑)。
小形 ありがとうございます。じゃあこの辺で皆さんから質問を折角なんで受け付けていこうかなと思います。石井君喋り足りないとか歌い足りないとかあったら歌ってもらってもいいけど。
石井 いきなりは無理です(笑)。
小形 マネージャーさんに怒られちゃうもんね。
石井 そうです。
小形 ネットでも募集しますんで。どんどんTwitter言っていただければと思うんですけど、まず中の人で質問を。あんま際どいのは止めてくださいね。

その2へ
http://d.hatena.ne.jp/char_blog/20160402

和田昌之のWADAX Radio 富野由悠季監督神田明神節分祭インタビュー

和田昌之のWADAX Radio

富野 お上手で。
和田 今座っていただいてますが、たいへん素晴らしいゲストに今日はご一緒させていただきまして。豆まき式には初めて参加ということでお越しくださいました、富野由悠季監督です。
富野 よろしく富野です〜(営業ボイス)。
和田 急なお願いで、ありがとうございます。
富野 とんでもございません。
和田 富野監督は今年初めて豆まき式に参加されたということで、ご参加いただいてどうでしたか?
富野 僕のお祖父ちゃんからの事情(富野本家が大島にあった)がございまして、隅田川のこちら方面というのはかなり敵対視をしてました(笑)。今回「ラブライブ!」のご縁があって、一応彼らのスタッフの名代みたいな気分もあったので、今回お邪魔させてもらいました
和田 ありがとうございます。お召し物も本当に素晴らしい。
富野 いやいや、もう30年以上前のものなので着古しです。
和田 30年前なんですか、すごい。
富野 あのねぇ、歳から言ったらそうでしょ(笑)。40年前になるかもしれない(笑)。
和田 40年前? 一生ものですものね、着物は
富野 3回か4回しか着てません。進めて。
和田 豆をまくことで、邪気をはらって福を招くと。2016年、どんな一年に富野監督としてはされたと思われますか。
富野 ちょっと深刻な話になっちゃいます。この歳になるといつまで生きられるかっていう残り時間を計算しながら生きなくちゃいけなくなってくるので本当この一年、生き長らえたらいいなぁ、来年も生き長らえられたらいいなぁ、って口先では言ってますが実は嘘で。ほとんど「お前らには負けねぇぞ!」っていうのが抱負です。
和田 素晴らしい。本当ありがとうございます。と言うか130年、150年と。
富野 嫌です(笑)。150年なんか嫌です(笑)。
和田 もしよければ皆さんに、リスナーの方に告知ですとか、メッセージを戴けたらと思うんですが。
富野 こういう形で豆まきみたいなものに参加させてもらって、日本が昔から持っているしきたりですよね。この行事というのはやっぱり意味があるなとあらためて思ったのは、邪気を払うとか、今年一年の願掛けというものを、なんか一見意味がないような気がしているんですが、あらためてこういう形で、特にこうやって裃着せられてやらせていただきますと、こういうものもやらなければいけないと教えられました。それはどういうことかと言うと、人の人生なんてのは好きにいくわけないんです。そのためのお願い事をするということで、自分の心構えを立て直すという効用があるという風に思ってますので、やはりこの年になってこういうものに参加させていただいて、すごくありがたかったと思うし、やはり若い方であればあるほど、こういう儀式というものを、なんて言うのかな、あまり嫌わないで参加していただきたい。そうすると何か発見がありますよ、ということは言わせていただきたいと思います。
和田 ご一緒させていただいて光栄でした。
富野 とんでもございません。
和田 富野監督ありがとうございました。
富野 こちらこそありがとうございました。

小形Pも一緒なあたり、本当は京極監督と平山Pにオファーがあったのでは、と思わされ、もしそうならやはり彼らが出席すべきであったのではないでしょうか(制作陣があまり前に出ないというスタンスであろうことも一応理解はするけども)。

当日のtw

私もタイミングよく行けたので、監督から福豆をいただけました。

第28回東京国際映画祭海外向け富野由悠季インタビュー ガバ和訳

富野由悠季監督、74歳のお誕生日おめでとうございます。
外配信向けインタビューを見つけましたので、グーグル先生とエキサイト先生の手を借りてガバガバ和訳しました。
http://otakumode.com/news/562c41a7a1c66b3f299ecf58/Interview-with-Yoshiyuki-Tomino-the-Creator-of-Gundam

東京国際映画祭(以下TIFF)が10月22日から10日間開催される。今年のアニメ特集はガンダムだ。その制作者富野由悠季が、今回の特別企画として、忙しい中海外向け合同インタビューに登場してくれた。

創作の背景にある原動力としてリアリティ

――ガンダムシリーズは今年のTIFFの特徴のひとつです。ガンダムはなぜ他のシリーズと比較して映画化がなされるのか教えていただけますか。
富野 僕は基本的に、メッセージを分かりやすくする為に映画化しています。TVシリーズでは断片的すぎるから、お話を繋げて「そうだったのか」とお客さんをスッキリさせたいんですよね。たとえ棒繋ぎでも、映画化でお客さんは分かりやすくなるし、これが劇場版Zガンダムを作りたかった理由でもあります。
――あなたのガンダム最新作であるTVシリーズのG-レコでは宇宙エレベータを採用しましたが、一方で日本のインタビューのひとつではニュータイプから脱却しようとしているとおっしゃられました。これらの新しいアイディアとチャレンジはどこから発想するのでしょうか。
富野 僕はアニメ、まんが、小説ですら戯作できなかった人間ですので。ですから現実すべてが原動力です。
――現実が原動力?
富野 例えば、宇宙エレベーターなんてバカな事を思いついた奴に、そのバカさ加減を分からせるためです。僕の「これを許す政治システムと国際情勢ってなんだ?」という様な宇宙エレベーターへ反対するカウンターの様な気分もあります。
――カウンターですか。
富野 そうです。僕は実際に宇宙エレベータができるとは思ってません。できたとしても、G-レコで示した様な形でしかないのではないでしょうか。僕は「宇宙エレベータなんて作って何運ぶか考えたことあるか? ないでしょ。宇宙に行くには細長すぎて馬鹿げてる」って言いたいんですよね。

多くの女性ファンがガンダムシリーズは芸術作品と示している

――ガンダムシリーズを作って35年、ファンの変化が起こっているようです。世界情勢の変化やネット環境で世界中の人々がガンダムを見られる様になりました。こう見て欲しいという希望などはありますか?
富野 それは制作者が述べたり望んだりすべきではないと思います。G-レコを作った時、僕は長年やってきて初めてファンと相互に影響しあえたと感じました。ですので迷いなく作れましたし、お互いが別々に視聴していた「現代のファン」です。ファーストガンダムの最初のファンが女性だった事をご存知?
――ガンダムみたいな作品はほとんど男性ファンがターゲットだと思ってたのでびっくりです。
富野 分かってないなぁ。僕は今回も女性ファンを獲得したいと思ってたし、やり方は間違ってなかったと気付きました。
――どういう事でしょう。
富野 芸術でなんかないし、フィルムとアニメは、マニアだけが見て楽しむものではありません。メカファンが好きな様に作っても、芸術性を考える必要性はありませんから。女性ファンが集まるのを目の当たりにして、間違ってなかったと思いました。ガンダムを世界中に知らしめるチャンスだと。もしメカが注目されただけなら、世界に広まっても狭いファンしか獲得できなかったのではないか。そして劇を作る価値はなかったでしょう。時間とお金の無駄です。僕はそうはしたくなかった。
――どうして女性ファンの感触が分かったんですか?
富野 兆候が見えたのは(G-レコ)制作後です。全部終わった後、ブルーレイ売り場に行ってみたんです。そこで何人もの女の子が足を運ぶのを見て驚きました。(G-レコの)開始時は「トミノが15年ぶりにTVシリーズを深夜にやるんだって」なんて言ってた連中だけで、本当に時間のムダだと思ってました。でも制作後にファンの集まり(夜のG-レコ研究会?)に行ったら、40人くらいいる内の15、6人が10代の女性だったんです。
――多いですね。
富野 ガンダムシリーズのプロデューサーと脚本家はこの感覚にあまりにも気付かなさすぎです。露骨にそれを無視する事が許せないんですよね。そういう悪い勘すら持ってないのがほんと許せない。アートってこういうのじゃないでしょ。
――制作者はもっと客の方を向いて考えろと。
富野 そうです。「僕たちがガンダムを作れるんで大丈夫です」なんて考える制作者になる事は許されないわけです。映画に絡めて言うとこういう事です。もしこれ以上制作者が来なければ、ガンダムワールドは拡がらないでしょうね。

ファーストガンダム反戦思想

――ガンダムシリーズで、両陣営の戦争背景を描いた理由はなんでしょうか? また、制作に当たって従軍経験のある人物に取材をされたのでしょうか。
富野 戦後20年経った60年代に育った者なら、少なくとも最低限は戦争の残り香が理解できたのではないでしょうか。それに戦記と呼ばれるものを読んでました。それらが基礎知識ですね。その当時、殆どの戦争記事は一方の視点でした。しかし、双方合わせて数十万人からなる戦場を考えてください。もし双方が互いに正義がなければ、このような戦場は成立できないでしょう。多数の物語は一方の観点に基づいているので、僕は双方の立場を見せる物語があっても良いだろうと感じました。その後、TVシリーズは長く作られる事になりました。たとえロボットアニメであってもです。僕は戦争設定が双方を描くためのたくさんの要素をもたらすと想定していましたから。ガンダムでは、僕は敵味方双方を物語る事を目指していました。特にアニメは通常子供が見るものですから、一方の原則のみを語ってしまったら、必然的に結局、自分で考える事に影響を与えてしまいます。もうひとつ、細心の注意をはらっていたのは、高い位置から戦争状況を俯瞰する事でした。
――ファーストガンダム反戦思想は、あなたが総監督だったからですか。
富野 そうです。絶対的にそうです。
――シャアとアムロの二つの立場を描きましたが、彼らは最初からセットで作られたのですか、それとも別々?
富野 一人のキャラクターだけを作っていたら劇的な戦いは発生しませんので、創作の過程では一緒に作りますね。
――シャアとアムロを比較すると、どちらが重要でしょうか? それともどちらも同等ですか。
富野 うーん、難しい質問ですね。演出と演技を確立させる過程では、シャアはもっと面白かったんですよね。でもアムロを物語の中に置いたら、シャアに対する状況を作らなくちゃいけなくなったんだよね。アムロの場合、あまりにも普通の人にしちゃったから、バランスを見つけるのが本当に大変だった。

先人への敬意とお子たちと未来への遺産

――ファーストには有名な「親父にもぶたれたことがないのに」のシーンがありますよね。重要なシーンと考えていましたか?
富野 もちろんです。それについては非常に意識していましたし、重要さを認識していました。僕が言いたいのは、子供たちに明確に例示する必要があるという感覚です。こういった事は欧米ではあるのですが、例えば過去の中高大では鞭でうつ事が認められていました。現代人の感覚では、「暴力」という言葉の似たような行為に置き換えられているんですよ。
フィクションの中ではこの様な行為は問題ないと考えています。なぜなら人はよく痛みを乗り越えなければならない状況に遭うからです。
――もしシャアがWW1のレッドバロンをインスパイアしたと言ったら、どのようなポイントを挙げますか?
富野 そうです、当時もちろん参考にしました。問題になるのは、レッドバロンの経歴を調べると、どんなに一人のパイロット、兵士が功績をあげても、基本的には戦局に影響はないんですね。
第一次大戦を通して学んだ事があります。この時代には騎士道と呼ばれるものがまだあった事と、プロイセンと同盟国には兵士への深い尊敬があった事です。しかしその尊敬も、戦史の中の内戦期を通して消えてしまいます。僕は、プロイセンとフランス、レッドバロンとイギリスの関係性を組み込んで、何が過去の人々の精神を凶悪にしてしまったのか、この事を考え、描きたかった。
これは日本人をまだ見たことがないキリスト教圏の人に言いたいんだけど。彼らはほんと無頓着。ほとんど嫌いなものでも。こういう言い方があります。ガンダムをロボットアニメとひとくくりにして扱う背景があります。
――最後に、ガンダムシリーズは世界中で多くのファンがいます。彼らにメッセージをいただけますか。
富野 もしガンダムがきっかけで何か考え始めようと思ったなら、すぐにやめましょう。そしてもし答えが見つからないなら、次の世代に託してください。
次の世代のお子たちについて思うのは、ガンダムで何度も示されている事を知る事で、人類の限界に似たなにかを知るでしょうね。僕はその限界を突破してほしいんです。ガンダムはそれを打破するためにシリーズ全体を通して激しく戦っています。あなたにもそう見えたら幸いです。

富野節になってなくてすいません、許してください。何でもはしません。
kaito2198さんのお知恵もお借りしましたが、ガバガバな部分の責は彼にはありません。これだけははっきりと真実を伝えたかった。