ガンダムA 10年8月号 MSV-R ジョニー・ライデン誕生秘話!!

ジョニー・ライデン……誕生?

――最初に「ジョニー・ライデン」という名前が出たのはいつ頃だったのでしょうか?
川口:MSVは講談社さんの「コミックボンボン」で作例や記事を展開していましたが、立体化が決まってプラモデルの発売告知が82年の12月に模型情報(No.41)に載って。
――83年の1月には「ボンボン」で「モビルスーツヒストリー」が始まってますね。
川口:僕らの間で「ジョニー・ライデン」の名前が出たのは、この少し前ですね。MSVが始まった時点でのメインはジョニー・ライデンではなく「黒い三連星」だったんですよ。
Ark:今、考えてみるとアムロとかではなく黒い三連星に目を付けたのは凄いですね。
草刈:ランバ・ラルとかじゃなくてね。黒い三連星って、どう見ても悪役顔だし(笑)。
岡崎:その後のOVA「ポケ戦」にしても「0083」にしても「新しいガンダムを作る」っていう方向に行くじゃないですか。それがなぜオヤジ(笑)。しかも本編では2話しか出てないキャラじゃないですか。
川口:黒い三連星は、アニメ本編のほうでもレビル将軍を捕虜にしたというバックグラウンドがあったし、兵隊らしい兵隊。そういう意味でも(僕らが)感情移入のしやすいキャラクターだったからですね。
――83年2月には模型情報の別冊「MSバリエーション ハンドブック(1)」で黒い三連星シン・マツナガのMS-06R-1Aとジョニー・ライデンのMS-06R-2が掲載されていますね。
草刈:最初の頃はちゃんとキャラクターの名前を覚えなくて、現場の人間は「赤いの」「白いの」って呼んでたんですよ。ただ、黒い三連星シン・マツナガのR-1Aは色変えだから金型変えなくてもいけるんだけど、ジョニー・ライデンの場合、そうではない。
当時の僕は原色で色を塗れる奴だったんですよ。で、渋めの作例じゃないのはだいたい僕の所に来て「ケンちゃんそろそろ赤いの作ってみる?」とか小田さんに言われてやった覚えが。83年の6月号のボンボンに載ったのが、僕の作った最初のジョニー・ライデン機ですね。
――パーソナルカラーはどうして赤になったんですか?
草刈:そこは小田さんの作った設定で。ただ、当時のガンダムの色からすると意外な色ではあるんだよね。
川口:当時はMSで白もあまりなかったね。
草刈:赤は小田さんが「シャアに間違えられた」っていうのを書きたいがために(笑)。
――マーキングとかは誰が…。
川口:結構いろんな人がやっていたみたいですね。増尾隆幸さんとか。
――ボンボンの83年12月号から絵物語ふうの戦記漫画「エースパイロット列伝」が始まりますね。
岡崎:エースパイロット列伝は、最初がジョニー・ライデンで次がシン・マツナガ。最後がロイ・グリンウッド。ロイ・グリンウッドが意外に熱い話で……Arkさん漫画やらない?
Ark:いやあ「ジョニー・ライデンの帰還」の連載を休んでいいんならそれもアリかと(笑)。

伝説のMS-06R-2……三か月連続掲載!

草刈:後の設定画がないままで悩みながら作ったんですが、うまくまとまらなくて、一回作って持っていった時にケガの功名というか、「後ろの設定がなければ作れない」「納得いかねえ」……みたいな話になって、増尾さんに描いてもらおうっていう話になったんですよ。でも、絵が上がってきたら背中のランドセルとかもう全然違う形になっていて。「なんで?」って聞いたら「ついでだから」って(笑)。
結局、もう一度作る事になって、二か月連続で掲載されるんですよ。で、二回目の時に間に合わないところがあって、その後いじったやつを持っていったら、安井さんが「じゃ、それもう一回撮影しよう」って。で、三か月連続で載っちゃった。それもあってよけいに子供たちが勘違いしちゃった。「なんで三か月も連続で載るの? 大人気だよ!」みたいな。
岡崎:だまされた!
草刈:テレビランドにもいっぱいハガキ来ましたよ。ボンボンでは「下田一」のペンネームでやってるから「ケン兄ちゃん知らないだろうけど……」って子供たちの反応が(笑)。

ジョニーはなぜ赤い?

草刈:最初にジョニー・ライデンの作例を発注された時に「レッドバロン」みたいなって直球なオーダーがあったんですよ。
――キャラクターそのもののモデルは?
川口:機体の派手さはリヒトフォーフェンですが、キャラクターは第二次大戦のドイツのエースパイロット、ヘルマン・グラーフですね。
草刈:で、すごい人気が出てきちゃったんで、静岡のほうでは「赤いの」でもっと商品が作れないのか? という話になって。
川口:実際、ジョニー・ライデンのMS-06R-2のプラモデルが発売されて、あっと言う間に黒い三連星のMS-06Rの売り上げを抜いちゃったんですよ。
草刈:でも作った僕より、今の30代くらいの人のほうがジョニー・ライデンに対する熱意とか思い入れがありますね。僕はゲームに登場しているのとか、全然知らなかったし。
岡崎:すごい人気でしたよ。「Ζガンダム」が始まった当時、「なんでジョニー・ライデンが出てないんだ?」くらいに思ってました。
草刈:でも当時のジョニー・ライデンのMS-06R-2は今、再現しようと思っても出来ないんだよね。同じ色がもうない。「真紅の赤は血の赤!」という認識があって、確かグンゼ産業の64番・スカーレットっていう柿みたいな色で塗ってたんですが、発売が終了して。僕がボンボンで作ったジョニー・ライデンの作例はほとんどその色で塗っていたんですよ。
――確か、グンゼ産業で鉄道とか自動車用のカラーを出していたやつのひとつじゃ…。
草刈:そうだったかもしれない。顔料がすごく薄くて塗りにくい色でしたね。で、ヒドイのが、そのジョニー・ライデン機……川口さんが失くしちゃったの(泣)。
川口:静岡にあるはずなんで、今度探しておきます(笑)。
草刈:85年かな? 川口さんがバンダイに就職してすぐだよね。店舗の展示用の作例として作ったけど、行方が分からなくなって。その後人づてに「草刈さんのジョニー・ライデン見たよ」とか言われてビックリしたり(笑)。

漫画版MSV-R ジョニー・ライデンの苦悩!?

草刈:そういえば、今回の漫画のストーリーで「ボール機雷散布型の実機が存在しないのは元に戻されたから」っていうのはいいですね。実際の航空機なんかも改修されたりするし、そのへんの味がうまく活かされてる。
Ark:ありがとうございます。実はMSV-Rの漫画を描くにあたって、ジョニー・ライデンの事は本当にわからない事だらけで。前回のラストカット、実は自分自身なんですよ。ジョニー・ライデンは調べれば調べるほどわからない。
昔から名前の出ているキャラだし、夢中になった世代だから知っているつもりだったんですよ。でも、MS-06R-2に乗ってて、ゲルググに乗って、キマイラ隊に行って…ってこれしかないじゃん! って。それで、ネットで検索を始めたら、いろんなジョニー・ライデン像が出てくる。本当に漫画のあの状態で、どんどんわからなくなったんですよ。
草刈:勝手なイメージがどんどん一人歩きして「自分の好きなジョニーしか見たくない!」とかね。
Ark:ただ読者は間違いなく「俺の知っているジョニー・ライデンが見られる」と思ってる(泣)。
草刈:そういやゲルググに乗り換えた後のR2って誰が乗ってるんだろうね。まさかゲルググキャノンにもジョニー・ライデン仕様があるとは思っていなかった(笑)。
Ark:「ギレン暗殺計画」はラストを決めてから連載に取り掛かっているんですけど、今回の「MSV-R ジョニー・ライデンの帰還」は、読者の反応を見ながらというか、あんまり最初から作り込まないで進めたほうがいいのかなあと。ライブ感で(笑)。
草刈:もしお願いできるならライデンはニュータイプにはしないで欲しい。当時の僕らの認識では、ジョニー・ライデンは優秀で天才っぽいかもしれないけど、普通のパイロットだと考えていたので。
川口:ヘルマン・グラーフで(笑)。
(2010年6月7日)

草刈氏の言いたい事も分かるけど、現状のMSV-Rも小田氏不在なら同じ穴の狢なんだよなぁ。いっそのこと小田氏を担ぎ上げて「本当のジョニーはこうだ!」くらいやれば良いのに。小田、安井、高橋氏らが一向に出ないのはなんででしょ、名人どうなんでしょ? 安井氏は連絡が取れない、というのはやまと氏のブログにあったが…。
ボールのくだりの草刈氏の意見は同意。
あと、漫画の方には川口・草刈両氏は噛んでないのね。