Great Mechanics DX14 「ガンプラビルダーズ」その組み立て方を聞く

メカデザイナー 重田敦司

――他の登場プラモが既存の機体ということもあって、ビギニングガンダムはかなり斬新なガンダムに感じるんですが、この路線はバンダイさんからの要望なのですか?
重田:いえ、デザインにあたってバンダイさんからは特に何も言われませんでした。どうぞお好きに考えてください、という感じでしたよ(笑)。
ビギニングガンダムのアイデアとしては、Vガンダム以降、宇宙世紀0150年代以降のガンダムをイメージして作っているんです。特に何も指定されなかったので、私が勝手に考えただけなんですけれどね。個人的にV以降は宇宙世紀を舞台にした作品がなく、残念に思っていたこともあって、「ガンプラビルダーズ」みたいな作品ならば、V以降の機体を作品内に登場させるのも、面白い試みなんじゃないかと思ったもので。
だから身長も当初は15メートルくらいのサイズで考えていたんですが、それだとプラモデルにするには、サイズが小さくなる、ということで普通の19メートルくらいになっています。
――お話を聞いて、変わっていると思ったデザインがかなり納得のいくものに見えてきました。
重田:腕以外は特に変わったものではないつもりなんですが……腕は僕でもちょっとやりすぎて、なんだかわからない(笑)。反省してます。
――確かにモビルスーツの腕としてはあまりみない形ですね。ちょっとターンAぽい感じもします。
重田:なんとなくシド・ミードさんの描いた物でこんな風なものもあったかもしれないなぁ、というレベルではラインを取り入れています。
――実体式のシールドやシンプルなライフルもターンA風ですよね。
重田:シールドはIフィールドを発生させる装置を表面に貼り付けて、ビーム・シールドっぽくできる強化パーツという案があるんですよ。頭のツノも画ではかっちりしてますが、作中ではビームです。「F91」でビーム・フラッグみたいなものも出ていたので、この時代ならば、もうツノでも何でもビームになっていたら面白いかな、と思いまして。
――「Vガンダム」の世界はミノフスキー物理学がそれまでに比べてかなり進歩している感じですからね。色々新しいビームデバイスがあっても納得です。
重田さんは作画監督もなさっていますが、2Dの「ガンプラビルダーズ」で見どころ的な部分というとどこになるでしょうか?
重田:昔ながらの、鉛筆をつかって描いてそれを画面にしてるんですよ、という作風でしょうか。今の子供たちやアニメファンにわかってもらえるか分からないですが……今のアニメには多いですが、あまりきっちりとした情報量の多い画ばかりだと個人的には窮屈なのではないかなと思いますので、こういった作風もたまにはどうですか、とおすすめしたいですね。

ビギニングガンダムのデザイン原案は重田氏だが決定稿はビークラフト。微妙に形状が異なる。

監督 松尾衡

――細かいことから入りますが、お台場ガンダムから始まるというところがまず男子的にはぐっときました。
松尾:会場にはガンダムファンのお父さんに連れてこられた小さい子もいたりするんです。昔のガンダムは知らないし、もしかしたらガンダムのことなんて何も知らない子かもしれない。そういう子でもみんな食い入るようにあの立像を見つめていた。中には怖くなって泣いている女の子までいた。そのぐらいインパクトがあるものなら、あそこからスタートするというのは自然だしいいなあと思ったんですね。
――プラモのバトルですが、モビルスーツ戦の「らしさ」がかなりきちんと描かれていたと思うのですが。
松尾:「ガンダム」シリーズでは搭載している武器をあまり使わないなあ、という印象が前からあったんです。昔のロボットアニメだと持っている武器はみんな使いますよね。だからバウの翼のミサイルですとか、ザク・スナイパーのバルカン砲といったものもなるべく使っていこうと。本編では描ききれなかったメカのいいところを拾い上げるようにしています。
――少しお話は前後しますが、松尾さんの作品への参加経緯はどうだったのですか?
松尾:元々、私が子供向けの作品を作りたいなと思っていたんですよ。男女の区別なく見られる冒険モノ的なものですね。また、劇場版「Ζガンダム」でガンダムに携わったこともあり、そのときにやり残したことや新規にやりたいこともあった。だから「ガンプラビルダーズ」のお話を聞いたときはすぐに引き受けました。すごく魅力的で丁度いいタイミングのお話でした。
――松尾監督自身はガンプラを作ったりなさるタイプなのですか?
松尾:子供の頃はよく作りましたね。大人になってからは劇場版「Ζガンダム」を製作するときに、参考にと現代のガンプラを作ったんですが、その出来栄えや技術の進化にすごく感動したんです。子供の頃の思い出装置と、大人の趣味として両立するガンプラというものは本当にすごいなと思った。
でも、子供のいる知り合いに話を聞いたりするうちに、今の子供にとってガンプラはすごく難しいものみたい、ということがわかってきた。だから導入部には「ダメでもいいからとにかく作ってみる」というメッセージは盛り込みました。
――特に序盤はガンプラ啓蒙風で、これはバンダイさんの依頼なのかと思ったのですが、松尾さんの体験からきているんですね。
松尾:主人公のお父さんがニッパーを渡すんですけど、あれは私の父がそうしてくれたんです。二十歳くらいまで使っていましたよ。
――バンダイさんからいろいろと要望はあったのではないかと思いますが、そういったものとは別に松尾監督が作品作りの上で心がけていたことはありますか?
松尾:作品が子供だましにならないように、という点は心がけていました。「○○ゲットだぜ!」とかそういうノリは止めよう、と。それをやった瞬間に、大人はぱっと引いてしまう。プラモを作るにしても、遊ぶにしても、それからキャラクターの行動にしても、できるかもしれない、あるかもしれない、いるかもしれないというラインを保つようにはしていましたね。絵空事とリアルの微妙なバランスを探しながら作っています。
かなり難しかったですが、大人も子供も楽しめる、ガンプラで遊ぶためのきっかけとなるアニメになってくれればと思っています。