CUT14年9月号 富野由悠季インタビュー

いつもの様にメモ。

  • (G-レコ制作を決意した理由は)死ぬまでもう少し時間がありそうだと、それだけ。フェイドアウトしていくのはイヤだったんですよ。もう一つには、ユニコーンまでのガンダムの流れを見ていて、このままでは完全に失速していくだろうなと。(ユニコーンまでの)流れを見ていると、やっぱり、やっているようでやっていないんだよね。アニメを作る目線が欠落している。それは僕としても黙って見て済ませるものではないだろうなと思ったんですよ。
  • ハリーポッターですらシリーズの括りから脱する作品なんて作れるわけがない、って思っている人たちが多いんです。
  • どうやら脱ガンダムはできそうだなってこと。数年前に思ったことは間違いじゃなかったなと。もちろん、完結ということはあり得ないし、イントロダクションで終わってしまうんだけども、次の世代に向けての種をまく、モチベーションを与えることはできたんじゃないかなと思っています。
  • 2回ほど方向転換して、ようやく今回のG-レコの原型にたどりつくことができた。
  • ガンダムの中でも地球と宇宙が地続きの感覚が強いのですが)その感覚はとても意外です。予定してたことではなかったから。
  • (RCを設定するにあたって現在から)時間をとばしたときに、今までのSFで描かれてきたことは絶対にやらないと決めたんです。これまでのSFでは、千年、二千年先の人類はもっと発達した環境で生きているものとして描かれているんですけど、G-レコでは、そんなことはありえない。
  • エネルギーを作る、熱を操るということは、必ず温暖化に結び付く。だから生き延びた人々はもうそういう行いや技術は封印し、ただひたすらちまちまと静かに暮らす。
  • (子供たちに見てもらいたいので)ポジティブなところだけをつまみ食いした、っていうところですね。
  • (キャピタルタワーとバッテリー配給システムの)設定を使えば、ネット社会の構造を叩けるし(笑)。ほんとネットゲームなんて非生産的だし、文化論もクソもないじゃないか、ってことにそろそろ気付けっていうね。
  • 今回、物語の中で携帯も使っているんですけど、ここで使われてる携帯は電話機能しか使えません。他の性能は一切ないんです。(スマホは)ごく一部の特権階級だけ(笑)。キャピタルタワーを運営している一部の階級にはその技術はあるかもしれない。
  • (天体観測のタブーは)天体観測をすることで、宇宙の果てが見えるみたいなことを言っている天文学者の話を聞いて、それでお腹が膨れますか?っていう話。ひょっとしたら無駄な労力かもしれないでしょ。
  • (「G」は)最初はGravity、Groundのつもりだった。結局そういうのは全部はずして元気のG、ということになりました。
  • (G-レコでの問題提議を踏まえた続編に関わることは)一切しません。できないでしょうね。(では最後のガンダムだと)おそらくそうですね。そして僕にとって最後のガンダムであって恥ずかしくない作品だと言える。幸せだと思っています。

全4P。デジタルビートと同日か、服装が同じ。

エンタミクス14年10月号 富野由悠季インタビュー

  • 劇中では問題について台詞などで一切明言はせず、物語の構造に組み込むことで、直感的に感じられるようにしています。頭の固い大人たちには絶対に見抜けないと思います。
  • AKB48やらももいろクローバーZと同じレベルの楽しさとシンクロするような作り方を意識する。(その上で巨大ロボットものの縛りの)枷を打開するような作品こそ本来は僕以降の世代に作って欲しいのですが、今のところそのリアクションはまったくありません。
  • ガンダムの欠点として、「冒険」はもちろん、「元気」や「熱血」といった言葉が作品に貼り付けられない。それはアニメとして、良いことだとは言えません。つまりアニメが本来持つ「芸能」というものを享受されていない。でもこの言い方は、実は後付けの嘘です(笑)。本当は3ヶ月前の忙しい最中に、制作からキャッチフレーズが必要だと急に言われて。僕も忙しいものだから「うるせぇ!」と言った勢いで「だから! Gってのは元気のGなんだよ!」という口にしたのがきっかけ。そう言った瞬間に自分自身が洗脳された……というより浄化されました。言った瞬間から絵コンテを描き、演出する作業にみるみる弾みがつき始めたんです。これこそが本当の意味での脱ガンダムなんだという実感に至りました。
  • ベルリとアイーダの過去は深刻には描いてません。
  • (MSデザインについて)僕としても「やってくれたな!」と思いました。カットシーなどは最初見た時は嫌いだったのに実際に動かしてみると、こんなに面白いMSはないと、正直感心しました。

全3P。御禿の服装はダムAシャツ。
インタビュー以外では、G-セルフ解説にバックパックとは別にコアファイター換装システム、アルケインはG-セルフバックパックの中には互換性を持つタイプもある。

DVD&ブルーレイでーた14年9月号 富野由悠季「G-レコ」を語る!

  • (手応えについて)この原作と構成を思いついた奴は偉いな、というくらい正直に言って自分でも驚いています。全て最初から考えていたなんて、とても言えません。それくらい、作品としてはみ出している魅力を感じています。
  • (発表媒体について)メディアが何であるかに関してのこだわりはありません。
  • (映画論について)あまり作り手のメッセージを強く押し出したものはつくるべきではないというのが僕の考えで、そういう意味ではG-レコでも作品の中でも何かを声高に訴えようとはしていません。
  • 映画というのはエンターテイメントであると同時に歴史的な資料にもなるということなんです。プログラムピクチャーにも資料性の高いものがたくさんあります。また作り手の立場で見た場合、当時のスタッフがやっつけ仕事をシテイルカ一生懸命に作ったか、それともまあまあのところまでか、少なくとも3段階の区別がつくようにもなりました。映画というのはタイムカプセルのようなものです。それはファーストガンダムも同じです。
  • 自分がつくりたいものをつくる、という個的なやり方は、実はアニメには似合わないのではないか。
  • (数十年後の検証の種をまく)ということもアニメ制作なんだよ、ということをわかってほしいのです。ただ残念なことに現状のスタジオを見ていると、G-レコの現場だけではないと最近は思うようになりましたが、このような考えでアニメや映画を作っているひとはあまりいません。動画が当たり前に見られる時代になってしまったので、動画をつくることの深刻さがわかっていない人が多すぎるような気がします。だから簡単にネットにアップしてしまうようなことができるんです。動画というのはそんなお手軽なものではないということを、言ってしまえば「見せつけてやりたい」という意地はあります。
  • 僕はブランドというのが大嫌いなんです。新しく車を買い換えるたびに、エンブレムを削ってくれるようにお願いするんだけど、どこも必ず断られる。
  • 過去のガンダムに関係した人に頼むと、それこそユニコーンガンダム以上のものは生まれないと思いました。そこで主役機以外を形部さんにお願いしたのです。1年かけて全26話に登場するMSのデザインをしてくれました。しかし安田さんと形部さんだけでは両極だけで中が抜けてしまう。そこで二人の橋渡しとして、山根さんに加わってもらって、バックグラウンドを支える形でG-セルフと形部MSをつなぐことをしてもらいました。そのために、山根さんが過去に描いた未使用デザインのいくつかを採用するといったこともしています。形部さんのデザインに関しては、細かな注文はほとんどだしていません。ほぼ丸のみする形で受け入れたのは、それだけの才能があるからです。向こうから勝手に出てきたシルエット、というよりルックスですね。その若い感覚に賭けました。彼の書いた人物画を見た時に、これならメカも描けると直感しました。形部さんという人材にたどり着くまでに3~4年かかりました。
  • (第2話に過去シリーズMSが登場するのはG-セルフとの対比?)そういうふうに受け取っていただいて構わないのですが、ちょっと違います。「まだまだこういう手があるんだ、お前ら気付けよ」という、過去のスタッフに対するちょっとした嫌がらせです。
  • シド・ミードさんに関しては、お願いしたのは失敗だったという認識が僕にはあります。どこがミスだったかと考えると答えは簡単で、自分の好きなものでつくってしまったからです。元々彼のデザインが好きだったから、無条件に受け入れてしまった。ところが、途中から何かおかしいと気づいた時には軌道修正できる段階ではなくて、そのまま最後まで行ってしまった。G-レコでは反対のことが起きています。形部さんの考えていることは分かるけど、「実際に使うのは嫌だよね」と最初はおもいました。例えばカットシーの羽根が付いたMSなんて使いにくくて嫌だなぁ、描くのが面倒臭いなぁと思いながら、子供たちに見てもらいたいからと我慢して絵コンテを切っていったら第3話で化けました。羽根があるからいくらでも飛ばせるし、空中戦ができるということがわかった時にバーンと目の前が開けたのです。
  • ターンXを活躍させられなかったのは内心デザインに対する嫌悪感があったからです。でもカットシーは飛ばすことができる。この違いこそが玩具というものの力。
  • (動かすうちに魅力を獲得していくのはキャラクターも?)圧倒的にそうです。ファーストガンダムで言えばララァやセイラさん、特にミライさんがそうでした。今回は第2話でアイーダが化けます。
  • 今回のキャスティングはスケジュールの都合とか、いろいろな条件があって今のような形になっただけで、決して自分の好きな人たちで固めたわけではありません。実際にアフレコしてみると、若い声優たちは皆、流行のアニメに汚染されていて、誰でも同じような声に聞こえてしまう。まずそのクセを抜く作業から始めました。要するに「地声でやれ」ということです。オタクだけが喜ぶようなかわいい声はいらないし、洋画の吹替的な演技も忘れろと言いました。でも職業として身についたものだから、なかなかできない。オーディションの段階で「あなたが今持っている体からでる声が欲しい」から選んだわけで、余計な色をつける必要はないのです。声優に関しては特に第2話からのアイーダの変化に注目して見ていただきたい。
  • 戦闘シーンのレイアウトなどは(シリーズ経験者に)ほぼお任せで、こちらはベルリとアイーダの物語に力を集中できています。結果として自分の作品も含めてこれまでのガンダム、それ以外の今作られているアニメを全否定するくらいのものが生まれつつあると思う。