ガンダムA 08年10月号 SDガンダムフォース座談会

―― まずは作品の生い立ちをお聞かせ下さい。
堀口 全米でのリアルガンダムの放送を受けて、次はSDガンダムだというところからスタートした企画でしたね。フル3DCGで制作するということになり、「ガンダム・ザ・ライド」でもお世話になったアベ監督、近藤監督にお願いしました。
アベ まず、人間とロボットが本当に信頼し合えるものなのかという所から考えましたね。ロボットと言ってもしょせん機械なので、その機械を信用するためには何か共感し合えるものが必要だろうと、そういうところからソウルドライブが出てきました。
近藤 キャプテンガンダムの口にもこだわっていましたよね。
アベ やっぱりシュウトと会話する時に、マスクしたままでは「こいつ何考えているのかわからない」と思うだろうと。ロボットでも表情が見える、心を持っているということによって、人間との信頼関係も築いていけるんです。
堀口 これまでのSDガンダムファンは、「キャプテンに口がある」とビックリしていたみたいですよ。
アベ 自分にとっては、自然な発想から出てきているので、それが逆にビックリでしたね。
堀口 SDガンダムの誕生に触れているという点でも初めてじゃないですか。
近藤 「こいつらが何者なのか」というバックボーンをしっかりと作っておかないと1年間のTVシリーズは作れないですからね。
アベ でも誕生について触れただけで、描くまではたどり着けませんでした。本当はキャプテンが誕生する瞬間や、武者が子供を産むところなんかも描きたかったですね。
堀口 アベ監督は女の子の武者頑駄無を出したいと言っていたんですが、私が出し渋っていたんですよね。どうしても自分の中で女の子の武者というが、いいイメージにならなかったので。
アベ 爆熱丸が師匠の覇王丸の所に帰るというエピソードも考えていて、その師匠の所に爆熱丸を慕う女の子がいるという設定を考えていました。そこで爆熱丸の持つ五聖剣の残りの三振りを出そうと思っていたんです。
近藤 モデリングも大変でしたからね。一度作ったモデルはいろいろ使い回していましたよね。コップとかバラとかバナナに至るまで。
堀口 実はSDガンダムの等身やサイズにも意味があるんですよね。
アベ あれは、何故ネオトピアが理想郷なのかという所にもかかってくるんですが、実はかつて人間は人型ロボットで悲惨な争いを起こし、滅びかけているんです。そんな戦いのない理想郷をつくろうとして誕生したのがネオトピアですね。ですから、ネオトピアではリアル等身の人型ロボットは作ってはいけないというルールがあって、ネオトピアのタワーの下にはその戒めとしてリアルロボットたちが埋められているんですよ。
近藤 SDガンダムですから、リアルガンダムのオマージュやリスペクトはないと(笑)。新しいシリーズを立ち上げるので、これまでの設定は一切置いておいて、まったく新しい世界観を作るという選択肢もありましたが、これまでのSDガンダムの設定もいかした上で、新たな設定を追加するという形を選んだんです。
アベ これは、これまでのSDガンダムへのリスペクトということですかね。それから、サイズは、10歳の少年と同じ目線に合わせるためですね。10歳という年齢は人間が一番影響を受ける年齢で、その時にロボットと目線が合うようにしておくと、大人になってもロボット精神的にもいい関係が続けられるという訳です。ですから、あの等身はディフォルメではなく、この世界におけるリアルなんです。
―― SDガンダムフォースの見所をお願いできますか?
アベ CG的にはやはり回を追うごとに進化していきますので、ラストの方が格段にいいのですが、前半も負けずにいい話がいっぱいありますので、すべてを見て欲しいですね。
近藤 こんなの熱く燃える作品はなかなかないです。編集しながら見ていた時も、だんだん熱さがこみ上げてきました。ネオトピアは友情、ラクロアは愛、天宮は親子とそれぞれにテーマもありますので、3倍楽しく、3倍熱く見られる作品になっています。
堀口 実は時間と空間という概念を扱ったハードSFです。リアルガンダムは見るけど、SDガンダムはちょっとと言っている人がいたら、ぜひ見るよう薦めて下さい。
―― 本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


2008年5月某日 上石神井にて

前掲のDVD-BOXと同じインタビュー。