シゴトの教科書 Vol.5 富野由悠季

  • 紹介するのは「なぜアーレントが重要なのか」。いわく「嫌がらせのように難しい本」。御禿の次作のテーマに多大な影響を与え、「命綱」と言わしめた。
  • 恥ずかしい話、アーレントを知ったのは1年前。そこから勉強しているんだけど、もうじき70だし、追いつかない。だから、20代30代のうちに読んでほしいですよね。
  • ガンダム)当時の僕は、ギレン・ザビを「ヒトラーのしっぽ」にして、分かりやすい独裁者としか描けなかった。言葉のフックにはなったと思うけど、独裁を生む仕組みを勉強せず、勘でやっていたところがある。僕が言いたかった、「愚衆」が無責任に熱狂して独裁者を支持したということを、50年も前にアーレントおばさん(笑)が解説していた。
  • 人類が一番の汚染物質。全体主義は地球を食い尽くす。シャアは「地球に対して贖罪せねば」と地球から人類を排除しようとしたけれど、我々は結局地球にしか住めない。だから彼やアムロのように地球の総量とバランスが取れる知恵と感覚を持つ人の出現を描きたかったんです。そのためには、人と人とが分かり合い共感する必要がある。30年目でようやく出てきたな、ニュータイプの定義が(笑)
  • アーレントはテロも予見していたし、たぶん全体主義化する未来に絶望したと思います。今、僕には一般ウケしないこの哲学者の思想や絶望を、どうにか伝えたいという欲があります。絵空事でない、きわめてリアルなコモンセンスを育てるファンタジーを作る人がいてもいいでしょ? だから、残りの人生、死ぬまでアニメの仕事をしたいと思っています。

「次作」とは何か。RoGか、リーン完全版か、その更に次か。