ロングインタビュー 富野由悠季

全6P。

  • 作品単体で言えば、宮崎作品のほうが優れているし、伝播力や認知度も高い。ガンダムに宮崎作品ほどの力はない。しかし、シリーズ作品として、関連商品も含めて広く受け入れられているのは、ほかのアニメにはない特徴がある。答えは明快。きちんとしたコンセプトがあったから。原理原則を踏まえて、荒唐無稽なSFでなくリアルな近未来を提示したから。
  • いつものお台場ガンダムについてのコメント。
  • ガンダムがお台場の人工的な景色にマッチしたのは、当たり前なのですが、新たな発見でもあった。ガンダムがマッチして見えたことは、我々の暮らしを考える能力が低下してきている証拠で、リアルに物事を考えられなくなってきているのではないか、という証明。私たちが今もっている感覚や認識はリアルと言うより、フィクションの上で成り立っているのではないか、ということ。
  • 子供のころから広告の意義を理解できなかった。何で宣伝してまで売らなければいけのか、今でも分からない感覚がある。アニメのコンテは書けても、CMのコンテはいくらやっても書けなかったのは、広告することへの嫌悪感があったからでしょう。
  • 昨年の暮れ、命拾いするような考え方を本で知った。以後、歴史を考える時にその言葉を基点にしている。人類は物事を判断する力が無いから、信じることによって歴史を作ってきた。宗教は一例で、今日までの生活習慣は両親や隣人から聞いていたことを信じてやっているだけで、新たに判断できる能力は殆ど持っていないから、歴史は繰り返されると分かるようになってくれば、現在と言う時代も少し見えてくる。
  • エコについて:数百年後に人類が滅亡するよりも一万年後も子孫が生きていられる方が安心して死ねる。その交換条件として一番の汚染物質である人類を減らしていくことは悪いことじゃない。
  • 最近、日本映画を観なくなった。つまらない理由を考えたら、多くの監督は自分の好きなことしか描いていない。皆が分かるとか、面白がるじゃなくて「俺はこれを格好良いと思っている」というものしか作らない。アマチュアなのね。個性があるとか能力があるとかではなく、まず皆が見てくれるものを一生懸命作れと言いたい。何で、作品に自分の主義や主張が出てくるんだ。僕もかなり気を付けているつもりでも、出来上がった作品を見た時に、自分の主張が出ているものです。
  • 自分だけでこねくり回すと、厭でもそうなっちゃう。主義主張を出さず、これだったら皆に見てもらえると思って作っても、富野のガンダムになっちゃってる。個性を徹底的に抜いて作ったら、多くの人に見てもらえる。僕が宮崎アニメに勝てないのはそれができないところだと思っている。
  • 個性なんてものは厭でも一番奥に置いていても出るんです。なのに初めから個性をバンと出して作ったらつまらない映画にしかならないのは当然のことです。
  • 「富野に訊け!」的な「自分らしさ」についての話。

夜中に気力が残ってれば追加します。