読売新聞夕刊13年6月13日号 語り継ぐテレビ60年 富野由悠季

巨大ロボット同士が戦う近未来の戦争に巻き込まれた若者たちを描いた代表作「機動戦士ガンダム」は、セリフが難解で人間関係が複雑、などの理由で、従来のアニメ視聴の中心だった小学生ではなく、中学生以上に支持された。
このため、「大人向けアニメ」とも評されるが、「まったく逆。まず子供ありきだった」と語る。重要なのは作品に込めるメッセージ。「大人が子供に対して『これだけは覚えておきなさい』ということを本気で伝えないといけない」と思っているのだ。
そのために「子供向けだからと言って、かみ砕くことはしなくていい」がポリシー。とはいえ、子供たちに「戦争の悲惨さ」を突きつけた「ガンダム」の内容は、地球侵略を図る悪者とヒーローが戦う過去のロボットアニメとはかけ離れていた。初回放送では視聴率が振るわず、52話予定が43話で打ち切られた。
「敗北感はあったが、『命拾いしたかも』とも思った。物語作りとは、どれだけ話を圧縮して厚みを持たせられるかということ。結果的にだらしのない作品にならずに済んだ」
再放送以降、「オタク人気」が沸騰した。「私としては、アニメという非現実世界に溺れないで、物語のメッセージについて考えてほしいんですが」。次々と続編を生み、多数の類似作品も登場した「ガンダム」をひとつの起点として、「オタク」向きアニメ市場は成長した。

元々は映画監督志望だったが、手塚治虫の「虫プロダクション」に入社してアニメ業界へ。最初に携わったのが「鉄腕アトム」だった。フリー転身後、名作ものやギャグなど様々な作品に関わり、「ドラマ作りを覚えた」。
「オタク人気」の先駆け、「宇宙戦艦ヤマト」にも関わった。「戦艦をキャラクター化し、幅広いファンを獲得した。『ガンダム』で『ヤマト』を否定したかった部分もある。だが、メカのキャラクター化が人気を呼んだ点は同じ」と分析する。
来年で「ガンダム」誕生から35年。「オタク」の系譜を継いだ「新世紀エヴァンゲリオン」には「新しい切り口を発見した」との印象を持つが、「アニメ好きが集まって作っているという、同質性を感じるものばかり」と“その他大勢”には手厳しい。
「今までの『ガンダム』を否定する『ガンダム』があってもいい。そんな作品をもう一つやらせてもらえたら、と思っています」
(笹島拓哉)

最終行はもちろんGレコがらみか。未だにガンダムをタイトルに入れるかどうかでもめているとかいないとか。
「もう一つ」というのは、

  • 過去に全否定ガンダムがあった→∀?
  • Gレコのこと
  • Gレコと更にもう一つ

などと、読んでいる最中に解釈候補が浮かんだ。