NHK「かぶん」ブログ:NHK | 取材エピソード | 出崎統さん通夜:富野 由悠季さん、ちばてつやさん、りんたろうさんインタビュー紹介

http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/100/80546.html
記事が消えたときに備えてコピペ。

Q最後に出崎さんにお会いしたのはいつですか

――2年前から3年前か・・・広島のアニメフェスティバルで会ったのが最後です。そのときに少し調子が悪いのは承知していましたので、むしろよく頑張ってきたなと思いました。


Q富野さんにとって出崎さんはどういう存在でしたか

――僕は「虫プロダクション」(※現・手塚プロダクション)を辞めて2,3年してから「あしたのジョー」に仕事がなくて強引に関わらせてもらったんです。その時に、演出している出崎統の仕事をみて、日本のテレビアニメ界に「天才がいる」ということに初めて気がつきました。自分は26,7歳の時だったんですけど、本当に大先輩だと思えたし、初めて頭を下げることができました。そのくらい「あしたのジョー」での仕事が僕にとって衝撃的でした。ですからそれ以降、彼のいろんなことを盗みたいと思って勝手に"統ちゃん"って言っちゃっていました。でも結局、天才のものは盗めないんです。それが僕にとって、その後の40年近くたっても、やっぱり(出崎さんが)敵になっていたんです。ずっとライバル視しかありませんでした。かないませんでしたね


Qアニメーターとして、どんなことを出崎さんから学びましたか

――そういう人って優しくありませんから何にも教えてくれませんので、こちらがむしゃぶりついて教えてもらうというか、盗みにいくだけです。盗みにいくっていうのは、実は先にあらわれているんです。それは読み解けなければそれきりなわけなんですが、そういう意味では、統ちゃんの目線をいつも感じていたのは、「おまえはダメなんだよね」っていう体感でした。僕にとっては同業者にそういう人がいるっていうことが、やはりありがたかったですね。彼の仕事の全作品をどういう風に突破しやろうか、という気持ちが僕のなかにあって、僕にとっては手塚先生の次が統ちゃん的な才能でした。世代が違うということでの才能のあり方を比較して見せてくれましたし、同じ時代に走ってきた「仲間」とはいえない「大先輩」なんです。キャリア的にいうと明らかに大先輩ですからライバル視より、敵視していたっていうのが本当のところですね。ですから、その関係性がとても好きです。


Q出崎さんの才能について

――出崎さんは映像を処理するというのをリミテッドアニメで端的に示したんです。これ以上に、リミテッドアニメ、つまり動かない絵を使って、どういう風に映画を見せていくか、という一番論理的な手法を発明したのは統ちゃんじゃないのかなと思います。やはりまわりにいる人にはまねはできません。そのくらい、固い動かない絵をもって映像として見せていくことができるという意味では、惜しいし、作品的に早くメジャー的なところで出てくる機会が与えられなかったのは悔やまれるところですね。彼がいなかったらジャパニメーションがもう少し貧しいものになっていたでしょう。そういう意味で出崎統が持っている映像感覚は、極めてメジャー的だったんです。それを結局、テレビの枠でしか見せられなかったのが残念。そういう意味でスタジオワークとして恵まれていなかったんじゃないかな、という気はします。あれほどの才能をもってこうなんだという意味では、やはり若い人にとっては参考にしたい代表的な監督だったという風に言えます。


Qいま、出崎さんにかけたい言葉はありますか

――10年早く出過ぎた才能だった。それがもったいなかった。だけどそうでなければ

革新者であり得ないわけだから、やっぱり頃合いではあったんじゃないかな、という気もしています。まだ分かりませんね。